「GA-B」プラットフォームのお披露目
トヨタの最新グローバルプラットフォームであるTNGA。
プリウスをはじめ、C-HRでお馴染みのGA-Cから始まり、レクサスLSやLC、クラウンに採用している縦型エンジン・高級モデルを担うGA-L、さらにカムリやRAV4、レクサスESのGA-Kと、クラスに応じた3種類のプラットフォームが着々と発表されてきた。
今回、欧州と日本をメインに販売する新型ヤリスに採用されたのは、それらから学んで作られた「GA-B」プラットフォーム。
一足先にプロトタイプをサーキットで試乗したので感想をお伝えしたい。
ヤリスのパワートレーンは、1L、1.5L、1.5Lハイブリッドモデルの3種類からなる。試乗したのは、1.5LのFF・CVTモデルとMTモデル、1.5Lハイブリッド・FFモデルとE-Fourモデルの計4種類だ。
各グレードをサーキット試乗
まずは、ハイブリッドE-Fourだ。
キャビン、運転席、助手席ともにゆとりのある足元。後席は、コンパクトカーらしいタイトな空間だが、パッケージングは考えられており、思っていたよりもきちんとした姿勢が保てると感じた。
3人の乗車で発進する。
とても静かにエンジンが始動し、そこからさらに負荷をかけると高効率の3気筒が回転を上げる。思った以上に活発な加速だ。
エンジンの剛性感はとても高く、今までのトヨタのハイブリッドより静粛性に努めたユニットだ。
しかし、最も驚いたのはシャシーである。剛性が高いのだ。
試乗したE-Four・4WD モデルのリアサスペンションは、路面との接地感が非常に高く、ボトムに対しても車両がたえず安定化の方向を示す。新たに導入したというウィッシュボーン式のリアサスペンションの自由度も高く、高速走行中の安定性も高い。
試乗会場である袖ヶ浦フォレストレースウェイのコースは、基本的に低・中・高速の3つを味わえるが、その中でも高速コーナーでの走りが印象深い。
素晴らしい安定感。さらに、高速からフルブレーキングした状態でも、とても優秀なスタビリティなのだ。静粛性もとても高かった。
一般道で普通に走行する分には4WDの性能が発揮される場面自体が少ないが、こうして負荷をかけてのコーナリングやタイトなコーナーで走ると、安定感を感じられる。
次に乗ったのは、ハイブリッドのFFモデルだ。
E-Fourに比べると、シンプルに速い。そして乗り心地と静粛性がとても良好だ。
ハイブリッドはフルロード(全負荷)な状態のため、「ラバーフィール」というシフトに節度感がないようなフィールになりがちなのだが、ヤリスはまったく違和感がない。モーターとエンジンを上手に組み合わせているようだ。これは一般道だとさらに違和感がないだろう。
コーナリングもE-Fourほどの落ち着きではないが良好。ステアリング操作を乱雑にしても姿勢の変化を最小限に抑えている。このグレードに最も人気が集まるかもしれない。
続いて、1.5L・CVTモデルの試乗だ。今までのトヨタ車から比べると、エンジン音・振動も少なく、3気筒らしい心地よいフィールだった。
CVTとのマッチングについてだが、感覚的には全負荷(ハイブリッド)に近く、出力とアクセルの踏み加減、それとトランスミッションのギア比が細かく制御されて、スイスイと走れる。
サーキットのシチュエーションだが、申し分ない。結果的に、このモデルがプラットフォームの良さを最も感じられるモデルだった。
そして、個人的に最も楽しみにしていた1.5Lガソリン・MT仕様の試乗だ。
意のままに操るには、やはりマニュアルトランスミッションである。
クラッチがつながるポイントはとても分かりやすかった。そして、思った以上に低速トルクがあるので運転しやすい。CVTモデルよもダイレクトで軽快だ。
コーナリングのロールが気持ち大きいが、アクセルの操作によって細かく姿勢を調整できるので、こういったコースだとMTが便利である。
至ってフラットなコーナリングで、FFだが雨天時であっても安心感を与えてくれるようなセッティング。人によっては曖昧な雰囲気と思うかもしれないが、トヨタらしい、日本らしい路面からの入力が優しいセッティングである。
乗り心地や姿勢の状況だが、基本的には他の仕様と大きく変わる部分はなかった。ステアリングを切っても、姿勢は大きく変わらず、タイヤは常に路面とのコンタクトを最大限に求める。サブコンパクトサイズのフォームであるが、今までのTNGAの中でも最も優秀でよくできているプラットフォームだといえる。
ヤリスは、大衆的なセグメントであるが、満を持して作られた感じが強い。
販売台数が多いこのようなモデルに最善を尽くした自動車づくり。これも、トヨタが支持される理由のひとつであろう。
文/松本英雄、写真/篠原晃一
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