ご存知のように、本日から消費税が10%になりました。と同時に、総務省がこちらのページで「自動車の税金が大きく変わります(原文ママ)」といい切っています。
総務省:2019年10月1日、自動車の税が大きく変わります
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/131410.html
平成最後の桜を愛でながら、古いクルマのオーナーの1人として感じたこと
●主な変更内容
・2019年10月1日以降に初回新規登録を受けた自家用の乗用車(登録車)の自動車税を引き下げ
・自動車取得税が廃止される代わりに環境性能割が導入される
・2019年10月1日から2020年9月30日までのあいだに自家用の乗用車(登録車・軽自動車)を購入する場合、環境性能割の税率1%分が軽減される
・自動車取得税のエコカー減税の見直し
・グリーン化特例(軽課)の見直し
*総務省:車体課税の概要(PDF)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000610559.pdf
電気自動車やハイブリッドカーなどを購入しない限り、この施策の恩恵はありません。
これまでカレントライフでは、輸入車はもちろんのこと、クラシックカー/旧車についてもさまざまな情報発信をしてまいりました。そこで、ヨーロッパの自動車税はどうなのか?独自に調査した内容をまとめてみました。
ドイツのクラシックカーを含む自動車税に関する制度
自動車税*(課税基準:使用燃料、CO2排出量、エンジン排気量)
*車両保有時にかかる税金。取得時の付加価値税・車両登録税等は含んでいません。
■基本負担:ディーゼル(9.5ユーロ/排気量100cc)、ガソリン(2ユーロ/排気量100cc)
■CO2排出量に応じた負担:2009年7月1日よりCO2排出量で測定される新税制に変更
・基本税はエンジン排気量、そこにCO2排出量を追加課税する
・CO2排出値/エンジン排気量による税率から、「ユーロ基準」により設定
・初年度登録2009年6月以降 or それ以前かによってCO2課税率は変動する
●ユーロ1~2基準の場合は使用燃料とエンジン排気量のみの基準
●ユーロ3以降の場合は上記条件+CO2排気量も課税される
*自動車税算出例:ルノー クリオ
・初年登録2010年
・エンジン:EURO5 ガソリン
・CO2排出量155g/km、排気量1598cc
*算出方法:
・エンジン排気量はガソリンの場合100立方メートルあたり2ユーロ。したがって:15,98 x 2 = 31,96€
・2010年に登録されているため、CO2の免除下限は120g
・課税対象のCO2は155-120g/km = 35g
・CO2排出コスト:35×2 = 70€
・自動車税=31.96+70 = 101.96ユーロ
●エンジンの形態、使用燃料(ガソリンかディーゼルか)、排気量、CO2排気量、キャタライザーの装備等(どのユーロ規制をクリアしているか)
●有害物質排気量はCO2排出量のみで計算される。その他の排気物質は考慮されない
●車両ごとに定められた排出性能を基準にしており、実際の走行中に出されるCO2排出量ではない(フランス・イギリス同様)
●1km走行時のCO2排出量による車両クラスごとに税額が設定されており、車両クラスD(ガソリン車の燃費に換算すると17.9km/l)までは無税であり、E以降はCO2排出量が多いほど、言い換えれば燃費が悪いほど高額になっている。また、税額は初年度と2年目以降で税率が異なり、車両クラスG(同、14.1km/l)までは同額、Hからは初年度の方が高額になる。さらに、燃費が悪くなるに従って、初年度の方が2年目以降の税額に対してより高額になっている。
その他、税金(取得時)付加価値税(19%、一般商品と同じ)、車両登録税(登録した地方自治体によって値段は異なる、平均26ユーロ)、エネルギー税等クラシックカー(Hナンバー車)
■クラシックカーについては?
