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3基目を投入したMOTUL GT-Rの背景と、明暗分かれた3メーカーのスペック2ニューエンジン【第5戦GT500決勝】

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3基目を投入したMOTUL GT-Rの背景と、明暗分かれた3メーカーのスペック2ニューエンジン【第5戦GT500決勝】

 2年ぶり開催を迎えたスーパーGTみちのく決戦。9月11~12日のスーパーGT第5戦は、続く10月開催の第6戦オートポリス(AP)を含め、昨季投入された2020年規定GT500車両にとって初挑戦という秋の“初モノ2連戦”に。その点で参戦3メーカーにとっても、2021年シーズンの行方を占う重要な1戦となった。

 後半戦開幕となるこのレースに向け、各陣営とも年間2基目のエンジン投入が計画されており、第2戦富士スピードウェイで無念のブローを喫していた23号車MOTUL AUTECH GT-Rのみ、トラブル対策で2基目を先行使用してきたニッサン陣営は、このラウンドから「3号車(CRAFTSPORTS MOTUL GT-R)も12号車(カルソニック IMPUL GT-R)も、そして24号車(リアライズコーポレーション ADVAN GT-R)も2基目です」(ニッサン松村基宏総監督)と、計画どおりのアップデートを果たした。

スペック2のニューエンジンを投入した直後のアクシデント……ニッサンGT-Rが1台、GRスープラ3台の各事情【第5戦GT500あと読み】

 そしてディフェンディングチャンピオンがランキング首位浮上(山本尚貴)を遂げて臨んだホンダ陣営は「もともと計画では次のAPからというふうに準備していたんですが、今回から64号車(Modulo NSX-GT)、1号車(STANLEY NSX-GT)、17号車(Astemo NSX-GT)、この3台に2基目の方を入れています」(ホンダGT500開発統括/佐伯昌浩LPL)と、前戦でトラブルに見舞われた64号車に加えて“3基前倒し”での投入となった。

 一方、GRスープラを走らせるトヨタ勢は、実質今季4戦目となった第3戦鈴鹿終了時点で「(1基目は)お役御免のつもりで使ってます」(TRDエンジン開発責任者/佐々木孝博氏)との発言どおり、この第5戦から6台全車がニューエンジンを搭載した。

 しかし、土曜走り始めのGRスープラ勢はロングランのペースこそ悪くない雰囲気だったものの、1発の速さが試される専有走行から予選へと進むと、サクセスウエイト(SW)搭載による燃料流量リストリクターのランクダウン領域に“入らない”比較的軽量な車両でも、38号車ZENT CERUMO GR Supra、39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraがともに7番手、8番手の4列目が最上位と苦しい状況に立たされた。

 そして決勝でも、ルーティンピットを終えたレース後半から立て続けに“負の連鎖”が巻き起こり、47周目の最終コーナー上りで19号車WedsSport ADVAN GR Supraがエンジンから炎を上げてイン側にストップ。58周目にはZENT CERUMO GR Supraがガレージへと戻り、63周目にはポイント圏内を走っていた14号車ENEOS X PRIME GR Supraがターン1手前でストップするなど、陣営内アクシデントにより戦列を去った37号車KeePer TOM’Sも含めると、4台ものGRスープラが姿を消す形となってしまった。

 レース後のパドックではエンジン関連のトラブルシューティングに追われる状況で、TRD開発陣より詳細に関するコメントを得ることは叶わなかったが、19号車を筆頭にエンジン換装の覚悟も必要となりそうな厳しい状況に追い込まれた……と言えそうだ。

 一方、そのペナルティ覚悟で日曜から『年間3基目』を投入する形となったニッサンのエースカー23号車は、前日からQ2進出を逃すなど「3号車とは(タイヤの)コンパウンド違いを試していた部分もありますが、何で調子が悪かったのかを調べないといけない」との松村総監督の言葉どおり、翌日に向けて大きな決断を下した。

「土曜に関してはエンジンをニューにしていないのもあるし、タイヤ温度の問題が非常に敏感に影響する部分もありましたが、何が起きているのかを調べた結果、2戦目の事前時点で調べたときの兆候と似たようなことがあった。本戦中に壊れるとポイントも何もないので、それで念のために換えました」

 その23号車は、代償としてレース序盤にインラップ/アウトラップ+5秒というペナルティを科されクラス最後尾からの巻き返しを強いられたものの、最終盤の81周目にはGT300クラスの車両と挟まれながら、松田次生がエアロパーツ破損をモノともしない突破劇で64号車をオーバーテイク。24号車に次ぐ7位までカムバックを果たした。

「次に向けてデータも採れたし、積み替えたエンジンが安定して動くのも確認できた。交換した割には上出来だったんじゃないかと」安堵の表情を見せた松村総監督。

 その一方で優勝した12号車と対照的に、3号車ではエンジンに「マイナートラブル」を抱えたことで、喜びとともに複雑な心境でシーズン折り返しの1戦を終えている。

「ありがたいことに、去年と比べると今年は4車とも歩留まりよく、みんな良い状態のときは走れるようになっている。12号車のふたりは伸び伸びドライビングして、終盤でもラップタイムはかなり速いタイムが刻めていた」

