2002年製造のR34に遭遇
text:Kumiko Kato(加藤久美子)
【画像】今やスーパーカー並みの価格のR34【現行GT-R(R35)と比べる】 全200枚
editor:Taro Ueno(上野太朗)
先日、アメリカ在住の知人(アメリカ人)が珍しいクルマの写真を送ってきてくれた。
カリフォルニア州アーバインにあるショッピングモールの駐車場で見かけたそうだ。
その知人は大の日本車好き。日本の自動車会社で働いていたこともある。アメリカでは1992年式の「アキュラ・ビガー」(CC2)を所有している。25年ルール解禁前のスカイラインGT-R(R34)に驚いて思わず写真を撮ったという。
JDMや25年ルールって何のこと? という方のために、あらためて説明しておきたい。
「JDM」とは「Japan Domestic Market」、つまり日本独自仕様のことで、狭義では日本市場専売車。右ハンドル車のことを指す。25年ルールでアメリカへの輸入が解禁された日本車のことをいう場合もある。
また、オレンジ色のウィンカー(後部)や速度超過警告音、AT車のリバース警告音なども、アメリカのJDMファンを喜ばせる日本独特の仕様として認識されている。
「25年ルール」とは、アメリカNHTSA(米国運輸省道路交通安全局:national highway traffic safety administration)が運用するクラシックカーのことで、アメリカの保安基準(FMVSS)に適合しない外国車などの輸入緩和策の1つ。
製造年月日から25年を経過していればFMVSSの規制を受けることなく、アメリカへ輸入し一般販売、登録が可能となる。
製造年月日が不明な場合は、車両が最初に販売された日付や登録文書(車検証の初度登録日など)で「明らかに25年経過している」ことを証明する方法もある。
R34は「25年」まであと3年のはず……
スカイラインGT-R(R34)が発表されたのは1999年1月。東京オートサロンの会場でおこなわれた。
すなわち25年ルール適用までは少なくともあと3年はあるはず……。
しかも写真のクルマは2002年1月24日に発売された「2002年型日産スカイラインGT-R MスペックIIニュル」、通称「Mスぺ・ニュル」だと推測される。同じく「Vスペック・ニュル」と同時に2モデル合計1000台限定で発売された。
2モデルとも即日完売となっており、販売当時の価格は「Mスペック・ニュル」が630万円、「VスペックIIニュル」が610万円。近年は海外でのR34人気にともない、業者オークション(USS東京)にて3000万円以上で落札された実績もある。
というわけで、2002年1月発売となれば25年ルール適用となるのは2027年1月から。解禁まであと6年ある。
ではこのクルマはどのような経緯でアメリカに輸入されたのだろうか?
実は、以前にAUTOCAR JAPANで「映画ワイルド・スピードのスカイラインGT-R(BNR34)、なぜ右ハンドルだったのか?」という記事を掲載したことがあるが、こちらの記事では、過去、GT-Rを中心とするR34スカイライン15台前後が新車でアメリカへ「合法的に」輸入された実績があることを報じた。
これら15台は日本人が経営する「モトレックス」という会社が日本から輸入したもので、実際にFMVSSの要件を満たすための衝突試験などもおこなわれ、EPAの排ガステストもパスしていた(最後の数台は違法な方法で輸入され、経営者は逮捕、収監されている)。
この15台のうちの1台だろうか?
