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最強スポーツ版「スーパーホークIII」に進化するも、最後はアメリカンのエンジンで終わったホーク系並列2気筒モデル

掲載 更新 14
最強スポーツ版「スーパーホークIII」に進化するも、最後はアメリカンのエンジンで終わったホーク系並列2気筒モデル

すぐにホークIIIを投入し「4気筒+DOHC」勢に対抗したが……

1977年の登場から1~2年、扱いやすさと俊敏さを併せ持つホークシリーズは一定の人気を獲得したが、ホークII CB400T&ホーク CB250Tともスタイリング面では若年層のハートをつかむには至らなかった。
折しも中型クラスで4気筒人気が花開き始めた1980年代直前、2気筒のホークシリーズはモデルチェンジやバリエーションモデルを行いつつ、生き残りを模索することになった。

【画像13点】ホークIIIやスーバーホークIII、アメリカン派生車など歴代ホーク系モデルを写真で解説

良くも悪くも、丸みを帯びたフォルムと分厚いシートが特徴的だったホークIIに対し、間もなく派生モデルが登場したのは1978年夏のこと。ミッションの6速化や足まわりのバージョンアップなどでスポーツ性を強調したホークIII CB400Nだ。続いて1979年夏にはホーク CB250Nが登場するが、いずれも上級モデルのCB900F(輸出向け車)/CB750Fに通じるスタイリングは、より若年層にも受け入れやすいもので、一時期はホークIIの外装をごっそりとこちらに載せ替えるといったライダーもいたという。

だが、ホーク系並列2気筒の根本的な部分での不運は、時代的に多気筒+ハイメカニズムが人気の主流だったことだろう。中間排気量ならば、4気筒よりも2気筒にコストパフォーマンス面で利点が多いのは、現在の中間排気量クラスに2気筒モデルがかなり多いのを見てもわかることだが、80年代の風潮は違ったのだ。
軽さよりもそこそこボリュームのある車格が好まれ、メカニカルな存在感の多気筒が人気を博したのはベテランライダーの方はご存知だろう。そして、バルブ駆動はシングルカムよりツインカムが高性能の象徴とされた。

余談だが、そんな流れを決定づけたのが、1979年に登場のカワサキ Z400FXだろう。空冷4気筒にDOHC2バルブヘッドを持つ同車のエンジンは、結局ゼファー400系にまで受け継がれて2000年代を超えて生き残る長寿ユニットとなったが、このZ400FXが決定打となり、以後ライバル社のモデルはこのエンジン形式を踏襲。
ヤマハはXJ400(DOHC2バルブ採用:最高出力45ps/1万rpm)を1980年に、スズキはGSX400F(DOHC4バルブ採用:同45ps/1万rpm)を1981年に登場させ、400ccクラスでの並列4気筒+DOHCの人気に追従することとなる。

■ホンダ ホークIII CB400N(1978年登場)
丸みを帯びた初代ホーク系に対し、同エンジン(OHC3バルブの空冷並列2気筒)搭載の派生型として、ヨーロピアンフォルムをまとったホークIII CB400N。1978年8月発売で、当時価格は34万9000円。最高出力は40馬力とホークII CB400Tと変わらないが6速ミッションを搭載、フロントはダブルディスクブレーキへと強化されている。セミフラットなハンドル、バックステップ化により、運動性能と外観もスポーティさが強調された。

■ホンダ ホーク CB250N(1979年登場)
1979年7月に発売されたホーク CB250N(当時価格33万9000円)。ホークII CB400T/ホークCB250Tの関係同様にホークIII CB400Nの250cc版で、6速ミッション化やフロントダブルディスク化などの改良点も準じる。ただし、ホーク CB250Nではアップハンドルとセミフラットハンドルを選ぶことができた。

スーパーホークIII「ホーク系ツイン最後の切り札」

だが一方のホンダは、ホーク系並列2気筒の優位性を簡単に諦めたわけではない。並列4気筒DOHC 400ccモデルの用意も進めつつ(実際ホンダは1981年にCBX400Fを登場させ販売面で大成功を収める)、スタイルを変え、品を変え、ホーク系モデルの延命を試みた。

70~80年代当時の派生モデル展開の「文法」を踏襲し、ホーク系並列2気筒搭載のアメリカンモデル・CM400T/CM250Tをリリースする一方、オンロードスポーツでも一矢を報いるべく、1980年夏にスーパーホークIII(CB400D)を、軽二輪クラスには同様の意匠のスーパーホーク(CB250NA)を投入。
当時の広告やカタログでは、世界GP500ccクラスで彗星の如くデビューし活躍し始めたフレディー・スペンサーを起用し、スーパーホークIIIの「スーパーぶり」を大きくアピールしたのが強く印象に残る。

以下、同車カタログの文面より引用。
「あの凄い走りのCB400Nを、スーパーホークIIIは、はるかに超えた。豪快な出足。俊敏なレスポンス、パンチある高速での伸び、そればかりではない。輝く黄金の足回り、ジュラ鍛セパハン、マルチホールトリプルディスク、デュアル・ピストン・キャリパーなど、数々の世界初装備。そのアピアランスは、スーパーメカニズムは、まさに、サーキットマシンそのものだ。ホンダのニューテクノロジーを惜しみなく注いだスーパーホークIII。400ccロードスポーツの新しい時代を予見させる」

