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今、買っても後悔ナシ!──ジープ・グランドチェロキー試乗記

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今、買っても後悔ナシ!──ジープ・グランドチェロキー試乗記

モデル末期のジープ「グランドチェロキー」に、塩見智が北海道で試乗した。印象はいかに?

登場から10年超の現行モデル

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4代目ジープ・グランドチェロキーの卒業が近づいてきた。先般、アメリカ本国で次期型が発表されたのだ。

5代目にはジープ史上初めて外寸が異なる2列シート版と3列シート版の2種類が存在する。いずれも角張ったワイルドなルックスで、問答無用にカッコよい。ヒットの予感。ただし現行型よりも相当に大きくなるようだ。これは日本市場においてはバッドニュースととらえる人が多いだろう。

この点、現行型は全長4835mm、全幅1935mm、全高1825mm、ホイールベース2915mmと、絶対的に小さくはないけれど、おなじカテゴリーに分類されるドイツやイギリスのラグジュアリーSUVよりも若干小ぶりで、日本の路上で取り回しに苦労しないギリギリのサイズに留まっている。また性能面で引けを取らないのに価格がライバルより若干安価だ。

だからこそ現行グランドチェロキーは長らく日本における輸入ラグジュアリーSUVのベストセラーなのだ。新しいモデルほど売れる傾向にある日本において、グランドチェロキーはこの10年間の販売台数は右肩上がり。実はメルセデス・ベンツ「GLE」、BMW「X5」、ボルボ「XC90」、ポルシェ「カイエン」などを抑え、ラージクラスSUVとして最も販売台数の多い輸入車なのだ。

思えば現行の4代目は2010年(日本導入は2011年)、前年に民事再生法を適用されたクライスラーがフィアットと合併してFCAになったのとほぼおなじタイミングで登場した。あれから10年がたち、先般FCAはPSAと合併し、ステランティスとなった。さらに思えば、3代目はダイムラー・クライスラーが発売し、4代目はFCAが、そして次の5代目はステランティスが発売する、ということになる。世代ごとに違う会社から発売されるモデルも珍しい。

本国で次期型が発表されたということで、次期型は2021年中か、遅くとも2022年には日本導入を果たすはず。その前に登場から10年たった現行型の現時点での魅力、実力を確かめるべく、北海道で開かれたジープオールラインアップ試乗会で、目玉試乗車のレネゲードやラングラーではなく、半ばスタッフカーとして用意されていたグランドチェロキー・リミテッドを積極的に借りだして雪上を中心にテストした。

今や希少な自然吸気のV6エンジン

試乗したのは中間グレードのリミテッド。これまでリミテッドはエアサスペンションが標準装備だったが、モデル末期の生産調整の都合からか、ごく最近になってコイルサスペンションに切り替わったようだ。

しかし、これが悪くない。車高調整ができないのはオフローダーとしては不利かもしれないが、今回の試乗コース、すなわち圧雪路面や雪とアスファルトが混在する路面、そして除雪された高速道路に限って言えば、乗り心地やハンドリングの面でエアサスを恋しく思うことはなかった。エアサス仕様より20万円安い639万円というプライスも魅力だ。

リミテッドは3.5リッターV型6気筒ガソリン自然吸気エンジン(最高出力290ps/6400rpm、最大トルク347Nm/4000rpm)を搭載し、8速ATを介して4輪を駆動する。6気筒エンジンを搭載するモデルはめっきり減った。自然吸気となるとなおさらだ。

力強さそのもので言えば最近のよくできた2.0リッター直列4気筒ガソリンターボ・エンジンに一歩譲るものの、4気筒をどうこねくりまわしても置換できない吹け上がりの気持ちよさがある。その代償としてカタログ燃費7.4km/L(WLTC)という現実はあるものの、8気筒を6気筒に、6気筒を4気筒に置き換えて、足りない部分はモーターで補う電化の波はアメリカ車にも確実に到来しており、自然吸気のマルチシリンダーを味わえるのもせいぜいあと10年くらいではないだろうか。それも楽観的に過ぎるかもしれないが。

最後に熟成した現行グラチェロで「君を忘れない」とか言いながらドライブするのもよいのでは?

10年選手ならではの魅力

4WDシステムはシンプルなフルタイム4WDだ。通常は前後50:50のトルク配分で走行し、ステアリングを切って前後輪に生じる回転差はセンターデフが吸収する。ドライブモードを選択できるセレクテレインシステムが備わり、「スノー」「サンド」「マッド」「ロック」を選べば、デフ、AT、横滑り防止装置などの制御がその状況に最適化される。ずぼらな人のために「オート」もある。

あらためて感じるのはグランドチェロキーの乗り心地のよさだ。ラングラーのほうが売れてはいるものの、ジープの旗艦モデルはグランドチェロキーだ。剛性感のあるボディとしなやかな足まわりがもたらすオンロードでの快適性は、このクルマが登場から10年たっているとは思えないレベルだ。

インテリアデザインにはやや古さを感じるものの、仕立ては悪くない。乗り心地からも室内の仕立てからも、10年生産し続けたがゆえの熟(こな)れた感じが漂う。

クルマ好きの中にはモデル末期のクルマを好んで買う人もいるが、こういう部分を楽しんでいるのだろう。グラチェロ、いいな。ちょっと心が動いた。

文・塩見智

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