8月13~15日、WRC世界ラリー選手権第8戦がベルギーで開催される。伝統あるターマック(舗装路)ラリーとして人気を博す『イープル・ラリー』は今年、WRCイベントとして初めて実施されることになるが、そんな今大会に先駆け、最高峰カテゴリーのWRCクラスに参戦するMスポーツ・フォード、ヒュンダイ、トヨタの各陣営から出場ドライバーたちの事前コメントが発表された。
1965年に初開催されて以来、ERCヨーロッパ・ラリー選手権やIRCインターコンチネンタル・ラリー・チャレンジにも組み込まれたこともある伝統のラリーが、WRCの1戦『イープル・ラリー・ベルギー』として開催される。
5連勝中のトヨタ、WRC初開催のベルギーで今季7勝目を狙う。最終日の舞台はスパ・フランコルシャン
ベルギー初開催のWRCイベントとなる今大会は、同国西部のイープルを拠点に13日(金)から競技がスタート。初日は午後から夜にかけて4本のステージを各2回走行する。翌14日(土)も前日と同様に8本のSSで争われ、最終日は戦いの舞台を東に約300km離れたスパ・フランコルシャンに移す。
その15日(日)は、F1も開催されるオールドサーキットを起点に2本のステージを各2回走行。サーキットを走る最後のSS20“フランコルシャン”は、ステージトップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーにボーナスポイントが与えられるパワーステージとなっている。20本のSSの合計距離は295.78km、リエゾン(移動区間)を含めた総走行距離は約950kmだ。
■Mスポーツ・フォードWRT
●ガス・グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC)
「テストでは農地の道路がどれだけ滑りやすく、予測がつかないかということに驚いたし、グリップの変化はラリー中に大きな課題になるだろうね。テストではウエットとドライのコンディションになったから、すべての状態を少しずつ体験したことになる。しっかりとした準備ができたと感じているし、マシンのハンドリングはとても良いよ」
「たとえばドイツよりも道幅は狭い。ミスをする余地はほとんどないね。ドイツでなら多少スライドしても問題ないけれど、イープルで少しでもスライドしたら、道の先端に突き出ることになる。だから正確にクリーンに走行する必要がある」
「インカットするのに優れたクルマが必要だ。そういう場所がたくさんある。動きが予測できるマシンも必要だ。道の端がすぐ近くにあるのにスライドしたくないからね」
「テストで一番集中したのは、ジャンクションに備えたブレーキングポイントをしっかり頭に入れておくことと、タイムを落とさないことだ。ブレーキングにしっかり集中しないと、コンマ数秒が余計にかかることになる。だから限界までプッシュしなければならないんだ」
「でもグリップがとても変わりやすいから、ドライであっても慎重になる必要がある。足を取られやすいからね。僕にとってターマックはグラベルよりもより自然な感じなんだ。僕はカートで育ったからね。僕の目標はトップ5入りだよ」
●アドリアン・フルモー(フォード・フィエスタWRC)
「これは僕にとって新しいラリーだけれど、自宅から40kmしか離れていないから、母国ラリーのような感じだ。だから道路の特異性は新しいものではない。タイトなコーナーや、強いブレーキングの必要性があること、その後にあるロングストレートには充分なトラクションが必要であることを僕は知っている」
「また、超高速コーナーもあるし、道幅は本当に狭いんだ。コーナーをインカットする場所も多いから、つまり多くの泥が路上に出てくる。だから出走順はとても重要になる」
「このラリーはドライコンディションでさえ、すでに大きなチャレンジなんだ。そこに雨が降ろうものなら本当に難しいものになる。道幅は狭く泥が多い。僕たちは農地の真ん中にいるのだからね。グラベルタイヤの方が速く走れる可能性もあるよ!」
「イープルでWRカーで競争するのはいっそう過激なことだけれど、僕は自信を持っている。僕たちが充実したテストをしたときは、少々雨が降っていたので、乾きかけた道路と、完全にドライの道路でテストをした」
「自分の家からこれほど近いのはいいものだ。僕の家族、パートナーの家族、友人たちがいるし、僕のコドライバーのルノー(・ジャモール)の母国ラリーだからね。もちろん良い結果を出したいし、いつものようにベストを尽くすのは確かだよ」
「もしかすると僕には少しアドバンテージがあるかもしれない。何が期待できるか多少分かっているからね。でも自分にプレッシャーをかけることはしない。僕はただ戦いに没頭したいんだ」
■ヒュンダイ・シェル・モビスWRT
●ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)
