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スポーツSUVのパイオニア、ポルシェ カイエンが身に着けたライバルとの圧倒的な差とは? 【Playback GENROQ 2018】

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スポーツSUVのパイオニア、ポルシェ カイエンが身に着けたライバルとの圧倒的な差とは? 【Playback GENROQ 2018】

Porsche Cayenne

ポルシェ カイエン

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先駆者ゆえのプライド

スポーツSUVのパイオニアたるポルシェ カイエンが3代目に生まれ変わった。新型カイエンにはターボやハイブリッドモデルもラインナップされるが、まずはベーシックな3.0リッターV6ターボを搭載するベースグレードをじっくりと試乗してみた。果たして新型は、並み居るライバルを突き放す性能を身に着けているのだろうか?

「綺麗な足の動きがもたらす爽快感、新型はライバルに大きな差をつけた」

初代カイエンが登場したのは2002年のこと。以来16年の時が経つわけだが、ご存知の通りその成功はポルシェを驚くほど潤わせただけでなく、数多のスポーツ&スペシャリティブランドにとってのビジネスモデルとなった。今やライバルと目されるSUVは枚挙に暇がない。

追われる身としての環境は2代目の登場時と比べても格段に厳しい。そんな中で完全刷新された3代目カイエンがいよいよ日本にも上陸した。VWグループのコアアーキテクチャーとなるMLBエボを採用したそのディメンションは、全長や全幅は2代目に対してやや大きくなるもホイールベースは同じ2895mm。これはMLB系に属するQ7やベンテイガ、ウルスよりも約100mm短く、ここにポルシェとしての独自性がみてとれる。同時にこのアーキテクチャーの採用によって最大65kgの軽量化が謳われたが、試乗したカイエンのエアサスなしベースモデルは車検証の記載値で2040kgと、確かにライバルと比べても充分軽い。

「3.0リッターV6直噴ターボは340ps/450Nmを発揮」

新型カイエンに搭載されるエンジンは3.0リッターV6直噴ターボで340ps/450Nmを発揮。8速ATとの組み合わせで0-100km/h加速は6.2秒をマークするという。ちなみにカイエンSになると、ミラーサイクルの概念を取り入れた2.9リッターV6ツインターボを搭載することで、440ps/550Nmの出力で0-100km/h加速は5.2秒を実現している。

シャシー周りでのトピックはリヤアクスルステアを採用したことだろう。80km/hを境に最大同相1.5度、逆相3度の舵角をバリアブルに加えるこのシステムは、最小回転半径の小径化や低速コーナーでの回頭性、高速安定性などに寄与する。

「限りなく素の状態に近い個体を試乗」

加えて、ブレーキはスチールとPCCBの他、新たにPSCBが用意される。これはタングステンカーバイトコーティングを施されたディスクと専用パッドの組み合わせによって、スチールに対して約30%のロングライフ化や低ダスト化を果たしたもので、10ポット対向キャリパーとの組み合わせとなる。ポルシェの慣例に沿ってサプライヤーの公表はないものの、キャリパーとパッドは曙ブレーキ製と目されるこのシステムはターボで標準装備、他グレードでも54万1000円で装着が可能だ。

試乗した標準車は先述の通り、オプション扱いとなるエアサス及びPASM、スタビライザーを電動でコントロールすることでロールを抑制するPDCCなど、走りにまつわる装備は一切装着されない限りなく素の状態に近いものだった。唯一フィーリングに影響しそうなオプションは標準より1インチ大きい20インチホイール&タイヤくらいのもの。対して内外装はレザーインテリアパッケージやブラックアウトされたミラー&ドアグリップなど、豊富なオプションが配される。上陸間もないモデルゆえ、静的サンプルの意味合いも濃い個体なのかもしれない。

「センターのアシストグリップは初代から続くカイエンの象徴的意匠」

インテリアのイメージや操作ロジックはパナメーラにほど近い。中央のタコメーターに物理針を用いながらその左右を液晶化したメーターパネルや、振動によるフィードバックでフラッシュサーフェス化を果たしたセンターコンソールのボタン類など、共通項も多くみられる。ランボルギーニ ミウラのようなセンターのアシストグリップは初代から続くカイエンの象徴的意匠だ。

走り出しからの第一印象は、ともあれ静かになったということだ。単にエンジンがそうなったということではなく、駆動系を含めたメカニカルノイズやロードノイズも低減され、遮音性も向上したということだろう。言い換えれば走行抵抗が低減したということでもある。それを証明するように転がり感は明らかに先代よりも軽い。その動きは同じV6のマカンSくらいに乗っているような感覚にさいなまれるほどだ。

この、サラサラと転がっていく感覚を実に巧く御してくれるのが8速ATだ。高負荷対応や適度に求められるルーズさからこのセグメントでトルコンATを用いるのは常套だが、新型カイエンのそれはPDKかと見紛うほどのダイレクトなロックアップを備えており、時折コースティング機能がその邪魔をするものの、アクセル操作で適切な加減速を思い通りに得ることができる。

「ライバルに対しても総合力において間違いなくトップクラスに位置する」

代々改善されてきた乗り心地は、新型でまた一歩進化した。微低速域から綺麗に足は動き、些細な凹凸の連続でもバネ下を弾ませることはなくしっかり路面に追従する。20インチタイヤをして轍に対する耐性もかなり高く、その悪癖が鋭利な衝撃となって現れるのは橋脚や路肩等の目地段差くらいだろうか。前後席間も広くなり、背面の角度調整も可能な後席は、今や家族だけでなくゲストにも十分対応できるものとなった。

一方で、ひと回り大きくなった車格をふた回り小さく感じさせるほど、ハンドリングの自在性は高まった。操作系をいたずらに締め上げてダイレクト感を強調しているわけではないが、見たままの感覚で舵を入れていけば唐突なロール感をみせることもなく、思った通りに自然にコーナーをトレースしていく。スタビリティの側にまつわる心配は微塵もないが、中低速域で動きがもっさり澱むような感覚ももちろんない。ここから向こうのグレードやオプションは、ポルシェらしさを強調させるためのトッピングということか。

それほどにベースグレードの素直さは新型カイエンの素性を綺麗に際立たせていた。それはライバルに対しても総合力において間違いなくトップクラスに位置するものだ。

REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/神村 聖(Satoshi KAMIMURA)

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ カイエン

ボディサイズ:全長4918 全幅1983 全高1696mm
ホイールベース:2895mm
トレッド:前1680 後1673mm
車両重量:2060kg
エンジン:V型6気筒DOHCターボ
総排気量:2995cc
最高出力:250kW(340ps)/5300-6400rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1340-5300rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前255/55ZR19(8.5J) 後275/50ZR19(9.5J)
最高速度:245km/h
0-100km/h加速:6.2秒
環境性能(EU複合モード)
燃料消費率:9.2~9リッター/100km
車両本体価格:976万円

※GENROQ 2018年 11月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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