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【ドライバーズカーの模範解答】BMW 2002と3.0 CSL 本質を映すクーペ 後編

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【ドライバーズカーの模範解答】BMW 2002と3.0 CSL 本質を映すクーペ 後編

クルマと対話するように運転できる

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)

【画像】美しい2台のクーペ BMW 3.0 CSLとBMW 2002 全42枚

photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


BMW 20002の運転席からは、どの方向へも視界に優れる。作りの良いシートに、スッキリとした造形のダッシュボードが心地いい。不必要な情報も、過度な機能もここにはない。

細身のリムのステアリングホイールは、今の感覚では大きい。位置も高い。でも、3つのペダルとシフトノブの位置関係は良好。2002らしく、元気に運転させたくなる。

フロントヒンジのボンネットを開くと、美しく整えられたエンジンが柔らかいマウントの上で静かに脈動している。しかし運転席に座っていると、とても静か。聞き惚れるサウンドというより効率重視的なノイズで、中回転域のトルクは太い。

アクセルペダルを踏み込む。最後の2.5cmくらいから、ソレックスキャブレターの2番目の給気口が開く。6000rpmまで吹け上がり、痛快なパンチ力を引き出せる。

穏やかにスタートさせれば、文化的にも走れる。滑らかに加速し、理想的なレシオのMTは操作感も気持いい。3速でも4速でもアクセルペダルを踏み込めば、変速の必要なくボディを引っ張れる。

正確なステアリングは、軽すぎるわけでも、クイックすぎるわけでもない。アシストも必要ない。タイヤは当時物のミシュランXAS。アンチロールバーが、ボディの動きをしっかり制御してくれる。

小さな2002はニュートラルにコーナリングし、しなやかなサスペンションが路面の乱れを柔らかくなだめてくれる。それでいて、乗り心地にはコシがある。クルマと対話するように運転でき、楽しくて仕方ない。

凛々しく2002との近さも感じる3.0 CSL

BMW 2002を運転すれば、気持ちが高まる。どんな道でも、心を満たしてくれる。

それはBMW 3.0 CSLでも共通する体験だが、そこへ優雅さや希少性、わずかな量のアクセサリーが追加されている。今となっては、2002より10万ポンド(1400万円)以上も高い値段が付いている。

今回の3.0 CSLは、500台作られた右ハンドル車。近年6万ポンド(840万円)相当のレストアを受けており、走行距離も短い。2002と同じヘアピン・カンパニー社が所有している。

美しいE9型クーペのボディは主にスチール製で、製造はドイツのカルマン社。このクルマには、シティ・パッケージが装備されている。パワーステアリングにパワーウインドウ、専用のバンパーなどが追加され、新車時はショールームでの販売力を高めた。

だが、当時のホモロゲーション・モデルの多くがそうだったように、販売は不調だった。変形しやすいアルミニウム製のボンネットにドア、トランクリッドを備え、身体を固定するシェール社製のバケットシートが付いている。万人受けはしない内容だった。

いま、改めて路上に佇む完璧な3.0 CSLを眺めると、とても凛々しい。それと同時に、2002と近い雰囲気も持ち合わせていることに驚く。

ドライブトレインはとても滑らかで、柔軟性に富む。360度視界に優れ、運転に関わる操作系の重み付けも、すべてが適正。クラッチの重さと戦ったり、ステアリングが無感覚になったり、ということはない。

美しいと感じるほどにスムーズな6気筒

ドライビングポジションは、2002より3.0 CSLの方が良い。少しペースを速めてみると、バケットシートの素晴らしさにも気づく。

ドライバーの正面には、2002の3丸ではなく、4丸のメーターが並ぶ。ダッシュボードにはウッドパネルが用いられ、クロームメッキがあしらわれる。2002のプラスティック主体の車内とは異なり、手作業で仕上げられた高価なクルマだと伺わせる部分だ。

ペダルのポジションやスイッチ類のレイアウトは、2002と近似。全長は3.0 CSLの方が300mm以上長いが、リアシートの足元空間はさほど広いわけではない。

3.0 CSLのマシン加工された特徴的なキーと、少々うるさく動きの鈍いパワーウインドウは、E9型クーペで共通。燃料ポンプが回転し高圧のインジェクションが働くと、即座に直列6気筒が目を覚ます。

回転は美しいと感じるほどにスムーズ。フレキシブルでもあり、3.0 CSLに躍動的な加速力を与える。スタートダッシュを気張るとリア・スプリングが縮み、テイクオフ・スタイルを取る。

1速で引っ張れば64km/hに届き、2速で112km/h、3速で160km/hを超える。タコメーターの針が変速の度に急回転し、情熱的にパワーが生み出される。5500rpm以上では馬力が減少していくはずだが、力強さは増していくように感じる。

加速と同時に放たれる威厳ある咆哮が気持ちを高ぶらせ、4速MTを積極的に操りたくなる。2002と同じくらいシフトフィールは滑らか。だが変速を急ぐと、シンクロが機能しない場面もあるようだ。

1970年代初頭のクリエイティブな時期

ドーナツのように膨らんだタイヤは、ミシュランXWX。路面をひたひたと掴んでくれる。現代水準でいえば、3.0 CSLは全幅も狭くコンパクトな部類に入る。50年前のクルマでも、不安感なく操れる。

走りは非常に安定していて、洗練されている。フレームレス・ウインドウから、大きく風切り音が聞こえてくること以外は。

乗り心地は引き締まっているが、ガタガタと揺さぶられるほどではない。きれいに小気味よく、フロントノーズは向きを変えていく。

長く伸びる高速コーナーでは、狙い通りのラインを見事にキープできる。低速コーナーからの立ち上がりでは、リミテッドスリップ・デフの機能も実感できる。

3.0 CSLには、パワーステアリングが付いている。それでも、完璧なサイズのステアリングホイールを握る指先を通じて、滑らかな感触が伝わってくる。

BMW 2002が牽引した、1970年代初頭に訪れたBMWのクリエイティブな時期。3.0 CSLは、その絶頂期を飾り、エンディングを彩った。その残光は今も眩しい。

ミュンヘンから生まれた、代表的な2台のスポーツクーペ。まだ過小評価されていたBMWの実力を定義する、完璧な模範解答だった。その本質は、今のBMWへと受け継がれているものだといえる。

BMW 3.0 CSLと2002 2台のスペック

BMW 3.0 CSL(1971~1974年)のスペック

価格:新車時 7399ポンド/現在 18万ポンド(2520万円)以下
生産台数:1208台
全長:4655mm
全幅:1670mm
全高:1372mm
最高速度:214km/h
0-97km/h加速:7.3秒
燃費:6.0km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1270kg
パワートレイン:直列6気筒3003cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:199ps/5500rpm
最大トルク:27.6kg-m/4300rpm
ギアボックス:4速マニュアル

BMW 2002(1968~1976年)のスペック

価格:新車時 2649ポンド/現在 3万5000ポンド(490万円)以下
生産台数:33万9084台(2002キャブレター車総計)
全長:4318mm
全幅:1588mm
全高:1410mm
最高速度:172km/h
0-97km/h加速:10.8秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1054kg
パワートレイン:直列4気筒1990cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:99ps/5500rpm
最大トルク:16.0kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

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