新型ハリアーはデザイン重視で荷室容量などを割り切った
SUV攻勢を続けるトヨタ。その中で、日本専用車として歴史を重ねてきたのが「ハリアー」です。初代・2代目は「レクサス RX」の日本版でしたが、3代目からはハリアーという完全に独立した日本(右ハンドル)専用モデルとなり、今回、4代目へとフルモデルチェンジを果たしました。
プラットフォームやパワートレインを世界戦略モデルの「RAV4」と共有するハリアーですが、歴代ハリアーと比べてもさらにクーペ風のスタイルを強めた結果、トランク容量が先代モデルより小さくなるなど、ある程度の実用性を割り切ってスタイリングに振る尖ったクルマづくりを感じさせます。
ネットではウインカーが低すぎると話題になっている!?
さて、そんな新型ハリアーについてネットでは“ある部分”がネガティブポイントとして指摘されています。それは「リアウインカーが低すぎて見えづらい」というもの。そこで、ハリアーを含めたミッドサイズSUVのチーフエンジニアを務めた佐伯禎一さんに、この点について質問してみました。
「正直、指摘があることは知っています」と佐伯さん。こうした声が出てくることは、ある程度想定の範囲内だといいます。
ハリアーの日本的な美意識が海外でも通用するか、という挑戦
「新型ハリアーは海外でも展開します(北米での車名は「ヴェンザ」)。先代モデルはもともと日本専用として開発された、日本の美意識が詰まったクルマといえます。つまり、新型ハリアーの海外展開というのは、日本の価値観が海外でも通用するかどうかという挑戦になります。そして、我々はハリアーの価値をSUVのカテゴリーに収まらないエモーショナルさだと考えます。そのエモーショナルなスタイルの象徴といえるのが、遠くから見ても一目でハリアーだと主張する“一文字のシャープなテールランプ”なのです」。
確かに実車で見ると自動車のテールランプとは思えないほどシャープで、アニメーションで表現する日本刀の残像を思わせます。光量や発光面積などの保安基準を満たすような内臓型のターンランプでは、この雰囲気がスポイルされてしまうのでしょう。
保安基準は余裕でクリア。視認性に問題があるわけではない
実際のところ、ハリアーのウインカーはボディの下側についているように見えますが、ウインカーの下をブラックアウトしているために低く見える面もあり、それほど低い位置にデザインされているわけではありません。ブレーキランプの横にウインカーがあるはず、というユーザーの思い込みが違和感を生んでしまうことは否定しませんが、視認性も問題なかったりするのでした。
もっとも、ハリアーではウインカーが非点灯時にはスモーククリアレンズにするなど、ここにウインカーがあると目立たせないようにしているのも事実で、このあたりもデザイン重視の結果です。佐伯さんは「八方美人なモデルでは、商品企画がボケてしまいます」ともいいます。
個人的には、ウインカーが見えづらいという指摘はもっともだと思う部分もありますが、新型ハリアーのスタイルを追求した経緯を考えると、結果的にウインカーを下に置くと判断もリスペクトしたいと思えたのでした。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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