最後の勝利を目指して・・・。寄稿:津々見友彦
メディア対抗ロードスター4時間耐久レースは2019年の今回で30周年の記念となる。我が「ザ・モーターウィークリーチーム」はモータージャーナリストドライバーの桂伸一選手、石井昌道選手の昔の若手?と、本当にフレッシュなジャーナリスト伊藤梓選手、それにレース仲間の鳥羽昇一選手、そして30年間このレースと付き合った77歳の古株津々見友彦を擁する幅広い年齢のチーム構成だ。
本番タイヤのポテンザ アドレナリンで練習
メルセデス・ベンツ「メルセデスAMG A 35 4MATIC」発表
それだけに、普段の練習が必須。特にレース経験がまだ1年の伊藤梓。そして後期高齢者の運転免許講習会で発覚した動体視力の著しい低下の津々見は、9月のレースに向けて筑波サーキットで特訓をすることとなった。
チームオーナー五島さんの心優しい配慮で津々見には本番レーシングマシンに近いロードスターのND型「NR-A」を用意して貰うという、恵まれた環境だ。練習にはインストラクターとして桂、石井の筑波スペシャリストも参加する豪華なもの。番組DJの伊藤梓は化粧品代も削り自前で「NR-A」を調達するという健気な情熱の持ち主。
練習用にチームが選んだタイヤは当然本番に使うブリヂストンのポテンザAdrenalin RE003の195/50R16サイズ。RE003は002の後継モデル。ドライ、ウエットグリップ共に更に一段と進化したタイヤだ。
頼もしい顔つきのAdrenalin RE003
街乗りもスポーツドライビングもと幅広いパフォーマンスを誇るこのタイヤは、トレッド面(顔つき)を見ると如何にもスポーツタイヤらしい大型ブロックの面構え。これらのタイヤのお約束、太いセンターグルーブ(中央部の縦溝)を中心に、やや細めのグルーブ(縦溝)を左右に2本配されているセオリーのもの。が、そのセンターグルーブはひと工夫された優れものだった。
不思議形状のセンターグルーブ
特徴的なのが、このグルーブはくねくねした曲線の「パルスグルーブ」と呼ぶ形状だ。溝幅はくねくねと広がったり狭まったりしS字型に連続して切られている。ウエット時の排水性と接地性の両立を狙ったものらしい。
幅広の縦溝だと、たしかに排水性は良いがゴムのトレッドが減りその分グリップ力が落ちる。逆に溝が狭いと排水が悪く水膜に乗り上げてスリップする。それを回避するために一定の周期で接地と排水を繰り返させる。幅広トレッド部分でグリップ、が、すぐにまた排水、グリップ・・・と繰り返すなかなか優れた発想だ。つまりパルスが発生するので、「パルスグルーブ」と呼ぶのだろう。
快適な一般道路の走り
筑波サーキットに向かうため、首都高速や常磐高速道路を走るが、空気圧は規定圧にセット。オリジナルのロードスターの設定ではあるものの、突起乗り越えも辛いガツンと鋭い衝撃はなく、大きな不快感なく快適に走れる。ロードスター「NR-A」そのものの懐の深い足の設定でもあるのだが、それらの居住性を少しもスポイルしていない。
何しろ、エアコンを掛けながら一般道路を快適に走れるロードスターのフレキシビリティさにいつも感心するが、タイヤにも助けられた。
安心感の高いサーキット走行
サーキットでコースイン。コーナーを攻めた走りで入るとき、ステアリングを切り込むがフロントタイヤはしっとりとその舵角に応じてグリップが増し、一定(リニア)な応答なのがとても安心感がある。ある舵角では応答(グリップ力)が高まり、ある舵角になると応答が低下する・・・そのような危うい雰囲気はなく、ステアリングを切り込むとそれに応じてしっかりと定常的な応答(グリップ)を返してくれる。懐の深い応答感だ。
なので、小さな舵角からコーナーが深くなると更に切り込むが、常に一定の応答で、どの程度切り込めば、このヘヤピンを抜けられるのかなど、予測しやすい。
コーナーのアペックスまで行って、応答が落ち、慌てて切り足す・・・と、だまされることがなく、最初の設計どおりのラインをトレースできる。もちろん不快な遅れ感もない。
高速の最終コーナーも限界の挙動が穏やかなのでリヤタイヤのピークを探りやすい。突然のテールスライドなどハシゴを外されることはないので、安心して攻められ、懐の深さがここでも嬉しい。逆に言えば、より高性能なレース用スポーツタイヤのような「ビシ、バシ感」ではなく、「程よいしっかり感」なので、すぐに「人馬一体」になれる。つまり癖がない。一般道路でも意識せずに走れ、その延長でサーキットも攻められる。
練習のために「5時間耐久レース」にも参加したが、その後タイヤは無交換でそのまま町中も一年近く走り続けることができた。耐久性にも満足だ。ウェット路面でも「パルスグルーブ」の威力もあり、全く不安なく街中で走れている。
私のインストラクター役を買って出てくれた桂選手は、このタイヤに関して以下のようなコメントを出してくれた。
「ポテンザの名から想像する印象は、ハイグリップタイヤであるが、アドレナリンのグリップ力はさほど高いモノではない。と言うと誤解を招くが、純正装着タイヤよりもグリップ力は確実に高く、耐摩耗性に優れていることは既に昨年の5時間耐久と、途中ウエット路面になったが本番の4時間耐久レースでも確認済み。特にウエットでは路面状況を適確に伝えてくる接地感と、そのコントロール性の高さにおおいに助けられた。個人的には前輪タイヤの角(カド)、ショルダー部の摩耗が抑えられている点が好印象。必要最小限のステアリング舵角で旋回したいサーキット走行では、ショルダーがしっかりあることによる手応え、転舵初期の応答感を重視するので、その角が偏摩耗しない点がレース後半でも変わらない操縦感覚を与えてくれることが嬉しい。レース後半でもグリップ力の落ち込みの少なさも安定走行につながることが嬉しい」一方、伊藤選手は
「私はロードスターの純正タイヤと、このアドレナリンしか履いたことがありません。アドレナリンは、レースではもちろん、普段の買い物から実家山形への帰省など、ロングドライブにも使いますが、乗り心地もいいし、ロードノイズも少なくて快適です。それとすべてを自腹でまかなうサンデーレーサーにとって、タイヤの摩耗が少ないこともとても有り難いですね。先日、マツダの耐久レースに参戦した時は筑波サーキットを111ラップも周回したのに、まだまだ山も溝も残り使える状態です。グリップ力も高過ぎないので、クルマの挙動変化をしっかり勉強できます。私のような初心者ドライバーにとっていろいろな意味で、良いタイヤだと思います。」2019年、私には最後のメディア対抗ロードスター4時間耐久レースとなる。
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