反撃の狼煙で日産GT-Rが先制も、3セッションでLC500がトップタイム
連休最終日の10月8日、ツインリンクもてぎでは11月10~11日に開催されるSUPER GTの最終戦に向けた公式テストを実施。シリーズにレギュラー参戦している40チームが参加して、11月の本番で使用するタイヤを選ぶとともに、そのタイヤに合わせたセッティングを進めるためのテスト走行が、2日間にわたり続けられた。
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SUPER GTシリーズは、国内で最大の観客動員を誇り、海外からも注目度が高まっている“世界最強最速のハコ車レース”だが、今や世界的にも珍しくなったタイヤの開発競争が見えるトップカテゴリーでもある。2018年シーズンのSUPER GTは、4月の岡山国際サーキットから先月のスポーツランドSUGOまで、全8戦のうち6戦が終了。LEXUS(TOYOTA)とNISSAN、Hondaの3メーカーが鎬を削るGT500クラスはここまで、Honda NSXが3勝、LEXUS LC500が2勝を挙げ、NISSAN GT-Rは5月の富士で1勝を挙げたにとどまっている。ポイントランキングについても 『No.100 RAYBRIG NSX-GT』の山本尚貴/ジェンソン・バトン組が61ポイントで頭一つリード。これを『No.8 ARTA NSX-GT』の野尻智紀/伊沢拓也組が12ポイント差、『No.1 KeePer TOM’S LC500』の平川亮/ニック・キャシディ組が14ポイント差で追う展開で、GT-R勢では『No.23 MOTUL AUTECH GT-R』の松田次生/ロニー・クインタレッリの6番手が最上位。トップからは22ポイント差となっている。
この数字からだけ見ると、GT-Rの劣勢にも映るが、レースの大半をリードしながら終盤にトラブルで優勝を逃したレースもあり、また前回のSUGOから投入された2基目のエンジン(SUPER GTでは年間2基のエンジンで戦うことが決められている)が好調なこともあり、まさに実力紙一重の激戦混戦となっているのだ。
2日間のテストでは、両日ともに午前と午後の2回、それぞれ2時間の走行セッションが設けられていて、計8時間にわたって走行が続けられた。
まず、8日午前のセッション1では『No.12 カルソニック IMPUL GT-R(佐々木大樹/ヤン・マーデンボロー)』がトップタイムをマーク。これに No.23 MOTUL AUTECH GT-Rが続き、GT-R勢が1-2を占めて反撃の狼煙を上げる格好となったが、午後のセッション2では『No.19 WedsSport ADVAN LC500(国本雄資/山下健太)』がトップタイム。『No.36 au TOM’S LC500(中嶋一貴/関口雄飛)』、『No.38 ZENT CERUMO LC500(立川祐路/石浦宏明)』が続いてLC500がトップ3を独占した。
2日目のセッション3、セッション4も『No.36 au TOM’S LC500とNo.6 WAKO’S 4CR LC500(大嶋和也/フェリックス・ローゼンクヴィスト)』、No.6 WAKO’S 4CR LC500とNo.1 KeePer TOM’S LC500がそれぞれ1-2につけ、初日の午後にNo.19 WedsSport ADVAN LC500の山下健太がマークした1分37秒241が、2日間のベストとなった。
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レクサス、ホンダはテストをこう分析した
ただし、この結果からLC500が圧倒的に優勢かと言えば、実はそうでもない。LEXUS勢の開発を統括するテクノクラフト本部の永井洋治パワトレ開発部長は「トップタイムをマークしたと言ってもまだまだ混戦。ここをどうやって抜け出すかがポイント」と分析する。ただしSUPER GTでは過当競争による参戦コストの高騰を防ぐために、エンジンは年間2基までで、エアロパーツに関してもシーズン中は開発が凍結されている。永井部長は「認められたパーツの中でベストのものを選んでチームに供給し、チームの方でセットアップやタイヤの合わせ込みを進めてもらうしかない」と、残る2戦がよりシビアでタフな戦いとなることを示唆していた。