●製造されてから30年以上経っていること、オリジナルの状態を保っていること、通常の乗車に差し支えないことなどの条件を満たせば工業文化遺産として扱われる。(Hナンバープレートの獲得)
●Hナンバー自動車税は一律年間191.73ユーロに。他に車検代も優遇される
●2019年現在の税額:一律191,73€/年
*補足:クラシックカーに対するその他の優遇制度
●車検などのメンテナンス費が一律(指定機関で受ける場合)または減額
●環境ゾーン走行規制の免除:ドイツの主要都市は歴史的建造物や民家を有害ガスによる悪影響から防ぐため市街地中心部に「環境ゾーン」を定めており、通常ユーロ4以下の車両は走行不可となっているがHナンバー保持車両の場合、規制免除の対象となり同ゾーン内の走行が可能
●シーズンナンバー
・走行期間を限定して申請できるナンバープレート制度であり、オーナーは自由に期間を設定・申請することができる(例:4月~10月)
・このナンバープレート保有車両は申請期間のみの公道走行が許され、課税も申請期間のみでよいという制度。以前はオープンカーなどが主に申請していたが、2017年10月からはHナンバーとも併用可能になり、冬季に走らせることが少ないクラシックカーオーナーにはさらなる利点(節税対策)となっている
フランスのクラシックカーを含む自動車税に関する制度
自動車税*(課税基準:登録税、CO2追加税)
*ここでは自動車税としているが、2001年より自動車税が廃止されており、車両登録料とCO2税が実質の車両維持コストとなる
■登録税は標準課税馬力に応じた数(以下計算式)で地域によって税率は異なる。CV(馬力)=(P/40)1.6+U/45P:最大出力(kw)U:CO2排出量(g-CO2/km)
■CO2税(自家用車のみ)200g/km以下なら無料、201g以上だと1kmあたり2~4ユーロの課税
■その他税金(取得時)付加価値税(19.6%、一般商品と同じ)、石油製品国内税等
*補足
・近年のフランスは、欧州のなかでもクラシックカーなどの古いクルマに関してもっとも厳しく取り締まっている傾向がある
・すでにパリ市内中心部ではディーゼル車の走行禁止条例を定めており、クラシックカーなども対象となっている(ドイツのような旧車に対する優遇制度はなし)
・フランスは今まで軽油優遇制度(ディーゼル税)があったが、それを廃止したことで国民が政府に対して抗議した(今年の「黄色いベスト運動」)
・特に、マクロン大統領就任後のフランス政府の自動車産業保護の考えが日本に酷似している印象
■クラシックカーについては?
●ヒストリックカー(クラシックカー)のくくりとは関係なく、新車に比べて古いクルマは登録にかかる費用が安くなる。ドイツのようなHナンバー制度はなし。10年落ちの車なら新車の半額程度になる
●2年に一度車検が必要だが、費用は新旧車ともに~50ユーロ程度。25年以上前の車に対しては、台数が多ければ多いほど割安になる。またナンバープレートとは別に、フロントガラスに車検合格のステッカーを貼っておかなければならない
イギリスのクラシックカーを含む自動車税に関する制度
自動車税(課税基準:CO2排出量 & 車両クラス)
■CO2排出量と、使用燃料の種類(車両クラス)に応じた税額
●CO2排出量基準で区別された車両クラスによって税額は変わる
●排出量が少ないほど税金は安くなり、排出量85グラム以下は税金免除
●CO2排出量の少ない車を社用車として購入する場合にも減税
●イギリスでは1973年1月1日以前に登録されたヒストリックカーは自動車税を払わなくてよい。2001年より前に登録されたものは年額固定、以降はCO2排出量によって税額は変動する
●1973年1月1日以前に登録されたクルマ
⇒自動車税無料
●2001年2月末日までに登録されたクルマ
⇒1549cc未満:年額135ポンド、1549cc以上:年額220ポンド
●2001年3月1日以降に登録されたクルマ
⇒1kmあたりのCO2排出量によってAからMまでの13段階の料金幅があり、自分の車がどの料金帯に該当するか、インターネットや窓口で調べて税金を支払う
⇒Aクラス(最もCO2排出量が少ない)「100g/km未満」だと自動車税無料
⇒Mクラス(最もCO2排出量が多い)だと年額465ポンド(約6万円)
2010年4月1日以降に登録されたクルマ
⇒新たに設けられた税制としてCO2排出量の多い車は登録初年度のみ通常税額の倍額以上。燃費が悪いクルマほど、初年度の税額が高くなる。
■クラシックカーについては?
●上記の説明のとおり、1973年以前の登録車両は免税となる。
●「SORN」システム:乗る期間と乗らない期間、置き場所を申請し、乗る期間だけ税金を支払うというもの。ただし車検は義務。
●フロントグラスに「HistoricVehicle」のステッカー、黒のナンバープレートだとヒストリックカーの印(ドイツのHナンバー同様)
イタリアのクラシックカーを含む自動車税に関する制度
自動車税(課税基準:馬力数、排ガスグレード)
■自動車税は州税で、州ごとに税額が決められており、車両登録した州に支払う。税額は対象車が欧州排ガス規制「ユーロ」の、どのグレードに属するかで変わってくる。低燃費車はより割安になる。
*補足
・ユーロ基準が低いほど、kwあたりの課税率が高くなり、税率は州によって異なる
・ローマ、ベネチア、ナポリなど主要都市を含む州は税率が高い
■クラシックカーについては?
