軽自動車規格の本格オフローダーとして長年人気
スズキ・ジムニーの人気が止まらない。オフロードでも力強く走れる唯一の「軽」として、多くのファンに支持されている。その人気は国内にとどまらず、東南アジアや欧米からも注目されているのだ。
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輸入SUVなどは日本の道では少々大きい
なぜジムニーはこれほどの人気を確立できたのか。世界的にクラスを問わずSUVの人気が沸騰している。そのなかで、近年は気候変動の影響などもあり世界各地で自然災害が多発。クルマにもタフな性能がマジで求められるようになってきているのは間違いない。
上をみれば、ドイツのメルセデス・ベンツGクラスや英国製ランドローバー・ディフェンダー、米国ジープ・ラングラーなど悪路に強いクロスカントリー系の4WDが大きな支持を受けている。だが国内の狭い林道やあぜ道など、道幅の狭い地域ではこうしたビッグ4駆は扱いにくい。日本には軽自動車という独自の自動車規格があり、自動車税など優遇制策の効果もあって軽自動車全体の保有率が圧倒的に高い。ジムニーはそのなかで最強のオフローダーとして君臨しているのである。
僅か660ccの3気筒ターボエンジンは最高出力が自主規制で64psに制限されている。最大トルクは96N・mであり、車両重量1040kg前後に対して数値的には、けしてパワフルとは言えない。それでも悪路に強いというイメージが確立されているのには、ワケがあるのだ。
軽自動車ながら本格的な悪路走破性が与えられている
それはジムニーの造りをみればわかる。オフロードに強いラダーフレーム構造の専用シャーシが奢られ、伝統的な3リンク方式のサスペンションとリジットアクスルを前後に備える。エンジンは縦置きにレイアウトされ、通常は後輪を駆動して走るFR。必要に応じトランスファーで4WDに切り替えるパートタイム4WD方式を採用していて踏破性を高めている。
またフロントのアプローチアングルで36度、リヤのデパーチャーアングルは50度と圧倒的で、ランプブレークオーバーアングルも28度とずば抜けている。加えて最低地上高は205mmと高く、最小回転半径は僅か4.8mと小回り性にも優れる。
現行ジムニーには、これらに加えてブレーキLSDトラクションコントロールやヒルディセントコントロール、ヒルホールド、ESPなどの先進機能も備えていて、より悪路に強い特性に仕上げられているのだ。
やはり物足りなさを感じてしまう場面も……
そうした機能に支えられている走りは確かにタフだが、悪路をものともせずに突き進んで行くという力強いものではない。低い車速で車両特性を生かしながら技を駆使して慎重に岩場をも乗り越えていく、というのが軽自動車・ジムニーに対する正しい認識だ。傾斜のきつい登坂路ではパワー不足なのは否めないし、凸凹路面で高速ジャンプしたりハイスピードオフロードコーナリングを可能としているワケではない。
メルセデス・ベンツGクラスを彷彿とさせる外観デザインも、タフネスさをうまくアピールできている。市場にはGクラスに似せる外装キットなどが販売されていたり、またリフトアップキットで大幅に車高を上げ、大きなタイヤを履かせて踏破性を向上させようというオーナー層も多い。
だが、それらの多くは実際にはファッション性を重視したものである。オフロードランドのように管理されたコースで楽しむのは問題ないが、林道などに入り込み、自然環境に影響を与えるような走行行為はあってはならない。
ジムニーで急な登坂路を登ってみると車速の維持は難しく、悪路では半クラッチを多用するなどクルマへ大きな負担をかけることになる。そうした走行のあとにはメンテナンスも重要になるだろう。大排気量車のクロカンRVのような、パワフルに荒野を駆け抜けるイメージをジムニーに求めてはいけない。パフォーマンスを正しく認識し、安全と環境に配慮しながら上手に走らせてほしい。
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