11月25日、クルマ好き注目の国産スポーツセダン、スバル新型WRX S4がついにデビューを果たした。新型は現行型レヴォーグ同様、スバルグローバルプラットフォーム(SGP)にフルインナーフレーム構造を採用して大幅に進化を果たしているという。
さて、その気になる実際の走りはどうだったのか、デビューに先駆けて千葉の袖ケ浦フォレストレースウェイで行われたプロトタイプ試乗会でステアリングを握った国沢光宏が渾身のレポートをお届けする!
【車名当てクイズ】この名車、迷車、珍車、ご存じですか? 第19回
文/国沢光宏、写真/中島仁菜
[gallink]
■新型WRXの日本仕様車に先行試乗! その実力は先代をはるかに凌駕!?
初代を100点とすれば、新型は120点です。
アメリカで先行発表されていた新型WRX S4の日本仕様(ただしプロトタイプ)試乗会が袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された。武闘派のクルマとあり、一般道だと性能をフルに引き出せないということなんだと思う。初代WRX S4のオーナーである私としちゃ、当然ながら新型のパフォーマンスが大いに気になる。全開で攻めてみました!
乗ってアクセルを踏んだ瞬間から先代とすべてが違う! それが新型WRXの特徴だ。エンジン、シャシー、ブレーキ、ダンパーなどすべての進化が融合した結果だろう
回りくどい前置きは後回しにして試乗といきましょう! まず、売れ筋になりそうなザックスの電制ダンパーを採用した「STI Sport R EX」から。
ドライビングシートに座り、プッシュボタンでエンジンスタート。当然のことながらマニュアルモードにして『S♯』を選ぶ。ピットレーンを出てご挨拶がてら軽くアクセルを踏んでみた。
するとどうよ! 低中速回転域のトルクが太い! いや、正確に書くとレスポンスがいい。スペックを見ると新型は375Nm/2000rpmで、従来型は400Nm/2000rpm。本来なら負けている。
でも実際ハンドルを握ると、アクセル開けた直後のトルクが太いのだった。おそらく排気量にして20%違うため、タービン回り始めのトルク差となって出ている?
■新旧の絶対的な性能差はわずか? しかしトータルバランスのよさが新型の特徴
アクセルを踏んだ直後の太いトルクはすべてのコーナーの立ち上がりで感じます。試乗後、開発チームに聞いてみたら、サーキットでタイムを計測すると従来型と同じか、わずかに速いという。
エンジンスペックだけで考えたら300psを出す従来型に軍配上がるため、立ち上がりのレスポンスとコーナリング速度で稼いでいるんだと思う。
新型WRX S4は2.4LのFA24ターボを搭載。先代に比較すると、25ps/2.6kgmダウンと若干スペックダウンしたが、排気量UPにより低速域でのトルクの厚みが増すなど体感的な速さは先代同等以上だ
興味深いことにエンジン特性は従来型と驚くほど似ている。最大トルク回転数を見ると2000~4800rpm。最高出力回転数が5600rpm。全開で走ってみたけれど、体感的に新型は速い!
スペックじゃ少しずつ従来型より低いけれど、総合性能で優位ということ。このあたりに新世代プラットフォームのポテンシャルが出ているのかもしれない。
気になるエンジンフィールだけれど、振動少ない水平対向ということで、これまた大差なし。いずれにしろエンジンは従来型と甲乙付けがたい。今回計測できなかった燃費も、スペックからすれば同じくらいだと考えてよかろう。
ただ、ロムチューンとか出回り出すと、排気量の大きい新型のほうが伸び代あるかもしれません。
■レヴォーグ譲りのシャシーやブレーキは確実に走りをレベルUPさせている
従来型より若干スペックダウンしているエンジンをカバーしてあり余るのがシャシー性能である。もはやコースインした瞬間から「おおっ!」っと感じるほど。
新型レヴォーグにも共通することながら、プラットフォームの剛性感が大きく上がった。なかでもリアサスのスタビリティが高い! 高速コーナーでドッシリしており、安心感絶大。
サーキットで全開走行中のひとコマ。現行型レヴォーグより始まった新SGP+フルインナーフレーム構造のシャシーは、新型WRX S4の走りのレベルを飛躍的に向上。コーナーを全開で攻めても、安心感が絶大……だそうだ
また、現行型レヴォーグから採用されている2ピニオンのステアリングがいい仕事をしているように思う。2ピニオン、ハンドル切り始めのスムーズさで既存のタイプを圧倒している。
フロントが徐々に向きを変えていくため、リアにジンワリ「曲がるチカラ」を伝えるのだろう。このステアリングフィールを味わうと後戻りできなくなる。
ハンドリングのスムーズさに非常に寄与している2ピニオン電動パワーステアリング。よりダイレクトな操作感が体感できるこのシステムはWRXの走りの質感向上にひと役買っている
ブレーキフィールも大幅に進化した。従来型のマスターバック、限界走行すると物足りなさを感じさせるケースもあった。踏み始めてのレスポンスが鈍くなってしまうワケ。
新型は高価な電動ブレーキブースターを採用しているため、踏み始めの利き具合が素晴らしい。これまた新型レヴォーグから採用されたパーツです。
■スムーズな乗り心地と走行性能を両立したザックスのダンパー装着車がお薦め!
決定的なのがザックスのダンパーだ。従来型で選べたビルシュタインと乗り比べたら、誰でも新型に軍配を上げると思う。ソフトな設定にしておけば文字どおり、「ネコのような滑らかな動き」(ネコに乗ったことがないので自信ないです)でいながら、横方向のGをかけると粘ってくれる。サスペンションの理想像のような働き。
国沢氏がサスペンションの理想像とほめるザックス製電制ダンパーを装着する足回り。今回のWRXで特徴的なオーバーフェンダーは高速走行時のタイヤ周辺の整流に抜群の効果あり!
新型WRXを買うのなら、ダンパーを変える予定のない人はSTI Sportを選ぶことを強く推奨しておく。驚くことにソフトな『コンフォート』モードでも「横滑り防止装置を全カットした状態」のまま袖ケ浦サーキットのコーナーを横向けて走ったってコントロール性抜群にいい! 久しぶりに「スバルの4WD最高だね!」と思った次第。
新型WRX S4注目の諸元表。2.4Lターボながら1,600 kgと比較的軽量な車重のため、WLTCモードでも10.8km/Lとまずまずの経済性も達成しているのは、今日のご時勢ゆえかもしれない
※新型WRX S4の価格は「GT-H」400万4000円で、「GT-H EX」が438万9000円、「STI Sport R」が438万9000円、「STI Sport R EX」が477万4000円。
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みんなのコメント
買ってくれる北米人の要望はたくさん聞いてくれているのですよね。
良いものや理想のものを作って欲しいのならケチばかり付けていないで
メーカーに直接要望を出してさらに購入しないとマーケットがあると認知されないですよね。
今のままでは客でもないのです。