そしてカタログの見出しで、「F.スペンサーはエキサイトした。」と煽る。
当時、バイク雑誌を穴の開くほど熟読していた筆者(現在50代)は中学3年のライダー予備軍。バイクの知識も薄く、無論乗車経験も皆無ながら、素直にこう感じた。「スペンサーは随分絶賛しているけど、性能はホークIIとも、ホークIII(CB400N)とも大して違わないよなぁ」と。
かくして、足まわりや細部のグレードアップで間違いなく性能を高めてはいたが、スーパーホークIIIは広告宣伝に力を入れていたことだけが印象に残り、筆者を含む若者の心をくすぐるには至らなかった。

ホンダはコストパフォーマンスを意識しつつ、洗練した扱いやすさや速さを同車に込めていたのだろう。要のエンジンもよく練られて、2気筒のメリットを生かした俊敏さを体現して見せたが、当時の流行に沿う形式やスタイルではなかった。
また、意図してのことだろうが、エンジン外観にメカメカしさはなくスッキリとしており、ある意味そっけない。だが、このエンジンのデザインも、2気筒や単気筒のコストパフォーマンスモデルも堅実に人気を得ている今なら、案外受け入れられたかもしれないが……。

かくして、ホンダの技術での裏付けを体現し、性能面と生産コストを両立したホーク系は、70~80年代に激動する国内販売競争、高性能競争、メカニズム競争の荒波に揉まれ埋没せざるを得ず、ホーク系並列2気筒を搭載して1982年に送り出された派生型アメリカン・CB400LCの発売を最後に国内市場からフェードアウトしていったのだった──。

■ホンダ スーパーホークIII(400cc/1980年登場)
■ホンダ スーパーホーク(250cc/1980年登場)
さらにスポーツ方向へ寄せ、他社との性能競争に対抗しようとしたのが、スーパーホークIII(1980年8月発売・当時価格39万8000円)と、250cc版のスーパーホーク(1980年9月発売・当時価格36万8000円)。
ドリルドディスクローターやフロントにセミエアサスペンション(*)を採用するなど、足まわりをさらに強化。ゴールド仕上げのコムスターホイールなどで質感も高められていた。
フレディ・スペンサーを登場させたカタログでも印象深いが、ほかにも角川映画「スローなブギにしてくれ」(1981年3月公開)で主人公の愛車として登場するなど、販促活動は精力的だったものの、各メーカーの足並みが揃った4気筒路線に苦戦を強いられた。

*セミエアサスペンションはスーパーホークIIIのみ

■ホンダ CBX400F(1981年登場)
400cc並列4気筒モデルとして、最後発で登場したCBX400Fは1981年11月発売。ライバル社の4気筒モデルに対し、ホンダは世界初のブレーキトルクセンサー型アンチダイブ機構(TRAC)、インボードベンチレーテッドディスクブレーキ、プロリンク式リヤサスペンション、ブーメラン型スポーツコムスターホイールなどで独自性を盛り込んだ。
さらに新設計DOHC4バルブの並列4気筒は、コンパクト化を図りつつ当時クラス最高の最高出力48ps/1万1000rpm、最大トルク3.4kgm/9000rpmのスペックで人気を獲得。発売当時価格は単色が47万円、ツートーン色が48万5000円だった。

CM400T、CM250T、CB400LC「ホーク系並列2気筒の派生アメリカン」

■ホンダ CM400T(1979年登場)
■ホンダ CM250T(1980年)
70~80年代の国産モデル展開の文法にならい、ホーク系エンジン搭載のアメリカンモデル、CM400T(1979年8月発売・当時価格34万9000円)とCM250T(1980年10月発売・当時価格33万8000円)も登場。
ともにプルバックハンドル、段付きシート、ティアドロップ型タンクなどでアメリカンフォルムを演出したが、スッキリしたフォルムのエンジン外観、高回転型ショートストローク型ツインの特性はアメリカンには今ひとつなじまず、販売は苦戦。CM400Tがコムスターホイールだったのに対し、CM250Tはワイヤースポークホイールだった。

■ホンダ CB400LC(1982年登場)
国内ラインアップで、ホーク系エンジンの最後の搭載車となったアメリカンモデルのCB400LC(1982年4月発売・当時価格39万8000円)。ゆったりとした乗車姿勢を狙ったアメリカンフォルムに仕上げられていたが、エンジン性能は特にデチューンなどされず、ホークII CB400T、ホークIII CB400N、スーパーホークIIIそのままの最高出力40ps/9500rpm。
ラグジュアリー・カスタムの頭文字=LCが表すように外観各部をクローム仕上げにするなど質感の高さを演出したものの、供給過多気味だった同時期の国産アメリカンモデルの中で、存在感は示せなかった。

ホンダ スーパーホークIII主要諸元(1980年)

[エンジン・性能]
種類:空冷4サイクル並列2気筒OHC3バルブ ボア・ストローク:70.5mm×50.6mm 総排気量:395cc 最高出力:40ps/9500rpm 最大トルク:3.2kgm/8000rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2115 全幅:740 全高:1090 ホイールベース:1395 シート高:──(各mm) タイヤサイズ:F3.60-19 R4.10-18 車両重量:187kg 燃料タンク容量:14L
[当時価格 ]
39万8000円

レポート●阪本一史 写真●ホンダ/八重洲出版 編集●上野茂岐

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みんなのコメント

14件
  • 元々ホークは地味な印象だったがZ400FXの挑戦的なアピアランスを見てしまうと当時の若者がどちらを選ぶかは明らか。ホンダだったから、そこそこ売れたけどね。
  • 時代ですよ。もっと速く、もっとカッコ良く、もっと快適を目指してた上昇志向の時代には合わなかった。停滞した今ならヤマハのR7なんか受け入れられると思います。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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