人が乗っているクルマへの接触が普通だったことも
その昔、パリのオペラ座近く(=日本人街区)に所用があって、在仏邦人にはおなじみの書店の裏あたりで、滅多に空いていない狭い1台分の駐車スペースを見つけ、筆者が自分のシトロエン・エグザンティアを何度も切り返してねじ込もうとしていた時のこと。ふと気配を感じてミラーから視線を上げると、何と日本人観光客グループ数人が、アクション中のウチのクルマに向かってシャッターを切っているではないか……。今さら出ていって釈明して、旅情をぶっ壊すのも申し訳なく、必死で自分のフラットなアジア顔をAピラーに隠すことしかできなかった。
「速度無制限」はホントに300km/hでもOK? 日本人が知らないドイツ・アウトバーンの真実
ていうか、そもそも写真に撮られるほど激しいスペクタクルを演じていたつもりは毛頭なく、単に「前後のクルマに当てている」のが珍しがられたのだ。というのも、当時も今も、バンパーは衝撃吸収のために存在すると多くのフランス人は考えおり、ドライバーがわかっていて当てにいく光景は、つねに外国人には衝撃なのだろう。
ところが、ATがようやく増えだしたとはいえ、いまだに新車販売の6割強がMTというお国柄である。じつは路上駐車の際に、他車のバンパーに触れる瞬間、駆動力はかけていない。コツはインパクトの瞬間にある。左足でクラッチを切って、徐行よりも遅く惰性をブレーキのちょんがけで削りながら、ステアリングもこじらずに面ではなく点でソフトタッチすれば、自車にも他車にも傷痕はほぼ残らない。
ちなみにフランスの教習所でストリートでの縦列駐車は、自車の入射角度を意識するより、バックしながらステアリング操舵で「停めたい方向>逆方向」へと、ロック・トゥ・ロックを使い切るべしと教わるので、そもそも車列に対してかなり横刺し気味に突っ込む縦列駐車で、自分のクルマのリヤの一隅が触れるのは、相手のクルマの横長なナンバープレートの上だったりする。いずれにせよ、これらがフランスのMT乗りの作法とはいわないが、標準的な仕草だったことは確かだ。
接触はすれど、ドーンとムチ打ちを誘発するような衝撃では当然ないものだから、運転席に人が座って雑誌を読んでいるような他車にさえ、遠慮なくコツンと当てにいく。相手も心得たもので、一瞬のアイコンタクトはするものの、文句はいってこない。あちらが、2~3回も切り返せば再スタートできる程度に、前か後ろのどちらかが空けておいてやれば、十分フェアという雰囲気だ。それどころか、路傍の駐車帯はパブリックなスペースなので、スカスカに間隔をとって停めるほうが、自分の一人コンフォートのために他人に迷惑をかけている間抜け、そう映る。この理屈、「停める」を「走る」に代えて、日本の高速道路の追越車線にそのままあてはめてやりたい。
ここ10数年ぐらいで当てて停める人の方が珍しくなった
とはいえ買い替えが進んでフランスの路上を走るクルマが入れ替わるにつれ、事情は徐々に変わっていった。ボディ同色にちゃんとペイントされたバンパー、次いでMT車のように微低速域のビミョーな加減が利かない・操作ができないDCTツインクラッチやトルコンATが普及しだしたがためだ。
こうして、ここ10数年ぐらいで当てて停める人のほうがむしろ珍しくなった。だが、いかにも高価そうなドイツ車の同色バンパーにわざわざ接触したがるドライバーはいない一方で、たとえばルノー・カングーのような非塗装のウレタンバンパー相手なら、安心して昔通りにふるまっても大丈夫、と考える人が、路上で多数派を占め続けている。ポジティブにいえば、ドライバー同士がけっこう互いのクルマを観察しているし、ネガティブにいえば足元を見ている証左でもある。いずれインパクトの瞬間に駆動力や加速度Gを殺すのは、昭和から平成中期にかけての、高等テクニックになってしまった。
それでも、相手のクルマを押しのけたりバンパーがもげそうになるほど激しくプッシュするような、ゴリゴリの武闘派に会う確率はゼロではない。大抵は、脳内アップデートに失敗している層か、根っからの不器用ドライバーか、本気でヤバい人といったケースなので、傷だらけバンパーの前後には、あえて停めたがらないのが今のフランスの路上感覚ではある。傷つけられて困るようなクルマは、表通りなんぞに停めてはならないのだ。
そう日本人に説明すると、何て治安が悪くて駐車事情が難しいのかと、渋面を見せる人が多いが、レンタカーの返却時も中古車の下取り時も、クルマのカタチさえ残っていれば細かい傷には無頓着という妙な心地よさはある。タイヤの空気圧もロクに管理されていないカーシェア車両に平気で乗り込めるのと、どっちが無神経か? じつはその程度の感覚の違いなのだ。
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みんなのコメント
イタリアに至っては、追突してもそのまま双方が走り去ることすらある
バンパー役割、だからBUMPERという。