プロユースの道具を自分流に使いこなすのが粋
そもそも論ではあるが、「ルノー・カングー」のルーツを辿るとその途中に「フルゴネット」と呼ばれた商用バンの「ルノー・エクスプレス」があり、さらに辿れば、ミレーの絵のなかで農夫の横に置いてもまったく自然そうな、「ルノー4(キャトル)」なる多目的車に行き着く。
たかが「ドア」に開発者は命をかける! アウトドア派必見の「超便利」バックドア車6選
本文数行目にしていきなり結論めいたことを書けば、要するにルノー・カングーの極意とは「プロユースの道具を乗用車として自分流に使いこなすカッコよさ」にあるのだと思う。日本車でいえば、かつてあった日産AD MAXバン/ワゴン、エスカルゴ、スズキ・アルトハッスル、ダイハツ・ミラ・ウォークスルーバン、ミニカ・トッポ、トヨタ・ファンカーゴなどが近しかった。いずれもとっくの昔に現役を退いたクルマではあるが、もしも今でもあるなら、どれかを選んで日常使いにしてみたいものだ。
今年はカングー日本上陸20周年!
ところで今回のお題はルノー・カングー。すでに3世代目が姿を現しており、果たしてどんなクルマなのか、スノッブじゃなくなって見えるのは気のせいだといいが……などと興味はつきない。そんなカングーの初代が日本市場へ正規に導入開始されたのは今からちょうど20年前、2002年3月のこと。
「正規に……」と書いたのは、カングーそのものは本国では1997年に登場しており、一部の好き者……いや熱心な愛好家が待ちきれず、並行で引っ張って乗っていた。その状況を鑑みた(あるいは生産調整などの事情もあったのだろう)ルノーが、日本のユーザーの「乗りたい!」の声の大きさに押し切られてというか応えての導入……そんな雰囲気ではあった。当時のニュースリリースには「ハイトワゴンタイプモデルとしては日本の輸入車市場初のモデルとなるカングーは……」などと妙に堅苦しく書かれていたりする。
コンパクトさと観音開きバックドアが受けた「小カングー」
とはいえ「本当に売れるの?」の思いがルノーにあったのかどうか、やっとのことで用意ができたのか、当初は1.4Lモデルの1タイプで、しかもバックドアはハネ上げ式のハッチバックドアだった。その後、2003年になるとフェイスリフト&マイナーチェンジがあり、ここで顔つきがほかのルノーの乗用車風になったほか、のちのカングーのトレードマークにもなるダブルバックドアの導入が始まる。パノラミックサンルーフ車なども設定されるように。エンジンも1.6Lに格上げされ、4速ATのほか、注文生産で5速MTも用意された。
「小カングー」と通称されるとおり、初代カングーの最大の魅力といえば全幅1675mmの気安く乗りこなせるボディサイズが何よりも魅力だった。その上で、せいせいとした頭上空間、広々とした室内、ドゥン! と頼もしい音を立てて閉まるスライドドアなど、コンパクトながら実用性に徹していることで、日本でも一躍人気車となった。
ボディ色でいうとレモンイエローは、本国でカタログ落ちしたあとも日本仕様にだけ用意されていたり。それと、オーナーならおわかりだと思うが、懐が深くじつに心地いい乗り味、フカッ! としたシートクッションなども、カングーがファミリーカーとして十二分にその役割を果たす重要な要素だった。
国産ミニバンに負けない積載性を手に入れた「デカングー」
一方で、2009年になり日本市場にも登場したのが2代目カングー。気になる全幅はなんと1830mmへと一気に拡大。当初、初代カングーを愛するオーナー、ファンから「えーっ!?」の声が上がったのは事実だった。合理的な理由としては「室内スペースの拡大」があり、欧州で荷物を運ぶ際に使う幅1mの「ユーロパレット」が載せられるようにしたためにボディサイズの拡大が実行された。搭載エンジンは当初は1.6Lで、これにマニュアルモード付き4速ATのほか5速MTも用意。アクセサリーには、ロゴ入りの専用化粧パネルに収まる2DINサイズのカーナビなども用意された。
さらに2010年の夏には、限定車の「BE BOP(ビボップ)」が登場。このモデルは標準ボディに対してホイールベースが390mmも短い2310mmとした2ドアのショートボディ版で、「リヤグラスルーフ」と呼ぶ、ルーフ後半を持ち上げて前方にスライドさせて開けるユニークな装備を備えていたほか、バックドアは左ヒンジの横開きを採用していた。限定車につき希少で、筆者も導入時に横浜・みなとみらい地区で、今も広報部におられるSさんが、ガソリンスタンドからお戻りのようなご様子でルージュ色のデモカーをドライブするのを歩道を歩きながら偶然一度見かけたきりだが、ルノー版日産キューブといった縦横比が独特だった。
モダンな「アッカー顔」も癒しキャラになるカングーの魔力
そしてサッパリ顔で登場した2代目は、2013年になると、ルーテシアなどと同じようなロゴの左右をグリル(ガーニッシュ?)風に真一文字にしたデザインにデザイン変更される。初代のときと同様に、最初は「どうなの?」と思えたが、次第に気にならなくなるのは、人間の感覚とはそういうものだからだ。この2代目ではエンジンに1.2Lターボが搭載されたり、6速MTのほか、2ペダルのEDCも日本市場向けに用意された。そのほかにも、専用のボディ色をまとうなどした限定車も多数リリース。乗る人はもちろん、街なかで見かけた人の気持ちもホッコリさせてくれる癒し系キャラのクルマ、である。
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