11月28日に行なわれた2021スーパーGTシリーズ最終戦で、ひとつの時代が終りを告げた。R35の型式名で知られる日産GT-Rがラストレースを迎えたのだ。2008年にデビューし、4月に鈴鹿で行なわれた開幕戦で勝つと、その後も勝利を重ねていって全9戦中7勝。3勝を挙げたNISMOのエース、23号車を駆った本山哲/ブノワ・トレルイエがチャンピオンに輝いている。その後も幾多の勝利を飾り、5度のチャンピオンにも輝いてきた名車、日産GT-R。そのデビューイヤーにNISMOのエースとして23号車をドライブ、優勝を義務付けられた激しい重圧を跳ね返して王座に就き、やがてレジェンドにも上り詰めた本山は、R35 GT-Rの“引退”をどう感じていたのだろうか?
「日産/ニスモでいろいろなクルマをドライブしてきたけど、R35ほど大活躍させてもらったクルマはない。いい思いをさせてもらった印象があるので、ラストレースと聞くと寂しいけど、『お疲れさま』と声掛けたいね」。開口一番そうコメントした本山。一番の思い出を尋ねると「やはりデビューレースで勝てたことと、デビューシーズンにチャンピオンになれたこと。ともかく日産やニスモからは絶対に勝つように言われてたからね」と当時を思い出しながら苦笑いした。
■【スーパーGT】写真で振り返る日産GT-Rの足跡(2008~2021)14シーズンで5度の王座、GT500最多勝
スーパーGTでは数年ごとに車両規定を変更してきていたが、実は2009年には新規定が導入される予定になっていた。ところが、日産GT-R(R35)の発売は07年の12月で、日産/ニスモとしては08年シーズンの開幕と同時に実戦デビューさせたいとの意向があった。そこで09年規定に則ったシャシーを開発し、エンジンは08年までの規定に則ったVK45を搭載するハイブリッドマシンだった。パワー的にはZに搭載していたものより少しだけは向上したようだが、それ以上に厳しい縛りが待っていた。
それは性能調整によるウェイトハンディ(WH)で、総重量が1200kgを超えると後はエアリストリクター径を絞って対処するというもの。実際には開幕戦こそ開発時の1100kgそのままで挑めたものの、第2戦では+50kg、第3戦以降は+80kgの性能調整が加えられたのだ。さらに開幕戦で勝った23号車は優勝によるWHが55kg加わったために第2戦では+105kgとなり早くもリストリクター調整の対象となっていた。しかしその第2戦では、予選1回目には本山がコンマ1秒差の4番手につけるとスーパーラップ(トップ10による予選2回目)ではコンビを組んだトレルイエがトップタイムをマーク。決勝でもポールから逃げ切って開幕2連勝を飾っている。
「開幕前のテストでそのパフォーマンスは確認できていたけど、レースは何があるか分からないから……。(デビュー戦となった)開幕戦の鈴鹿で勝った時は、嬉しいというよりもホッとした、それを強烈に覚えているよ。開幕2連勝を飾ってポイントではリードしたけれど、ウェイトハンディもあって厳しい戦いも多くなった。それでも23号車はチャンピオン獲得も必須だったから……。最終戦で、確か9位に入ってチャンピオンを決めた時も、嬉しいというよりもホッとした感が強かった」と当時を回想する本山。ちなみに、第3戦では性能調整の80kgに加えて開幕2連勝による110kgが加えられWHは195kgにも及んでいた。
ところで、本山とGT-Rの“馴れ初め”は「子供の頃からカートで走っていてレースは身近なものだったから、グループAレースで活躍していたGT-Rには憧れていた。日産の契約ドライバーとなってシルビアやサニーで頑張っていたら星野(一義)さんのチームからGT500にデビュー出来て、初めてスカイラインGT-Rをドライブできた時はとても感激した」という。その後、1999年には日産ワークスのニスモに移籍し2003年からはエースカーである23号車をドライブ。同年、初のチャンピオンに輝くと翌年は2連覇。トップドライバーへの道を駆け上がっていくことになる。
本山は実は、ロードカーとしてもR35 GT-Rを所有している。マイナーチェンジ(MC)の度に進化しているR35GT-Rだが、オーナーでもある本山は「市場の要望に応えているのかな? MCの度にパフォーマンスが上がるだけじゃなく大人が乗るクルマに相応しく、キッチリと洗練されているよね」と満足気だ。そして「レースの世界ではトヨタやホンダといったライバルと切磋琢磨して、速いだけじゃなくレースに強いクルマに仕上がっていった。来年からは新しいクルマになるようだけど、市販車を含めて、次のGT-Rがどうなるのか、それも楽しみだね」と目を輝かせていた。
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