「一方の3号車は、途中でちょっと変な症状が出て『どうしたの』を調べるために入って来た。12号車が優勝できたのを見ると、サスペンションも空力もSUGOに合っていましたので、3号車も充分に表彰台を狙える位置にいた。そこはちょっと残念です」

■「後半残り3戦に向けて充分優位な位置に立っている」とホンダ陣営
 そんな大小の懸念を抱えた2社に対し、後半戦に向け成功を収めたのがホンダ陣営。車体領域ではミッドシップ時代からここSUGOとの相性が良く、フロントエンジン化して初めて戦う1戦に向けても、事前のタイヤメーカーテストで走行したダンロップ装着車のデータを有効活用して臨んだ。

「実際に今のスーパーGTでのレース前準備って言うと、テストで走行する場合がほとんどではあるものの、予測シミュレーションだとかソフトウェアを駆使しての準備もします。その予測に使っているさまざまなデータが、このSUGOで精度良く扱えるレベルにちゃんと達してる、入ってる、収まってるか、というのは確認したいところではありました。1台だけでも実際に走るテストがあったことで、そこの精度の確認はできた。ほかの4台……BSを履くチームも含めて、事前準備の底上げができた効果はあったかな、と思います」と、NSX-GTの車体開発を率いる徃西友宏氏。

 一方、エンジンの運用に関しても、前戦でクラッシュし被害の出た64号車に加え、ポイントランキング上位の2台に先行搭載する戦略を採用した。

「ホンダ全体で見たときに、新しいエンジンも正常進化はしているのでパワーも上がってます。年間を通して考えたときに残り4戦しかないなかで、1号車、17号車のポイントランキング上位2台が1点でも2点でも良いから獲れるレースをしていかないとダメ。ということで、まずランキング上位の2台に入れました。17号車はしっかりQ2でも上位の方に入ることができたので、エンジンの効果も多少なりにはあったのかな」と、予選終了後に明かしてくれた佐伯LPL。

 その土曜公式練習では17号車が接触され、1号車は大掛かりなセット変更と確認で貴重な走行時間を失っていたにも関わらず、決勝では2台ともに表彰台まで駆け上がる力強さを披露。とくに1号車は「レースを通じて燃費の良い走りができて」いてラップペースも良好。ミニマムとしたピット戦略で一気にアンダーカットを成功させ、コース上では37号車とのバトルも制して表彰台圏内まで順位を上げてきた。

「今年、車両メーカー、タイヤメーカーとも非常に拮抗している年なんですが、1号車がここまでポイントを伸ばせたということは、後半残り3戦に向けて充分優位な位置に立っていると思います。概ねドライバーのコメントも良い方向で、まあなかなかドライバーから『このエンジン良いね』って言われることないんで(笑)。体感できる性能向上が、ある程度あったんだろうな……というふうに捉えてます」と決勝後に語る佐伯LPLに対し、車体担当の徃西氏も「勝てる状態だったクルマ(8号車)で勝ちたかったな、というのが正直なところ。反面、一番ウエイトの重いクルマが2位まで上がれたっていうのは、クルマを準備してくる過程で狙った性能というのをうまく引き出して、コース上で力強く走ってくれたおかげということで、そこはうれしい結果でした」と、NSXの5台全車が完走してポイント獲得を果たしたレースを振り返る。

 この2位表彰台15点を加算し、計55点とした1号車は、次戦APで燃料流量リストリクター『3ランクダウン(88.0kg/h)』の領域に入る。もちろん勝負どころの出力面では大きな足枷ではあるものの「燃料流量が下がれば下がるほど、エンジン負荷にとっては非常に楽な状態になってしまいます」(佐伯LPL)と、運用面ではメリットも生じる。その後にはウエイト搭載量“半減”の第7戦もてぎと、恒例“ノーウエイト”勝負の最終戦富士が控えている。

 もちろん、FRのNSX-GTにとってもてぎは優勝実績があり、富士も“験がいい”コース。ここでエンジンの持てる性能をすべて解放する運用を考えるのが当然で、それは本来ならトヨタが一番採用したかった戦略のはずだ。

 また今回勝利を飾り、鈴鹿から連勝を果たしたニッサンにとっては、2020年投入の新規定車両でここSUGOのテストを一切経験しておらず、松村総監督も「過去のデータとシミュレーションを繰り返すことによって、どういうセッティングで持ち込むか。全車が全部1発で決められたわけじゃないんですけど、予選上位に行ったクルマはあまり弄らないで持ち込んだとおりで走れていた。その意味で、計画は当たったんじゃないかな」と、相対的ハイダウンフォース型の現行GT-R復調と底上げを感じ取っている。「次のAPも“僕は”期待してますけど、それはやってみないとわからないですし、だから一所懸命やりますよ。今年を諦めてるわけでもなんでもないんで」

 今季開幕時点で「開発競争は揺るぎなく健在」と記したが、そのシビアさと過酷さはさらに加速度を増し、規定条文のすみずみまで目を凝らした極限の領域を進み続けている。

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