一方、各セッションでライバルに後れを取った格好となったHonda勢。開発を統括する本田技術研究所、HRD SAKURAの佐伯昌浩プロジェクトリーダーは「今回は、最後の公式テストということで、ここまで試せなかったセットを、各チームでトライしているようで、タイムはあまり参考にならないと思っています」と、タイムはそれほど重要視していない様子。ランキングトップの『No.100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/ジェンソン・バトン)』も最終戦に向けノーウェイトでのテスト走行と思われたが、伊与木仁チーフエンジニアは「実は今回はいろいろな計測器などを載せていて、本来のウェイト(ミッドディップハンディを含めた1044kg)に比べて重くなっています」と語っていた。ただし「ウェイトが降ろせるといっても、クルマのバランスを考えてやる必要がある。今回は軽くなったときのバランスに変えているけれど、まだベストなセットを見つけられていない、というのが正直なところ」と苦労する一面をのぞかせる。
それでも前回のSUGOでは80kg(実際には燃料リストリクターを2段階絞った上で46kgウェイトを搭載していた)のウェイトハンディを跳ね返してポールを奪い、決勝でそのまま逃げ切って見事なポールtoウィンを飾っていたのは記憶に新しいところ。本番でのパフォーマンスは注目だ。
なお、GT300クラスでは初日にトップタイムをマークした『No.9 GULF NAC PORSCHE 911』の久保凜太郎/石川京侍組が、2日間を通した総合結果でもクラストップ。ポイントランキングでトップ3につける『No.55 ARTA BMW M6 GT3』の高木真一/ショーン・ウォーキンショー組、『No.31 TOYOTA PRIUS apr GT』の嵯峨宏紀/平手晃平組、『No.0 グッドスマイル 初音ミク AMG』の谷口信輝/片岡龍也組などのベテランを相手に、このところ調子を上げてきた若手コンビが残る2戦、どんな戦いを挑んでいくかにも注目が集まることになった。
2日間の総合で2位、GT-R勢トップとなったNo.12 カルソニック IMPUL GT-R。オートポリスでのテストでも好調で、来週末に行われるシリーズ第7戦・オートポリスでも優勝が期待されている。
全体で最速となった若手2人がドライブするNo.19 WedsSport ADVAN LC500。ヨコハマ・タイヤ装着車は今季未勝利で、LEXUS陣営のみならず、ヨコハマ陣営からも優勝への期待が高まっている。
GT300クラスで2日間総合のベストタイムをマークしたNo.9 GULF NAC PORSCHE 911。若い2人が、ベテラン相手に残る2戦でどんな戦いを挑むか? にも注目したい。
2日間の総合で3番手につけたNo.23 MOTUL AUTECH GT-R。昨年もシーズン序盤は苦戦を強いられたが最終戦のもてぎで圧勝、見事な復活劇を見せただけに、残る2戦2連勝で逆転王座も視野に入る。
2日目トップ、2日間総合でも4番手につけたNo.36 au TOM’S LC500。WECにも参戦した関係でシリーズ2戦をパスした中嶋一貴には事実上権利はないが、今季からチームに加入した関口雄飛の逆転王座を狙う。
GT300のポイントリーダーはNo.55 ARTA BMW M6 GT3。今回は意外にタイムが伸び悩んでいたが、ベテランの高木真一と成長著しいショーン・ウォーキンショーのコンビの評価は高い。
GT500のランキングトップにつけるNo.100 RAYBRIG NSX-GT。Hondaの若きエース、山本尚貴と、F1GPでワールドチャンピオンに輝いたジェンソン・バトンの新コンビは、混戦の中、頭一つリードする。
GT300で2日間総合2位のNo.88 マネパ ランボルギーニ GT3。ランボルギーニのワークスドライバーであるマルコ・マッペリをパートナーに迎えた平峰一貴の仕事ぶりには高い評価が集まっている。
Honda勢で最上位のNo.17 KEIHIN NSX-GT。2日間の総合では8番手にとどまったが中堅の塚越広大と、今やベテランの域に達した小暮卓史。並はずれたポテンシャルを持つ2人だけに、さく裂する速さが期待される。
今回のテストで観客に人気を博していた“激感エリア”。競技車両が目の前をピットアウトしていくだけに、その迫力は充分だ。
タイヤを選択したりクルマのセットアップを進めるだけでなく、ピットインシミュレーションも重要なテストメニューの一つ。
NISSAN陣営はコントロールタワーに近いピットに陣取っていて、彼らのピットインシミュレーションは “激感エリア”でも充分楽しめたようだ。
テスト2日目の10月9日は連休明けの平日だったが、オープンピットを待つ観客は、このような長蛇の列となり、改めてSUPER GTの人気が証明される結果に。
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