マセラティのアップデートされた「グレカーレ・トロフェオ」に小川フミオが乗った。マルチシリンダーならではの痛快な走りをリポートする。
最大の魅力は独自のV6エンジン
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スタイリッシュでラグジュリアス、走りも痛快なSUV……それこそマセラティが手がけるグレカーレ・トロフェオだ。24年8月に、ブレーキのオートホールド機構が追加されるなどアップデートされたモデルを試乗。日常の使い勝手が上向上した。それでも最大の魅力は、疾走しているときだ。
トロフェオは、グレカーレのラインナップにおいて最上位に位置するモデル。「GT」(300ps)、「モデナ」(330ps)という4気筒エンジンモデルがあり、その上のトロフェオは390kW(530ps)の3.0リッターV6エンジンを搭載する。
トロフェオの最大の魅力は、上記のV6エンジンだ。サーキットなどで、思いきりエンジン回転をあげていくと、よどみなくパワーが湧き上がる印象だ。24年夏頃に日本でも公開された映画『フェラーリ』でも、1950年代のマセラティが大いなる脅威だったと描かれているが、それを思い出した。
たとえば4ドア同士を較べても、12気筒のフェラーリ「プロサングエ」とはまったく違う路線を選択しているのがマセラティだ。しかし、しっかり輝いている。スポーツドライビングが好きな人なら、ぜひトロフェオを選ぶと良い。
トロフェオには、4気筒モデルに対して、専用装備が多く用意されている。エアサスペンション、フロントに6ピストンのブレーキキャリパー、電子制御式のリミテッドスリップデファレンシャルギヤなど。そして単に装備だけでなく、チューニングが優れている。
上手な奏者がいるだけでいいオケになるってものでもない。提供価値は何か……。しっかり把握して、全体をまとめあげることが重要だ。トロフェオも然り。スポーツ走行から市街地での快適走行まで、素晴らしい体験を提供してくれる。
内装は、品が良く、適度にスポーティ。例えばシートは、からだが滑りにくいようレースカーのような人工スウェードを使っており、サイドサポートにも優れる。試乗車はヘッドレストレイント(ヘッドレスト)にマセラティのトライデントマークが赤色で刺繍されていた。これもオーナーを喜ばせる。
いわゆる見せ場がいくつもあるのが、グレカーレ・トロフェオの特徴だ。ひとつはエンジンで、加速していくと負荷に応じて、聞こえてくるサウンドが変化する。そもそも中低音のとても耳ざわりのいい音だが、4000rpmを超えると、高音成分が混ざって、爽快というか痛快というか、“乗っていてよかった”と、思わせられる。
足まわりの設定の良さも、トロフェオならではだ。2tをちょっと超える車重だが、大・小にかかわらずカーブが連続する道を走るときの身のこなしは、軽量スポーツカーのようである。
適度にロールする車体と、正確なステアリング、それに反応のよい加速性と、頼りになるブレーキ。連携が見事だ。
最新のマセラティのラインナップは、スポーツカーの「MC20」シリーズと、新しくなった「グラントゥーリズモ」、そしてこのグレカーレ。どれもそれのクルマならではの特徴をそなえるとともに、エンジンと操縦性と快適性をバランスさせた乗り味に共通したものを感じさせる。ブランド戦略の要がわかっている。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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