衝突被害軽減ブレーキの義務化! もやはピュアスポーツは登場しないのか?
クルマにはさまざまな安全装備が採用されるが、とくに関心の高い機能が衝突被害軽減ブレーキだ。カメラやミリ波レーダーなどのセンサーを装着して、車両、自転車、歩行者などに衝突する危険が生じたときは警報を発する。衝突不可避の状態になると、衝突被害軽減ブレーキを作動させる。
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この機能は装着の義務付けが決定している。国土交通省によると、国産の新型車は2021年11月、輸入車は2024年7月から装着が義務付けられる。継続生産車も、国産車は2025年12月(軽トラックは2027年9月)、輸入車は2026年7月から、衝突被害軽減ブレーキを装着せねばならない。
交通事故はクルマにとってもっとも深刻な欠点だ。人の生命や健康を直接脅かし、2020年には2839人が亡くなった。1970年の1万6765人に比べると大幅に減少したが、尊い人命が失われている事実に変わりはない。負傷者数は36万8601人と依然として多い。 そして衝突被害軽減ブレーキは、事故防止に有効な機能とされ、装着の義務化も本来あるべき方向性だ。
義務化は「車両価格」にどう影響するのか?
ただし各種のセンサーや制御機能を加えるので、非装着車に比べると、価格は不可避的に高まる。そこをいかに安く抑えるかが今後の課題だ。 ちなみにアルトLの場合、スズキセーフティサポート装着車の価格は、非装着車に比べて6万1000円高い。この金額には、音波センサーを使った後退時ブレーキサポートなども含まれる。
衝突被害軽減ブレーキの価格は、以前は10万円以上だったが、最近はコスト低減が進んで車種によっては5~6万円で装着できる。今後全車に標準装着されると、コスト低減は一層進み、価格の上乗せもさらに小さくなる。それでもシステムを追加するから価格は高まるが、値上げされた金額以上の価値が得られるため、義務化のメリットは買い得度の面から見ても大きい。
継続生産が望まれるスポーツカーはどうなるのか
以上のように衝突被害軽減ブレーキの義務化自体に欠点はないが、その影響で、車種の廃止が発生することは考えられる。前述の通り2025年12月以降は、継続生産される国産車も衝突被害軽減ブレーキを追加装着せねばならない。この時点で非装着車が残っていて、追加装着が不可能だとすれば、生産終了に追い込まれる。
例えばGT-Rが今の状態で、2025年12月まで生産されていれば、その時点で生産を終えるかもしれない。
さらにいえば、今の時点で、すでにさまざまな商品開発が制約を受けている。前述の通り2021年11月以降に発売される新型車は、衝突被害軽減ブレーキを装着せねばならないからだ。車高、フロントマスクの形状、フロントウインドウの角度など、いずれもセンサーの装着に対応した形状となる。そうなればデザインの自由度も狭まる。生産を終えたS660のようなボンネットや天井の低いスポーツカーは、これからはおそらく発売されないだろう。 このように環境性能や燃費規制だけでなく、安全面まで含めて、設計上のさまざまな要件がスポーツカーの生き残りを難しくしている。今後も存続させるには、敢えてスポーツカーを守り抜く強い意思と取り組む姿勢が求められる。
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