この半年間で落札価格が2倍以上に
text:Kumiko Kato(加藤久美子)
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90年代以降の日本製スポーツカーが世界中で高い人気となっている。北米ではとくに、15年/25年ルールで解禁される「JDM」というカテゴリーに入る日本車の人気がうなぎ上りだ。
25年ルールで解禁となる2024年まで、3年以上もあるのにスカイラインR34はGT-Rを筆頭に、異常な高値で取引されている。
日本で購入してアメリカで輸入解禁となるまで、どこか安全な場所にて大切に保管されているクルマも少なくない。
一方、人気が災いして、日本でJDM車が盗難される事件も後を絶たない。
昨今、この数か月間で価格が暴騰、爆騰している日本車がある。「ホンダ・シビックMUGEN RR」。平成19年に300台だけ発売された限定車である。
300台がわずか10分で完売した伝説のクルマでもある。
MUGEN RRはホンダのモータースポーツ活動を支えてきた「無限」が細部にまでこだわって作り上げた究極のFFスポーツだ。
K20A(最高出力240ps/8000rpm 最大トルク:22.2kgm/7000rpm)エンジンを搭載する無限初のコンプリートカーである。
シビックやインテグラのタイプR、スバル・インプレッサWRX STIなど、限定車やメーカー純正のコンプリートカーは特に人気が高く、想定外の高値で落札される例が後を絶たないという。
実際にこれらの人気車種が日本国内の業者オークションにおいてどれくらいの価格で落札されているのだろうか?
高値で落札される例が増えた今年4月以降、MUGEN RRの3台について価格を調べてみた。
実際に高値で落札された例をみてみる
以下は4~7月に落札された「シビックMUGEN RR」の価格である。
・全車4ドア
・MUGEN RR(ABA-FD2)
・フロアシフト6速
・排気量2000ccで同じ仕様である。(価格は消費税込み)
平成19年式/約2万km
スタート価格:398万円
応札額:1159万円
平成20年式/約3万km
スタート価格:398万円
応札額:1323万円
平成20年式/約6万km
スタート価格:318万円
応札額:856万円
また、MUGEN RR以外にもシビックやインテグラのタイプRの高値落札も増えており、つい先週のオークションでは初度登録2000年8月の初代シビック・タイプRが840万円で落札された。
走行距離が3000km以下&ワンオーナーという極上車だったことも理由のひとつだろう。
全般に特に最近はホンダ車の限定車、スポーツモデルの高値落札が目立つが、ホンダ車以外では、スバル・インプレッサWRX STIなどの限定車も非常に高い人気がある。
同時期の業者オークションでは、平成18年式で約9万km走行のWRX STIが118万円→490万円で落札されている。
シビックが1323万円で落札された際の「せり」の様子を見ていたある中古車販売店経営のS氏はこのように教えてくれた。
「売り切り価格(最低落札価格のようなもの)の500万円を過ぎたところからぐんぐん上がり、最終的にはなんと1203万円(税抜き)落札されたのです」
「つまり700万円分を『競った』わけです。実際、このオークションは終了までに3分もかかりました」
「こんなに長い時間、競られることはめったにありません」
高値落札の国産スポーツ、どこに行く
さて、これらの高値落札された国産スポーツカーは、どこにいくのだろうか?そもそも、なぜこんなに高い値段で落札されているのか?
この傾向は今年4月頃から顕著になったという。
事情に詳しい業者に聞いたところ、
「日本人はたとえ貴重な限定車でも12年も前のクルマに1000万円以上出さない傾向にあります」
「アジアですね。特に香港が今、大変なことになっています」と、意外な答えが返って来た。
その業者いわく、
「赤のFD2無限シビックは1年前に2万km無事故のクルマが560万円で取引されていました。それでも高いと思ったのに……」
「シビックやインプレッサの落札価格はとにかく半年~1年前に比べると2倍以上になっています」
「香港人の買いだと思われます。特に、4月以降高値更新が続いていますコロナの真っ最中、他の中古車が値段を切り下げる中、香港人の食指が動いたクルマは青天井になっていますよ」
香港は確かに日本車の人気が高い。
筆者も年に1~2回、香港を訪れているが、視界に入ってくるクルマの9割以上が日本車と言ってもいい。
アルファードやヴェルファイアが特に人気で、香港のタクシーよりも多い台数が香港で販売されている。
しかし、MUGEN RRやタイプR、WRX STIなどの国産スポーツカーがここまで高値で取引されていたとは知らなかった。
さらに香港の業者は意外なことを教えてくれた。
「香港の中国化」が関わっている?
「海外、アジアのお金持ちはスケールが違いますからね(笑)」(香港の業者)
「とくに今年の春頃から香港と関わる業者が、国産スポーツカー(特に限定車)をまさに金に糸目をつけない状況で買いまくっています」
「実はこれ、『香港の中国化』にも関係する話なんです」
「中国はご存じのとおり自国の産業保護のため中古車の輸入を厳しく取り締まっています。(中古車輸入は死刑に相当する罪)」
「一方、香港は現在、中古車輸入OKです。香港の人はいまこう考えているそうです。『中国化が進むと、日本の希少なモデルの中古車を買えなくなるのではないか? 中古車輸入が禁止されるのではないか?』と」
「それで買い急いでいるようですね。日本の業者オークションで異常なまでの高値で取引されているクルマはかなりの割合で香港人の買いだそうです」
「香港人は限定車が大好き。BNR34等のスカイラインも買い急いでいると思われます」
なんと! 確かに、この春頃から「香港の中国化」が加速している。読者の皆様もニュースなどでご覧になったことがあるだろう。
現在のところ中古車輸入OKの香港も、やがて中国のように厳しく禁じられるのではないか……。だったら今のうちに、とにかく買えるだけの日本製スポーツカーを買いまくる!
このような事情で、さらに日本とはけた違いのアジアのクルマ好きなお金持ちたちが、まさに金に糸目をつけずに取引をしている可能性が高い。
ちなみに、落札価格1323万円のクルマが実際に香港で中古車として販売される際には、日本円にして2000万円を超える価格が付けられるという。
日本では中古のフェラーリやランボルギーニが買える値段で驚くが、香港、アジアでは日本製スポーツカー=HONDAというイメージが根強い。
値段はさておき、買えるうちに買っておくという動きは今後も加速しそうだ。
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