「ショウ or ディスプレイ」という輸入方法
アメリカにおけるスカイラインGT-Rの販売や「ショウ or ディスプレイ」の事情に詳しいトップランクUSAに聞いてみたところ、「モトレックスはMスぺ・ニュルを輸入したことはありません。だからこれはモトレックスの車両ではありませんね。おそらくは『ショウ or ディスプレイ』という方法で輸入されたものだと思われます」
「違法輸入の可能性も捨てきれませんが……」という回答を得た。
「ショウ or ディスプレイ」とは1999年8月13日に発効したNHTSAのルールで正式名称は合衆国法典第49編30114条(特別な免除)となる。
現在、NHTSAが公開している最新の「ショウ or ディスプレイ」車種リストは2017年のもので、ここには3車種のスカイラインGT-Rが掲載されている。
その3車種とは、1990年発売の「ニスモR32スカイラインGT-R」(VIN BNR32-100000からBNR32-100562)、2002年発売の「R34スカイラインGT-R Mスペック・ニュル」、1999年発売の「スカイラインGTR R34 Vスペック・アーリーモデル限定版」である。
2014年のリストにはMスペック・ニュルの掲載はなかったので2014年から2017年までの間に、誰かがMスペック・ニュルを「ショウ or ディスプレイ」での輸入を申請し、認可を受けたということだろう。
ちなみに日本車は自動二輪のホンダNR750(1992年発売)を含め、1992年発売の「スバル・バージョンLアルシオーネSVX 4WS」(北米仕様に4WS設定なし)、1998年発売の「スバル・インプレッサ22B STI」、1994年から1995年発売の「マツダ・ユーノス JCES コスモ・シリーズII」の4車種。
なお、「ショウ or ディスプレイ」はあくまでもFMVSS(米国保安基準)について免除されるということで、この他にEPA(排ガス試験)基準をクリアする必要がある。EPAは製造から21年経過したエンジンを搭載したクルマは免除対象となる。
認可される車種の条件を見ていこう。
認可されるための条件は?
具体的に、「ショウ or ディスプレイ」で認可される車種の条件は以下となる。
「1.歴史的かつ技術的に価値のあるクルマである」、「2.生産台数が500台以下」、「3.レプリカではない」、「4.製造時と同じエンジンでチューニングや大きな改造をおこなっていない」など。
また、「ショウ or ディスプレイ」として輸入を許可されたクルマはアメリカでの年間走行距離を2500マイル(約4000km)以下に制限される。
原則として、走行できる範囲は「ショウ or ディスプレイ」をおこなうための場所の周辺と自宅(会社、ディーラー、店舗など)との往復、整備や修理のための移動に限られるとしているが、走行範囲に関して実際はそこまで厳しくはないようだ。
2017年に公開されたリストには全部で62台の車両が掲載されている。この中にはすでに25年ルールで解禁となったクルマも含まれている。
どんなモデルが恩恵を?
先述した日本車7車種以外の主なクルマを紹介しておこう。
2003年発売:アストン マーティンDB7ザガート・クーペ
2016年発売:アストン マーティン・ラコンダ・タラフ
2011年発売:アストン マーティン・ワン-77
2012年発売:BMW M3 CRT
1988~1991年発売:BMW Z1
1992~1995年発売:ブガッティEB110
2005年発売:フェラーリ・エンツォ#400(Pope John Paul II)
2015年発売:ケーニグセグ・モデル・ワン:1スポーツ・カー
1999年発売:ランボルギーニ・ディアブロGT
2011年発売:ロータス・エヴォーラGTE F1リミテッド・エディション
1993~1998年発売:マクラーレンF-1
1990年発売:メルセデス・ベンツ190E 2.5-16エボリューションII
2013年発売:メルセデス・ベンツG63 AMG 6×6
2009年発売:メルセデス・ベンツSLRマクラーレン・ステアリング・モス
1984~1985年発売:プジョー205ターボ16
1998年発売:ポルシェ911カレラ4S(ラスト・モデル)
2004年発売:ポルシェ911 GT3 RS
1998年発売:ポルシェGT1
2016年発売:リマック・コンセプト・ワン
2000年発売:ローバー・ミニ・クーパーS(ラスト50モデル)
新しいところでは、2020年2月に発売されたマクラーレン・スピードテイルが「ショウ or ディスプレイ」の恩恵を受けている。同車はサイドエアバッグや物理的なドアミラーを持たないため、FMVSSの基準を満たさず通常の方法では輸入・登録はほぼ不可能。
しかし、「ショウ or ディスプレイ」なら輸入が可能でアメリカの公道を年間4000kmまで走ることができる。事実、世界で販売されたスピードテイル106台のうちおよそ3分の1はアメリカで購入されている。
諸条件を満たせないために、「ショウ or ディスプレイ」では認められない日本車も多々ある。
ホンダ・シビック・タイプR(1997-2000)、三菱ランサー・エボリューション・トミーマキネンエディション(2000)などは25年ルール解禁を待つしか方法がないようだ。
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