2011年に発売されたレクサス初のハッチバックモデルのCTは、2011年から現在に至るまで、約65の国や地域で累計約38万台が販売されてきたが、2022年10月をもって生産終了が決定した。
プリウスと同じ1.8LのTHSIIを搭載しながら、レクサスらしい上質な仕立てにより、グローバルでユーザーから支持されたCTだが、いったいCTのよさはどこにあったのだろう。その功績を振り返ってみよう。
レクサス初のハッチバック車、CTが今年10月に生産終了……その功績を考える
文/清水草一
写真/トヨタ、ベストカーWEB編集部
■先代型プリウスベースで上質に仕立てたレクサスCT
レクサスCTのこちらはバージョンC。CT自体は2011年から売られているが、最新型は予防安全パッケージのLexus Safety System+もしっかり設定している
1年ほど前近所に、新しいレクサス店がオープンした。ようやく偵察に行って見ると、猛烈に広くてゴージャスなことにビックリ。その一角に、レクサスCT200hが展示されていた。
私「CTはもう生産終了になるんですよね?」
受付嬢「はい。あちらは最後の特別仕様車です」
その名は「チェリッシュト・ツーリング」。思い出深い旅、という意味だ。CT200hバージョンCをベースに、専用の2トーンを含めた全6色のボディカラーを設定。外観ではフロントグリルやフロントフォグランプベゼル、リアバンパーベゼルにシルバー塗装を施すことでエレガントな雰囲気に。
内装はシートやドアトリムに専用色を採用して上質さをアピール。ステアリングヒーターや前席シートヒーターを標準装備としている。価格は422万3000円である。
■初期型は「乗り心地の悪いプリウス」だった
レクサスCTが登場したのは、2011年1月のことだから、すでに11年を経ている。ベースとなったのは3代目、つまり先代プリウスで、ハイブリッドシステムは、先代プリウスのもの(1.8L)が、ほぼそのまま使われている。
CTが登場した2011年時点ではまだ、「スピンドルグリル」がデザインアイデンティティとして設定されていなかった
つまり、レクサス版プリウスだ。CTはレクサスで最もベーシックなモデルということもあって、どこか軽く見られてきた面があるのは否めない。
発表直後の試乗会での印象は、あまり芳しくなかった。当時のレクサスは、ドイツ御三家の影響を強く受け、足回りをスポーティに固めすぎる傾向があり、「乗り心地が固い!」と感じたのだ。
ボディはプリウスよりしっかりしているものの、悪く言えば「乗り心地の悪いプリウス」と言えなくもなかった。先代プリウスはシャシー性能が物足りず、そっちも乗り心地は決してよくなかったが……。
以来、個人的には、レクサスCTに興味を持ったことはなかった。
■使い込まれて乗り心地が良くなった
ところが昨年、知り合いが中古のレクサスCTを購入した。フェラーリ用の快音マフラーを製作する『キダスペシャル』の職人、岡田氏である。
彼が購入したのは、ちょうど10年落ち、つまり2011年式の初期型レクサスCT200h。価格はコミコミ95万円だった。
岡田氏の仕事は電動化とは正反対の内容だが、普段の足は「そろそろ電動化すべきかな」と思い、3代目プリウスと迷った末、レクサスCTを選択した。
電動化といってもハイブリッドは、すでに誕生から四半世紀を経ていて目新しくはないが、岡田氏は電動化とはまったく無縁のカーライフを送ってきただけに、初めてのハイブリッドカーは充分衝撃的で、あまりの燃費のよさに大感動。同時に、燃費計の数字を上げる楽しさにもハマッた。
カーマニア的に見ても、レクサスCTの走りは非常にイイという。
■期待以上の走りをする!
「最初は加速がトロいな~と思ったんですけど、スポーツモードに入れると、アクセルレスポンスが断然よくなるんですよ。ハンドリングもしっかりしてるし、全体にすごく気持ちいいクルマです。正直、ここまでは期待してませんでした」(岡田氏)
レクサスCTのハイブリッドシステムは、スポーツモードに入れるとモーターの駆動電圧が500Vから650Vに上がり、アクセルレスポンスが向上する。この点はプリウスとは明らかに異なる。もちろんシャシーもかなり違う。
彼の愛車に試乗させてもらったところ、私も衝撃を受けた。11年前、「固すぎる!」と感じた足回りは、10年5万8000kmを経て、実にちょうどよくこなれており、しっかりしたボディと相まって、乗り心地抜群になっていたのだ。それでいてハンドリングはしっかりシャープ。さすがリアダブルウィッシュボーンサスペンションである。先代プリウスとは違う!
発表当時は、足回りが固すぎて真価がよくわからなかったが、10年後にCTがこれほどいいクルマになっているとは……。シャシーの安物感が強い先代プリウスとは月とスッポン。もちろん内装もレベルが違う。レクサスは、無駄に値段が高いわけじゃなかったのだ。
思えば2013年に登場したレクサスISも、発表当時はCTに近い、かなりガチガチな足回りだったが、2020年のビッグマイナーチェンジで、見違えるようにしなやかなになった。
■最新型のレクサスの足は、10万キロ走った初期型レクサスの足
つまり近年のレクサスは、新車が10年落ちのこなれた足回りになったようなもの。現在のレクサスはもう、10年熟成させる必要はなくなったわけだが、CTは10年ものが食べ頃(?)なわけで、断然お安くなっている分、中古車は非常にお買い得だ。安いと言っても、10年落ちで100万円前後の値がついているのは、それだけの価値があるということでもある。
レクサスCTは、「レクサス版プリウス」と呼ばれたことで、レクサスのブランドイメージを落とした面もある。私も、「無駄に値段ばかり高くて、足回りがガチガチのプリウス」だと思い込んできたが、今頃になってその価値を知った。
最終限定モデルがどんな足回りなのか、乗っていないのでわからないが、少なくとも長く乗れば、「いい買い物をした」と思えるはずだ。レクサスのクルマ作りは、ある意味間違っていなかったのだ!
■次はEVで復活する?
レクサスCTは今年10月で生産を終了し、後継モデルもない。
ただ、昨年12月14日に発表された大量のトヨタEVニューモデルのなかに、レクサスのコンパクトハッチバックEVらしきモデルが存在した。そのフォルムは、CTの進化版そのもの。これがCTの実質的な後継モデルになるのかもしれない。
CTはEVになってリボーンする(たぶん)! それは相変わらず、最も手頃なレクサスであり、最もお買い得なレクサスになる予感がする。
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みんなのコメント
レクサスは間口を広げる気がないのかな?
UXなど、デザイン的にあまり女性好みではない気がするんだけど。
また、このモデルならハッチバックよりもワゴンにした方が消費者からも支持されてもっと売れたと思う。