●20年以上経過の車両はイタリアで「クラシックカー」として認められ、減税対象となる。30年以上の車両は免除。ただしどちらも車両登録は必須。
⇒イタリアで20年以上のクラシックカー(中古車)が大量に売れ残り、税金がかかることから海外に売りに出されることが多くイタリアクラシックカーの文化の流出を恐れた政府が決定した。
●資産税はなく、流通税を一台に付き毎年27ユーロ支払う。所有車のうち、使用するものだけ税金を支払うシステムで、乗らないクルマには税金はかからない。
オランダのクラシックカーを含む自動車税に関する制度
自動車税(課税基準:自動車重量、使用燃料)
■車両の重量100kgごとに税額は決まるが、値段は居住している州によって違う。1t以下の小型車だとガソリン車は約280ユーロ、ディーゼル車だと約750ユーロ。ディーゼル車だとガソリン車の2倍程度の自動車税がかかる。
・減税オプション:CO2排出量により、減税される適用基準が近年変更される
・CO2排出量が0g/kmの車両(例:電気自動車):全額免除
・0~50g/km:50%減税
・50g/km以上:全額負担
*補足
・オランダでの自動車税は、「道路税」または「重量税」と呼称している
・車両の重量が大きければ大きいほど、道路にかかる負担(インフラ整備費)も掛かるという考えから、オランダには重量税(=道路税)が導入されている
■クラシックカーについては?
・40年以上たったクルマは自動車税免除
・オランダは環境政策促進による、自動車税基準厳格化が進み優遇制度を受けるクラシックカーも25年から40年まで対象が引き上げとなった
スウェーデンのクラシックカーを含む自動車税に関する制度
自動車税(課税基準:自動車重量または排ガスグレード)
■2006年以前の車両は重量によって課税されるが、2006年以降の車両は排ガス(CO2)量に応じて課税されるよう変更された。ディーゼル車の税率はガソリン車と比べて高く設定され、電気自動車に対しては軽減税率が適用されている
●自動車税自体は日本の約半分程度の料金だが、取得時の付加価値税(消費税)25%、道路税や炭素税などを足すと日本以上になる
■クラシックカーについては?
25年以上の車は免税。上記の通り、排ガス基準での課税からは外される
欧州(EU)諸国の自動車税制に関する考察まとめ
●ドイツだけに非ず多くの欧州諸国がCO2排出量基準で課税している(ドイツ・フランス・オーストリア・スペイン・ノルウェー・フィンランド)デンマークは燃費率によって課税。燃費が良い車はCO2排出量も少ない登録税として車両価格の180%。ディーゼル車はさらに課税される)
●燃費が悪い車には重課税、良い車には軽課税することによって環境負荷の軽減、低燃費車購入の促進を図る
●地方自治体によって税金の金額を変更するなど、地域によって考慮している。(地方の実情、その地域の平均年収等)
*補足:
●ドイツでは環境に悪影響(有害ガス排出量)が大きいクルマが重課税となり、年式関わらずもっとも環境影響度が高いディーゼル車の負担が大きい印象
●オランダは車両重量を課税対象とし、徴収分をそのままインフラ整備に投資する唯一の欧州国(他にも重量ベースで課税する国はあるが、用途ははっきりしていない模様)
●スウェーデンなど北欧ではCO2排出量と使用燃料のみが基準となるため、車両購入の際はCO2排出量が大きな判断基準となっている
●ドイツ大都市をはじめ、オランダやフランス、ベルギーもディーゼル走行禁止令を取り入れるなど、環境保全のための自動車走行規制が欧州では年々厳しくなっており、課税方法にも近年反映されてきている。日本と比べるとクラシックカーをはじめとする高年式車両に対する税制優遇度は高いどいえど、今後は大きな変更もあり得る
まとめ:旧車オーナー、そして国に届け!
一般社団法人日本自動車工業会の統計によると、2016年~2017年時点で約539万人にもおよぶ人々が自動車関連産業に従事しています。その内訳は製造や運送、販売・整備など多岐におよびます。日本の全就業人口が6,530万人、割合は8.3%。これを多いと思うか、少ないと思うかは人それぞれですが、就業者の家族や親族を含めると、かなりの人たちの生活を支えていることになります。それだけに、クルマ(新車)が売れてくれなければ困る。いつまでも古いクルマになんて乗っていないで、早く燃費の良いエコカーに乗り換えてくれよという意向もやむなしです。
古いクルマのオーナーといっても、趣味で所有している方ばかりではありません。家族の一員として、もはや手放せない存在にまでなっている方も少なからず存在します。私も叔父も、20年くらい前のトヨタ カローラを大切に乗っています。ナンバーのフォントの緑色の部分がだいぶ色褪せてきて、屋根の塗装も痛んできました。それでも乗り換えません。「壊れないし、いいクルマだし、乗り換える必要がないから」ということです。
古いクルマの存在を否定するだけでなく、現代のエコカーと共存できる施策があるはずです。
これからも、独自の視点でさまざまな情報発信を行ってまいります。
[ライター/松村透・NAO カメラ/ドイツ駐在員]
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