3月15日、岡山県の岡山国際サーキットで始まったスーパーGT公式テスト。走行1日目は路面温度がひと桁台という極寒のコンディションとなり、途中にはみぞれ交じりの雨が降る場面もあった。この不安定なコンディションと低温は、GT500クラスでも多くのチームを悩ませることになった。
午後2時からスタートしたセッション2の終盤は雨が止んでドライコンディションになったこともあり、セッションの最後に10分間設けられた専有走行では、各車ドライタイヤを装着してタイムアタックを行い、GT500クラスではKeePer CERUMO GR Supraの大湯都史樹が記録した1分17秒456を皮切りに、トップ6台が1分17秒台に入っていた。
スーパーGT岡山公式テスト1日目午後は不安定なコンディションのなかKeePer CERUMO GR Supraがトップタイム
しかし、想定よりも低い気温と路面温度により、各陣営ともに有益なデータを得られづらい一日だったようだ。
「コンディションとしてはかなり微妙でした。正直、まわりはもっと速いところがあるかもしれないですし、僕自身もまだタイムを上げられそうな感じではありました。トップタイムは良かったですけど、まだまだやることは多いかなと思います」
そう語るのはトップタイムを記録した大湯。実際に最速タイムを記録した際も「ウォームアップをなるべく早くするように心がけて『なんとか間に合わせた!』という感じ。タイヤ本来のグリップは引き出せていない感じのまま終わっています」と、満足いく状態ではなかったようだ。
またコンディションに対しては「気温も路面温度もかなり低かったので、ほとんどのメーカーがそうだと思うんですけど、タイヤが発動するレンジに入っていないなと。赤旗も多いし、コンディションも変わっちゃうし、ウエットに関しても寒すぎて評価がしにくい状況です」と大湯。
「最後はそれなりにアタックができたので、クルマのフィーリングがどういうものかはなんとなく掴めたところはありました。ただ、タイヤのテストメニューも一応やりましたが、正直(今日のデータは)あてにはならないところが多くて『どうしたらいいんだろう……』という感じです」と、大湯は首を傾げていた。
■『速いか遅いか分からない』データ収集に各陣営が苦慮
2番手にはARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16がつけた。大津弘樹に話を聞くと「タイヤに関しては(開幕戦では)全然違うレンジを使うと思うので……。難しいというか、悩ましいですね」と大湯と同じ感想をもっていた。
ただ、彼らにとってはプラスになっている部分もあるとのこと。「僕たちは新車になって、木曜日にシェイクダウンをしました。そういう部分は参考にできるところはあるかなと思います。最後になんとかドライで走ることができたのも、僕たちとしては良かったです」と前向きに捉えていた。
またこのコンディション下でデータ収集に悩んでいたのは、他のタイヤメーカーも同様だ。
ヨコハマを履くリアライズコーポレーション ADVAN Zの松田次生も「タイヤの温度レンジが合っていないですし、路面温度が7℃じゃないですか。この温度でレースをすることはまずないと思うので……」と4月の開幕戦では想定しづらいコンディションで悪戦苦闘した様子。
「このコンディションだと、タイヤの比較や構造の比較はできないです。とはいっても、セッションがある以上は走っておかないといけないし……難しいです。でも、それなりのタイムは出ているので、開幕に向けては順調にきていると思います。悪くはないけど良くもない……というか『速いか遅いか分からない』というのが今日の状況です」と頭を悩ませていた。
GT500クラスで唯一ダンロップタイヤを履くModulo CIVIC TYPE R-GTの大草りきは「もう寒すぎです! このコンディションだと、さすがに分からないですね」と異口同音だった。
「たぶん誰もこのコンディションに対して(想定したタイヤを)持ってきていないと思うので……。どのメーカーも不本意な部分があるのではないかなと。僕たちもドライ、ウエットともに今日のデータを活かすのは難しいですね」と難しそうな表情を浮かべていた。
ただ、今季のダンロップタイヤは“かなり良さそう”という噂がシーズンオフから聞こえていたが、それについて大草も「昨年よりは絶対に良いと思います。みなさんのコンビネーションも含めて、すごく良くなった気はしていて、タイヤに関しても一歩一歩着実にいっているなと感じています」と手応えを感じている様子だった。
■第1戦岡山のタイヤ選択はいかに?
GT300クラスを含めて、さまざまなチームの話を聞くと、このコンディションで得られたデータを4月の開幕戦に活かすというのは、少々現実的ではなさそう。それと同時に聞こえてきたのが“開幕戦で持ち込むタイヤ選びの難しさ”だ。
「レースで持っていくタイヤをどれにするのか……。メチャクチャ決めかねます。他もそうだと思うんですけど、これ(岡山公式テスト)が終わったら決めないといけないので、『本当にどうするの?』という感じです。僕たちは先月もテストができているので、そのデータと照らし合わせていくしかないですね」と大草。
「たぶんテストが終わってからのミーティングが長くなりそうです(苦笑)」
同じく松田も「最終ジャッジはこのテストが終わってすぐなので、もう『どうやってタイヤ選べばいいの?』という状況です」と現状で打つ手は限られているという。
トップタイムを出した大湯は「本来やってみたかったメニューもあるので、それができないのはちょっと残念ですね。例えば『このタイヤ良いかも!』というものがあったとしても、それが(テストで)試せないから使えないという状況に陥ってしまいそうな感じです。明日の方が降水確率が高いので……」と各陣営とも、開幕戦に向けた悩みは多い様子だった。
[オートスポーツweb 2025年03月15日]
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