平家落人伝説が残る秘境の山里に谷から雲が湧き上がる（徳島県 京柱峠）【雲海ドライブ＆スポット Route 69】

四国随一の絶景峠は与作酷道のハイライト

京柱峠のある国道439号は、岐阜県内の国道418号や紀伊半島の国道425号とともに「日本三大酷道」のひとつに数えられている。その愛称は439という国道番号の語呂合わせから「与作」。近年は道路改良も進み、以前に比べるとずいぶん走りやすくなったものの、相変わらず「これでも国道か？」と嘆きたくなるような悪路があちこちに残っている。

しかし、与作酷道の狭く曲がりくねった山道を走り続けてきた疲れも、標高1133mの京柱峠に立てば一気に消し飛んでしまうはずだ。東には剣山へと連なる四国山地の高峰群、西には見渡すかぎりのなだらかな山並みが、吉野川の源流域に広がっている。まさに一望千里の眺めである。

そして、雨上がりの早朝などには、深く刻み込まれた谷筋から雲が湧き上がり、それが見渡すかぎりの大雲海となることも珍しくない。そのとき、峠の高知県側に見え隠れする民家は、平家の落人が住み着いたとされる西峯集落。徳島県側に下れば、こちらも秘境として名高い祖谷渓である。酷道と秘境と雲海をいやというほど味わいつくせる峠道なのだ。

アクセスガイド

京柱峠に最も近いインターチェンジは高知道・大豊ICで、そこから峠までは国道32号／439号を走って約30km／1時間半ほどの道のり。与作酷道の東側起点、徳島市から京柱峠をめざすと、川井峠や見ノ越を越えて約112km。道が険しいだけに、ほぼ半日がかりの行程となる。

Data【Route 69　京柱峠】
雲海遭遇率　★★
雲海の季節　春～秋

◎所在地／徳島県三好市、高知県大豊町
◎ルート／国道439号
◎区間距離／約31.5km
◎最高地点／標高1133m
◎冬季閉鎖／12月下旬～３月下旬

【A】カジヤ祖谷浪漫亭
五右衛門風呂から東祖谷の雲海を一望 東祖谷の中心地、京上の高台に建つ個性的な民宿。昔ながらの日本の田舎暮らしを体験できる宿として、外国人にも人気が高い。建物は築100年を超える古民家を改装したもので、昔懐かしい五右衛門風呂からは眼下の祖谷渓が一望。祖谷をこよなく愛するご主人の話や地元特産のジビエ料理も魅力だ。

●1泊2食付1万円～／三好市東祖谷京上141／TEL 090-5144-9277

観光情報 三好市観光案内所 TEL0120-404-344

 

文：佐々木 節／撮影：平島 格