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東京モーターショーと何が違う? 世界中の自動車メーカーが注目する中国ショーの実態とは

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東京モーターショーと何が違う? 世界中の自動車メーカーが注目する中国ショーの実態とは

■これが中国パワー! 桁違いに規模の大きな中国のモーターショー

 近年中国で行われるモーターショーは、世界有数の規模に急成長しています。私たち日本人にとって身近な東京モーターショーとは、会場の広さや来場者数に大きな違いがあるほか、出展社の対応にも違いがあるようです。

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 いったい、どのような部分が異なっているのでしょうか。

 中国のモーターショーといえば上海で1985年から行われている「AUTO SHANGHAI」(以下、上海モーターショー)と北京で1990年から行われている「AUTO CHINA」(以下、北京モーターショー)の2つが代表的です。

 これらのショーは隔年で交互に開催されており、2019年4月25日に閉幕した「上海モーターショー2019」は今年で18回目の開催となりました。

 筆者(加藤久美子)は2017年の上海モーターショーで中国のモーターショーを初めて訪れ、進化を続ける中国車と会場に立ち込める熱気、そして来場者が目を輝かせて展示車に群がる姿に不思議な魅力を感じ、2019年も取材に向かいました。

 上海モーターショーと北京モーターショーはいずれも例年1000社以上の出展があり、東京モーターショーにはしばらく出展していない自動車メーカーや、日本市場から撤退した「フォード」や「現代(ヒュンダイ)」、そしてかつて「ローバー」という英国メーカーとして存在し、現在は中国資本となった「MG」や「ROEWE」も、新型車を華々しく披露していました。

 まずは、中国と東京のモーターショーの展示スペースを比較します。

 上海モーターショーの会場は2015年にオープンした「上海国家会展中心」(国展)で、モーターショーで使う展示スペースは約36万平方メートルです。対して、東京モーターショーの会場である「東京ビッグサイト」は約4万平方メートル弱と、9倍の差があります。

 データで分かるように上海モーターショーの会場はとてつもなく広く、今回も筆者(加藤久美子)は1日あたり十数キロは歩きました。ちなみに展示会の業界団体である「一般社団法人 日本展示会協会」の調べによると、上海モーターショーの会場は世界で2番目に広い展示会会場で、東京ビッグサイトは78番目となるようです。

 来場者数は、上海モーターショー(2019年)は99万3000人、東京モーターショー(前回の2017年)は10日間で77万1200人でした。出展社数および出展車両台数に関しても、上海は1000社・1500台以上、東京は160社・417台とかなりの差があります。 来場者用の駐車場収容台数は、上海モーターショーが15000台以上で、東京モーターショーは9018台です。

 ちなみに、各数字はすべてそれぞれの主催者の公式発表が元となっています。

 次は、報道関係者の数と彼らへの対応について比べます。中国のモーターショーへ訪れる報道関係者の数は年々急激な勢いで伸びており、2019年の上海モーターショーは約11600名。対する東京モーターショーは、近年1万人を切る状況が続いています。

 プレスルーム(報道関係者向けに開放された部屋)について比較すると、東京モーターショーはプレスデーの2日間が過ぎると極端にスペースが狭くなり、昼食の提供もなくなりますが、上海モーターショーはプレスデーが終わってもスペースはそのまま。昼食や飲み物、お菓子の提供もプレスデーと全く同じレベルです。

 また東京モーターショーの場合、軽食の提供はプレスカードで管理され、1人につき1個と限定されています。対して上海モーターショーは、2017年がリッツカールトンのサンドイッチが、2019年は3種類から4種類のサンドイッチがいずれも食べ放題でした。

 さらに2019年の上海モーターショーではスイーツ類がとても充実しており、日本でも知られている高級ホテル「上海ルネッサンスホテル」のマカロンも用意されていました。

■実は「新車即売会」? 上海モーターショーのもう一つの目的とは

 セキュリティ体制にも大きな違いがあります。上海モーターショーでは、東京モーターショーにはない荷物検査や金属探知機が2年前から用意されていましたが、2019年はそれに顔認証システムが加わっていました。入国審査並みの厳しさです。

 そして中国のモーターショーにはやたらと警察官や保安スタッフがいます。2019年の上海モーターショーでは警察官は1000人、保安スタッフは2000人が投入されたとのことです。これに加えて、会場の運営会社に所属する警備員も大勢配置されていました。

 あわせて、テロ対策の一環としてAIが会場内の人の動きを監視して異常を判断する「早期警戒システム」も導入されたそうです。

 最後に、出展されたブースでの対応についても触れておきましょう。筆者(加藤久美子)は、最初に取材に訪れた2017年の上海モーターショーから、中国のモーターショーに何ともいえない「違和感」を覚えていたのですが、今回その理由がはっきりとわかりました。

 中国のモーターショーは、日本のモーターショーには近年出展していない「フェラーリ」や「ロールスロイス」、「ランボルギーニ」、「アルファロメオ」といった海外ブランドもすべて出展していて、一見すると雰囲気は「国際的」といえるかもしれません。

 しかし、中国のモーターショーにはまだまだ「国内向けイベント」というような意味合いが色濃く残っています。東京モーターショーのように世界に発信することが目的というよりも、中国国内のユーザーや企業に向けた「車やパーツを買ってもらうための」展示会という意味合いが強い印象です。

 今回の上海モーターショーにおいても、プレスデーにもかかわらずディーラーから招待された見込み客と思われる来場者が大勢入場しており、「会場特別価格」と銘打って新車が販売されているブースもいくつかありました。商談をするための豪華な特別席も各ブースに用意されています。

 プレスルームやプレスカンファレンスに集う報道関係者も、様子を見ているとほとんどが中国メディアのようで、「プレスカンファレンスは中国メディア限定」と指定しているメーカーもいくつかありました。少なくとも東京モーターショーには、日本メディアに限定されているプレスカンファレンスはないと思われます。

 さらに、上海モーターショーや北京モーターショーではほとんどのブースで英語がまともに通じませんでした。中国系メーカーだけではなく、日系メーカーのブースや、欧米の「フォード」「ジープ」「ランドローバー」などのブースでも同様でした。

 各種案内や資料も、英語での表記はほとんどありません。おそらく海外に発信する必要性を感じていないからでしょう。主催者および出展社側の英語コミュニケーション能力においても、東京モーターショーのほうがはるかに優れていると感じました。

 世界有数の優れた自動車メーカーを多く擁する日本。世界に向けた発信力において、東京モーターショーが中国のモーターショーの追随を許すことはないでしょう。今年の東京モーターショーにおいても、世界を振り向かせる魅力的な日本車が登場することを期待したいところです。

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