かなえられたクルマに望むべきもの
トヨタ・カローラフィールダーにカローラツーリング、マツダ・マツダ6、スバル・レヴォーグ、アウトバック、そしてホンダ・シャトル。それらの共通点がおわかりだろうか。日本で展開している国産車のステーションワゴンである。かつてに比べて車種は大幅に減ってしまったが、今はトレンドのSUVがステーションワゴンのニーズを埋めているといえるかもしれない。
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歴史を遡れば、2000年代初めのミニバンブームが起こる前の10年ほどの間が日本のステーションワゴンの絶頂期だった。きっかけは1989年にスバルから初代レガシィが発売されたこと。そのシリーズにツーリングワゴンが展開されていたのだ。
ツーリングワゴン自体はレガシィの前身である「レオーネ」時代から存在したが、象徴的存在として用意されたターボエンジンのハイパワーワゴン「GT」の登場が、地位を大きく高めたのは間違いない。
ハイパーワゴンが割拠した時代
そんなワゴンブームは21世紀に入って終焉を迎えるが、その末期に起こったのがハイパーワゴンウォーズだ。各メーカーが、過激な性能のワゴンを登場させたのである。
ワゴンブームの火付け役であるレガシィはGTシリーズを進化させ、1996年に登場した2代目の後期モデルではMT車が280psに到達。
日産は「アベニール」にSR20DETを積んだ210psの4WDモデル、
2003年6月には「ステージア」に3.5LのV6エンジンを積んだ272psモデル(当初はオーテックジャパンによる特別仕様で後にカタログモデルへ展開)を用意した。
1996年には三菱も参戦。「ギャラン」のワゴン版といえる「レグナム」には、280psのV6 2.5Lターボエンジンが用意されていた。 そうなるとトヨタも黙っていられるわけがなく、1997年デビューの2代目カルディナには260psのターボエンジンを積んだ「GT-T」が用意された。2002年登場の3代目では、「GT-FOUR」と名前を変えて継続されている。 倒立式フロントダンパー&モノチューブ式リヤダンパーの専用足まわりにレカロシートを組み合わせ、ドイツのサーキットである「ニュルブルクリンク」のイニシャルからとった「Nエディション」なるモデルまで用意されていたのだから驚きだ。
2002年から2007年まで販売されていた、ひとクラス上の後輪駆動ワゴン、マークIIブリットでは、280psを発生する直6ターボエンジンの1JZが搭載されていた。多くは、レガシィツーリングワゴンGTに触発されたフォロワーと考えていいだろう。
過激さを極めたインプレッサとランサーの両雄
しかし、そんなハイパワーワゴンのなかでもとくに過激なモデルといえば、1992年に最初のモデルが登場したスバル・インプレッサWRXのワゴンモデルと、2005年にデビューした三菱ランサーエボリューションワゴンの2台だということに異論を挟む人はいないはずだ。
インプレッサWRXのなかでも1994年から展開された「STiバージョン」はエンジンの性能アップなど速さにこだわるモデルで、当初は持ち込み登録としていたほど特別な存在だった。
一方「エボワゴン」の異名を持つランサーエボリューションのワゴンボディは、「エボIX」とその進化版の「MR」に設定。重量バランスの違い(車体後半の重量が増して前後50:50に近づいた)からセダンよりもハンドリングが良く、サーキットではオーバーステアを楽しめたのが印象的だ。
実用性と走りを両立させるハイパワーワゴン
そんなハイパワーワゴンがクルマ好きにもたらしたのは、いったい何だったのだろうか。間違いないのは、走りと実用性をハイレベルで両立させた選択肢の提供だ。当時はまだ速いクルマがもてはやされ、それを好むクルマ好きも多かった。そして家族ができたときに、ハイパワーワゴンがちょうどいいクルマとなったのだ。それ以前は車体剛性の不足やサスペンションの新過不足により実現できなかった箱型ボディのハイパワーモデルが、このころから技術的に無理なく可能となったのだ。 さらには、新しい自動車文化のひとつを築いたといえるだろう。かつては速いクルマといえば実用性というウィークポイントが存在したが、ハイパワーワゴンにはそれは見当たらない。新しい実用車像だったように思える。実用的でサーキットでも楽しめるワゴンなんて、当時は欧州車でも少なかった。
ちなみに、個人的に印象深いワゴンは2002年に登場した4代目のホンダ・アコードワゴンだ。スポーツグレードである「24Tスポーツパッケージ」を愛車として購入したが、高速域におけるスタビリティの高さとワインディングロードにおける身のこなしの良さには驚くばかりだった。エンジンは200psと控えめなのでハイパワーワゴンとは言い難いが、ハンドリングの良さだけでなくロングドライブ時の疲労の少なさまで含めて「日本車もここまで来たか」と思わせる出来栄えだったことを覚えている。
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