「僕たち全員が、イープルに行くのをとても楽しみにしている。このラリーは過去に何度か出場したことがあって、2018年のイベントではヒュンダイi20 R5で優勝したんだ」
「道幅はかなり狭くて滑りやすいのでとてもチャレンジングだ。両側にある溝はどこもすごく深い。だからひとつのミスも犯さずに、四輪すべてを道路の上にキープしなければならない。多くの展開が見られると思う。これまで経験した他のどのターマックイベントとも異なる特徴があるんだ」
「前にドイツでラリーをしたときは、数千人ものベルギー人ファンが応援にきてくれた。今回はベルギーが会場だし、しかもWRCだから素晴らしい雰囲気になると確信しているよ」
●オット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)
「イープルの映像を見たことがあるけれど、間違いなくとても有名なラリーだよね。あるセクションでは道はまっすぐに見えるけれど、危険な側溝のせいでステージを走行するのが信じられないくらいトリッキーになっている」
「昨年のイベントがキャンセルされる前に1日だけテストを行うことができた。その時は、これは明らかにチャレンジングな週末になるだろうという感触を得たよ」
「僕たちにとってはクロアチア以来、初めてのWRCのターマックラウンドになる。クロアチアでは特に落ち着いて走れたわけではなかった。だけどその後、僕たちはラリー・アルバで走る時間を持てたから、イープルには全体的に良いフィーリングを期待しているのは確かだ」
●クレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20クーペWRC)
「イープルは僕が一番気に入っているイベントのひとつだ。幸運なことにキャリアのなかでかなりの回数参加することができている。前回は2019年のことで、優勝することができたんだ」
「これから参戦することになるラリーのなかでも、もっとも面白く特殊なラリーのひとつであることは間違いない。データ上では、変わった形状のイベントに思えるけれど、マシンに乗ってしまえば素晴らしいチャレンジになるよ」
「ほどんどすべてのジャンクションで路面の状態は少しずつ変わっている。このイベントは本当に楽しみにしているし、世界ラリー選手権のステータスにふさわしいラリーだよ」
■TOYOTA GAZOO Racing WRT
●セバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)
「新たなるターマックラリーとして、イープルがWRCのシリーズに加わることに興奮している。非常にチャレンジングなラリーとして知られているので、初めて出場し、どのようなステージであるのかを探ることが楽しみだ」
「もちろん簡単にはいかないと思うが、先週は少し雨が降る難しいコンディションで良いテストを行なうことができたし、ベストを尽くして準備を進められた。イープルのステージは全体的に路面のグリップが頻繁に変化し、このラリーへの出場経験がない我々にとって、限界を見極めることが最大の難題になると思う」
「現在、チャンピオンシップを少しリードしており、いい状況にあるが、イープルのような難しいラリーがまだいくつか残っているので、集中力を切らさないようにしなければならない」
●エルフィン・エバンス(トヨタ・ヤリスWRC)
「他の多くのドライバーと同様、私もイープルへの出場経験はなく、まったく新しい挑戦となるため、どのようなことが待ち受けているのかを完全に予想することはできない」
「ふたたびターマックラリーに出られるのはうれしいけど、前回のクロアチアとは大きく異なるイベントだ。コーナーが少なく、直線やきつい曲がり角が多いため、最初は比較的単純な道に見える」
「しかし、路面の変化、グリップの変化、そしてインカットが多くあるということが、事前のテストで明らかになったし、本番ではそのような状況に遭遇する機会はさらに多いだろう。ここ数戦は望んでいたような成績を残せていないので、何としてもいいリザルトを狙いたいと思うよ」
●カッレ・ロバンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)
「エストニアで初めて優勝し、初勝利を待ち焦がれる必要がなくなったことはもちろんうれしいし、今はイープルをとても楽しみにしているんだ。WRCとしての開催は初めてだけど、ラリー界では誰もが知っている伝説的なイベントだ」
「テストの段階ですでにトリッキーなコンディションであることがわかった。通常、ドライバーはコーナーを大きくインカットするので、道には多くの泥やグラベルがかき出される。そのため路面コンディションが非常に難しく変わりやすいのが特徴だね」
「今回、このラリーに初めて挑むにあたっては、路面のグリップレベルを把握し、その情報をいかに正しくペースノートに反映させるかが重要なポイントになる」
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