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マツダのマジメさ、キラリと光る──新型CX-8レポート

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マツダのマジメさ、キラリと光る──新型CX-8レポート

マツダの3列シートSUV「CX-8」が大幅改良を受けた。実車を見た今尾直樹の印象とは?

3種類の新機種

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マツダの3列シートの6~7人乗り大型SUV、CX-8の改良版が登場した。2017年にマツダの国内市場のフラッグシップとして登場したCX-8は、これまでに3度の商品改良と2度の仕様追加が行われている。「つねに最新の技術を提供する」というモットーをマツダは掲げているからだ。2年ぶりの「大幅改良」となる今回は、CX-8の完成形を目指しているという。

全体を通じては、前後バンパーとランプなどをマツダの最新デザインに変更している。フロントのヘッドライトとバンパーは「CX-5」と共通で、これまでCX-9とおなじだったリアのライトは独自のデザインに改めている。狙いは「プレミアム感の向上」にある。

目玉は、多様なライフスタイルに対応すべく、新たに3つの機種を設定したことだ。最上級の「エクスクルーシブ・モード」、スポーティな「スポーツ・アピアランス」、そしてレジャーを意識した「グランド・ジャーニー」、である。

あ。マツダでいう「機種」、もしくは「特別仕様車」は一般的な自動車用語でいうと「グレード」にあたる。これら3機種以外に「スマート・エディション」、あるいは「25S」、「XD」という名称も残されており、これらはエントリー/コア・モデルと位置づけられている。

つまるところ、新しい機種体系への変更は、いわゆるキャラ設定、つまり登場人物の性格を明確にしようという試みで、CX-8をひとりの役者だと考えると、あるときはお金持ち、またあるときはスポーツマン、そしてまたあるときは旅人、と演じ分けた宣伝材料用の見本をあらかじめつくって配っている、ようなことだといえるかもしれない。そうすることで、都会派の大型クロスオーバーSUV、CX-8の幅を広げようというのだ。

エクスクルーシブ・モードでは、たとえば、カラード・バンパーを採用してボディと全体の一体感を図ると同時に、バンパーのガーニッシュやボディのサイドにメタル・パーツを用いてキラキラ感を出している。キラキラするものを、現代人であっても、人間というのは高級だと思うらしく、実際、高級そうに見える。ボディ色には、新色として「CX-60」で初採用した「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」が加えられている。蛇足ながら、CX-60は今年発売したマツダにとってひさしぶりの縦置き後輪駆動プラットフォームの中型SUVである。内装では高級レザーの代名詞であるナッパレザーが用いられている。

スポーツ・アピアランスは、これまでのブラック・トーン・エディションの延長上にある仕様で、メッキ・パーツを極力減らし、艶あり、もしくは艶なしのブラックのホイールやグリル、ガーニッシュを採用している。内装では、ブラック・トーン・エディションで特徴的なバーガンディのレザー表皮を継続している。ブラックもある。赤、黒、どちらもライトグレーのステッチも施されている。これは、ロードスターでも使用していた組み合わせだという。撮影車両を眺めていたら、全体にモノトーンのようなシンプルさによって、大型SUVなのにシャープな雰囲気を醸し出していると筆者は思った。

3つめのグランド・ジャーニーは、開発責任者の齊藤圭介氏のイチオシでもある。それというのも、2020年に始まったパンデミックによって「価値観が変わりつつある。おとなは心身をリフレッシュしたいと思っているし、子どもがいるひとは、外でしか学べないことを経験させたい。だから、ロング・トリップのニーズが高まっている」と齊藤氏は考えているからだ。

グランド・ジャーニーは、スマート・エディションをベースにしていることもあって、車両価格457万8200円と、ほかの2つの機種よりお値打ちになっている。アウトドアっぽさを打ち出すべく、外観ではルーフ・レールを装着し、専用の19インチ・ホイールを装着するなどしている。内装は、合成皮革とファブリックの2トーンで、さまざまなシーンに、気兼ねなく使えることと、明るい気分になることを意識している。

駆動方式は4WDのみで、「MAZDA INTELLIGENT DRIVE SELECT」、略してMi-DRIVE(ミードライブ)には、「オフ・ロード」モードが新たに設定されている。グランド・ジャーニー以外の機種は「ノーマル」と「スポーツ」だけとなる。

「規制を守るのではなく、お客さまを守る」このほか、マツダらしく「ダイナミック性能の深化」についても怠りない。サスペンションのフロントのダンパーとコイル・スプリングの特性を見直すことで、疲れにくさを向上させ、3列シートのSUVでも人馬一体感の向上を図ってもいるという。

シートでは、マツダの持論である「骨盤を立たせる」姿勢が取れるようなクッション座面に形状を変更している。変曲点を変えることで、お尻を沈み込ませるのだ。「骨盤を立たせる」となにがいいのか? 「歩くようにクルマをドライブすることができる」と、マツダのエンジニアから、大意そんなレクチャーをかつて受けた記憶が筆者にはあります。

エンジンは、従来と変わらず、2.5リッターの直4ガソリン、同ターボ、そして2.5リッター直4ディーゼルの3種類で、6ATとの組み合わせとなる。マツダ車としては珍しく、MTの設定がない。駆動方式はFWDと4WDが選べる。

最後に、マツダのユーザー調査によると、CX-8を選んだ理由のひとつに、安全性を選ぶひとが多いという。3列6人、もしくは7人乗りの国産SUVのなかでは、全長4925mmと比較的大きいからかもしれない。

今回の改良の説明会でマツダの担当者が語ったところによると、マツダは安全衝突に関して独自の基準を持っている。「規制を守るのではなく、お客さまを守る」という方針のもと、最大限の安全性を確保しているという。

たとえば、3列めの乗員にとって重要な後ろからの追突に関する日本国内の法規は、50km/hのフルラップ(正面)追突で、燃料漏れがないこと。米国では80km/h、70%のオフセット追突で、これまた燃料漏れがないことが評価基準になっている。マツダは、米国同様、80km/h、70%のオフセット追突で、燃料漏れがないことはもちろん、「最後席の生存空間を確保すること」と「非衝突側の後席ドアが人力で開くこと」を独自に化している。

なぜ米国と同じ衝突形態を基準にしているのかというと、メイン市場に合わせているわけではなくて、日本国内の追突事故の99%は70km/h以下で起きているからだ。想定速度を80km/hにしておけば、ほぼカバーできる。

そのためにCX-8はリアのフレームを真っ直ぐ配置した「ストレートフレーム構造」をとり、衝撃を受ける部分に従来の6倍の強度のある素材を使ったり、つなぎ目にエネルギーを効率的に吸収する十字断面構造を用いたりしているという。

衝突実験の動画を見せてもらったけれど、後ろから80km/hでオフセット追突されたCX-8の3列目空間は潰れることもなく、追突された側の後席ドアだって、ちゃんと開いた。CX-8のボディは日本の法規はもちろんのこと、マツダ独自の基準を超える安全性能を備えていたのだ。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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