2020年9月のプロトタイプ発表、昨年8月の米国仕様公開、そして今年1月、東京オートサロンでの日本仕様お披露目。時が経つごとに明らかになる情報とは裏腹に、なかなか走りの実像が見えてこなかった新型フェアレディZ。
だが、ついにその「全能力」が明らかになる時がきた。北海道 陸別試験場での全力試乗。自動車評論家 渡辺敏史氏は何を感じたのか?
「全能力解放」の時が来た!! 新型フェアレディZ試乗でわかった「GT-Rにはない楽しみ」とは
※本稿は2022年7月のものです
文/渡辺敏史、写真/日産自動車、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2022年8月26日号
■純内燃機関400ps超 そして3ペダルMT 新しい貴婦人とのダンスに心、昂る
S30をはじめ過去のモデルをオマージュしたエクステリアデザインを採用する新型フェアレディZには凝縮感がある
待ちに待った新しいZに触れる機会が訪れた。その型式名称は「RZ34」。
お察しの方もいるだろう、先代の「Z34型」に対して、ビッグマイナーチェンジという体を採っている。
が、実際はパワー&ドライブトレーンはほぼ新規、部品番号レベルで見ても80%以上は新規設定と全刷新に限りなく近い。海外のメーカーなら躊躇なくフルモデルチェンジを主張しているところだろう。
新型Zがそうとは言わない理由は工数だ認証だと内的事情も想像できる。が、FMプラットフォームの代から四方八方やり尽くしたアーキテクチャーがゆえの熟成を土台に、弱点を現代の知見や技術でアップデートすることでさらなる完成度の向上が図れる、それがZにとってベストな道だという開発陣の意志が大前提にあることは添えておこう。
搭載するVR30DDTTユニットはスペックこそ先出のスカイライン400Rとほぼ同一(405ps/46.4kgm)ながら、吸気慣性を管理するリサーキュレーションバルブの新設によるスロットルレスポンスの改善、振り子ダンパーによってフライホイールの回転振動を低減するなど、ハード&ソフト、そしてクーリングとあらゆる面で専用の設計が織り込まれた。
また、新採用の9速ATは米国仕様のフロンティアやタイタンに搭載されるものをベースに油圧システムを一新、DCTのGT-Rにも匹敵する変速スピードを実現したほか、ミッションケースのマグネシウム化やオイルパンの樹脂化など材料置換による軽量化も入念に施されている。
また、6速MTもZ34のものをベースとしながら、シフトロッドの溝やスプリングなどを再チューニングし、変速タッチの改善を果たしたという。
■6速MTと9速ATを試乗チェック!
バージョンSTの6MTと標準グレードの9ATをテストドライブ!
試乗はバージョンSTの6速MT、標準グレードの9速ATという組み合わせで、まずは6速MTに乗り込む。
前型までのザラザラやゴリゴリといった手触りは綺麗に消え、適度なクリック感で変速の手応えを伝えながらも、軽い力でスルッと吸い込まれるようにストロークする、そんなフィーリングに変貌した。
試乗の一コマ。走る姿もやはり美しい
9速ATのほうはパドル使用時の変速スピードも触れ込みどおりの速さで、ダイレクト感もトルコンのそれとは思えない。
そのうえ、スポーツモードでは走りの状況や車両の状態に応じてアクティブに最適なギアを捕えてくれる。
エンジンのフィーリングはスポーツモデルとして存分に感性を刺激してくれるものに仕上がっている。
トップエンドの7000rpm直前までパワーのタレを感じさせず、サウンドもスピーカー出しでエフェクトを加えている上位グレードはもちろん、生の音を響かせる廉価グレードでも充分に刺激的だ。
赤と黒のコンビネーションが鮮烈な内装。新開発された9ATのセレクターの操作性もいい
そうやって引き出された405psのパワーはさすがに強烈で、思慮なく扱えば挙動に現われるほどのワイルドな一面を持ち合わせているが、ボディコントロールの電子制御は思いのほか介入が少ない。
言わずもがな、シャシー側のメカニカルグリップがパワーに負けることなくしっかり働いているということだ。
■「新型フェアレディZ」はどのステージでもクルマとの対話を楽しめる
新型Zは力を腕っぷしで封じ込めるという男性的なイメージだった今までの日産のスポーツモデルとは一線を画する走りのキャラクターを描いている。
タイヤの接地感が優しく、微小入力域からアシがよく動き、ロールやバウンドといった初期の動きは強く規制せず、負荷が高まるほどに踏ん張っていく、つまりある程度車体を動かすことを前提に405psを御している。
一方、瞬間的な上屋の動きや加速・制動のピッチの大きさに、もう少しスポーツカーらしくサスをタイトに締めてもいいのではという意見が上がりそうなことは想像に難くない。
が、GT-Rとはベクトルを異にし、クローズドコースでの速さよりもステージを問わず車両との対話を楽しむことを前提とするのがフェアレディZの趣旨であるがゆえ、個人的には現在のサスセットがベストだと思う。
新型フェアレディZの開発責任者である田村宏志CPSとのツーショット
昨今の半導体不足や部品生産・調達、流通等の不安定化を受けて、7月いっぱいで一旦受注をストップするという新型フェアレディZ(編集部註:記事執筆当時)。
現時点でも年単位の待ちになることは確実と見られている。その時は長い。
一刻も早く状況が改善し、Zとはかくあるべしという開発者の想いが皆々に届くことを祈りたい。
【番外コラム】同エンジンを積むスカイライン400Rとのフィールの差は?
新型フェアレディZとスカイライン400Rとの最も大きな違いは、意外や乗り心地だ。がっちり高められた剛性と煮詰めに煮詰めたアシのマッチングで、新型Zの乗り心地は速度域やタイヤサイズを問わず400Rを超えている。
一方で、路面や風切りなどの透過音についても新型Zは進化の跡がみてとれるが、ここは400Rに分があるだろう。
吹け上がりも回転落ちも鋭くトップエンドにスキッと突き進むエンジンの回転フィールも新型Zの400Rとの大きな差異だ。約200kg差の車重なども相まって、両車の境界線は想像以上に明快なものとなっていた。
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みんなのコメント
それでも市販車状態だと、どこのテストでも最高速はZの方が速かった265 ぐらい出た。GT-Rは250ぐらい
そこからいろいろあって、第二世代GT-Rは34 を最後にまた眠りにつき、Zもマイナーチェンジだけで10年間。
それでもZ33 が出て、GT-Rが2007年に単独車種で出るまで、ずっと日産のスポーツカーを背負ってた。
じゃあ ZにもVR38 積んで600ps 出せばよかったかと言えば、そうは思わない。
ZにはZ の世界がある。
日産、Zのファンは分かっているんだよ。
でも、もしその気になっても買えないんでしたよね…