プレーオフ目前、レギュラーシーズンも残り5戦となった2023年NASCARカップシリーズ第22戦『クックアウト400』が、7月28~30日にヴァージニア州のリッチモンド・レースウェイで開催され、長きトンネルを潜り抜けたラウシュ・フェンウェイ・ケセロウスキー・レーシング(RFKレーシング)のクリス・ブッシャー(フォード・マスタング)が、僚友兼RFK共同オーナーのブラッド・ケセロウスキーとともに、決勝400周のうち190周を支配する圧巻のレースを披露することに。
実に8年間にわたるNASCARカップのキャリアで、自己最多となる88周のリードラップを刻んだブッシャーの17号車が、残り3周のリスタートでも前戦勝者デニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)を抑え切り、自身とチームに今季初勝利をもたらすと同時に、最終盤でのプレーオフ進出権を手にする結果となった。
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接触と報復、遺恨の残る“泥試合”となった前戦ポコノの高速2.5マイルオーバルを経て、ショートトラックでの勝負となったリッチモンドでも、意外なことにプラクティスから上位の顔ぶれは変わらず。初日はウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が最速を記録すると、予選ではタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が今季初、自身同地初のポールウイナーに輝いた。
明けた日曜は、レースカーのコクピット温度が55度を超える猛暑のなか、肉体的にも厳しい環境での勝負に。トップ10から7位フィニッシュを果たしたマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)をして「頬が日焼けしたみたいだ。ずっとヘアドライヤーで風を当てているような感じだったからね」と、集中力の持続という点で精神的にもタフな状況となるなか、カップの猛者たちは落ち着いたドライブを披露し、ふたつのステージブレイクを除いてイエローコーションは終盤の1回のみというクリーンなレースが展開される。
そんななか、トヨタ陣営で先陣を切った23XIレーシングの2台は、ポールシッターのレディックが序盤から81周をリードし、ステージ1を制覇して順調にレースを進めていく。しかし残り56周の時点でアンダーグリーンの作業に飛び込んだ際、連携ミスからフルブレーキングでレーン変更し、これが「コミットメントラインに違反した」とされ、ほんのわずかな失策で勝負権を失う事態に。
また、僚友のダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)も、中盤の80周でリードを刻んで自身の最多レースリードラップを記録したものの、同じくアンダーグリーンの作業でタイヤ交換が遅れ、最終的に12位止まりとなってしまう。
その後を継ぐかたちで台頭したのがケセロウスキーとブッシャーのRFK陣営で、レースベストの102周をリードした共同オーナーの6号車はステージ2を制するも、同じくピット作業時のわずかなミスが響き「ワン・ツーで終わりたかった。それが最終目標だったが、それでも大変な1日だったよ」と、トゥルーエクスJr.の前方6位でチェッカーを受ける。
■終盤のコーション発動でも隙なし。ブッシャーが僅差で勝利を手にする
一方、テキサス出身で30歳のブッシャーは、決勝の暑さと集団内での走行に対処し、26番手発進からジリジリとポジションを上げていくと、160周目までにトップ5に食い込み、レディックやウォレスの離脱後はケセロウスキーとハムリンを追う展開に持ち込んでいく。
その後、ステージ終盤でハムリンに対し5秒以上のマージンを築いたブッシャーだったが、ノア・グラグソン(レガシー・モータークラブ/シボレー・カマロ)と絡んだダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)のアクシデントにより、この日最初で最後のコーションが発動する。
しかし残り3周のリスタート以降、快調なバランスを見せるRFK陣営のマスタングに隙はなく、わずか0.549秒差でハムリンを抑えたブッシャーが今季12人目の勝者として、プレーオフ進出に名乗りを上げるトップチェッカーを受けた。
「この17号車マスタングの世話をキッチリとして、スムースな巡航になったね。感触はとても良かったし、ちょうどクルマとタイヤのケアをしながらフィニッシュを目指していたとき、無線で『完璧に機能している、この調子を維持してくれ』と言われた。その直後にコーションが出たんだ」と笑顔を見せたブッシャー。
「でも僕らはレースを通じてとても強かったから、リスタートでも良い感触を持っていた。それをやってのけたのは本当に素晴らしいし、クルーのみんなを本当に誇りに思う。後方グリッドからここへ来るのは、ちょっと遠かったよ(笑)」
一方、単独開催としてウィスコンシン州の象徴的なロードコースで開催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第20戦『ロード・アメリカ180』は、地元出身の21歳サム・メイヤー(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)が、ホームコースでキャリア初優勝を飾る結果に。
同じく、この週末のリッチモンドでカップと併催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズの第16戦『ワールドワイド・エクスプレス250』は、スタート直前にパンクを喫するというドラマを抱えた20歳のカーソン・ホセヴァー(ニース・モータースポーツ/シボレー・シルバラードRST)が、今季3勝目のヴィクトリーレーンでレギュラーシーズン最終戦を締め括ることに。
服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズ(HRE)の16号車タイラー・アンクラム(トヨタ・タンドラTRDプロ)は、予選21番手から13番手まで進出する粘りのレースを披露するも、残念ながらプレーオフ進出を逃す結果に終わっている。
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