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ボルボのイメージを変えた情熱的なC70が誕生20周年を迎える

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ボルボのイメージを変えた情熱的なC70が誕生20周年を迎える

1974年に誕生したボルボの240シリーズ。1993年までという長いモデルライフを送り、累計280万台以上を生産したボルボを象徴する1台だ。そして、240の後継車種として開発され、1991年に発表されたのが850シリーズで、日本でも大ヒットを記録。ボルボの認知度を飛躍的に高めた功労者でもある。

ここに挙げた2つのモデルは、ボルボの歴史のなかでもとくに重要なモデルだ。そして、今でもボルボのイメージとして残っている「ボルボ=箱形」は、この2モデルが作り上げたと言っても大げさではない。

そんなイメージを覆したのが、1996年9月30日にパリモーターショーでワールドプレミアされたC70。それまでのボルボ車とは一線を画すスレンダーで美しいスタイルは当時、大きな驚きを持って迎えられ、2016年に生誕20周年を迎えた。

1990年代の初め、ボルボはクーペとカブリオレをラインアップに加えることを決定。この2つのモデルは850をベースに開発されることとなった。だが、当時のボルボにとって、クーペとカブリオレという限定された市場に向けたモデルの開発は経験が少なく、かつ開発期間は限られていた。

そこでBTCC(イギリスツーリングカー選手権)で、ボルボのレーシングチームと関係があったイギリスのTWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)と提携して開発が進んだ。

■巨匠イアン・カラムの力作
ボルボにとってC70の開発は、大いなるチャレンジだった。生粋のクーペは1960年から1974年まで生産したP1800以来、約20年ぶりのモデルで、TWRとの提携で開発するのもC70が初。プロジェクトマネージャーを務めたホーカン・アブラハムソン氏は、「間違いなく、これは私が関わった中で最も楽しいプロジェクトでした」と当時を振り返っている。

注目のデザインは、「『ボルボ・デザインは角張った箱型である』という概念を変えようとした」とデザインヘッドのピーター・ホルバリー氏が語っているように、美しいラインを描くアーチ状のルーフラインや彫刻的なサイドラインが特徴的なスタイルが生み出された。

このデザイン案を示したのは、アストンマーチンのDB7やDB9、そして新世代ジャガーの象徴でもある現ラインアップのFタイプやXFをデザインしたイアン・カラム氏で、C70はTWR在籍時代の代表作のひとつである。

C70のホイールベースと全長はベースとなった850と同じだが、これほどまでにエレガントなスタイルと軽快な印象を与えるモデルに仕上げたのは、やはりイアン・カラム氏の手腕に負うところが大きい。そして、最初に提示されたデザイン案は、市販モデルまでほとんど変更されることはなかったという。

また、フロント部分こそボルボを象徴するデザインだが、他のボディデザインはそれまでのボルボよりも、情熱的なカーブを描いている。さらに、当初からカブリオレも製造されることが決定していたため、プロジェクトチームはルーフ付きとルーフなしの両方を設計しており、C70はこれ以降のボルボ車を特徴付けることになる新しいデザインの先駆けとなったのだった。

このように、C70には従来のボルボとは大きく異なるエレガントなスタイルが与えられたが、ボルボはデザインに機能を伴うことを必須としている。そのため、クーペとカブリオレの両車で4名がゆったりと乗車できるスペースと、4人分の荷物を収納できる充分なラゲッジスペースを備えているのも特徴だ。

さらに、SIPS(側面衝撃吸収システム)やWHIPS(後部衝撃吸収リクライニング機構付フロントシート)、ベルトテンショナー、サイドエアバッグを装備し、ボルボのアイデンティティでもある安全性を高いレベルで備えていた。

この安全性の確保がC70カブリオレの誕生を支えていたのだ。ボルボは長年、衝突安全性の理由からカブリオレに懐疑的だった。それは長らくオープンモデルをラインアップしてこなかったことが物語っている。

しかし、C70カブリオレには前述の安全装備に加え、車両の横転時に作動する2つの保護フレームをリヤシート後方に備えるROPS(横転保護システム)や、高張力鋼で製造されたフロントウインドウフレームなどが導入され、安全性を確保した。

また、C70は外見に相応しい動力性能を備えることも不可欠だった。そのため、C70には5気筒ターボエンジンを搭載。ボルボ850Rと共通の243psを発生する2.3Lモデルを筆頭に、195psの2.5Lモデルも同時に発売され、排気量によって課税が異なる市場に向けて182psと228psの2.0Lモデルも設定していた。

■トムウォーキンショーレーシング
こうして生まれたC70だが、デザインと開発の大部分はイギリスのTWRの巨大な倉庫で行なわれ、ボルボは基本的な技術構造を担当して車両の特徴を決定し、TWRは設計と生産の調整を担当。TWRの協力を得て、C70は調査研究開始から最初の生産までを、わずか30カ月という短い期間で実現した。

そして、スウェーデンのウッデバラの工場を大幅に改装し、最新の技術を取り入れたこの工場で生産が行なわれた。C70は、ライバルメーカーがクーペとカブリオレのさまざまなニューモデルを投入する中、初代モデルのデザインを9年の間、大幅に変更することなく販売を継続。この初代C70クーペは2002年まで、カブリオレはさらに3年先の2005年まで生産され、クーペが2万7014台、カブリオレが4万9795台、合計7万6809台のC70が世界に羽ばたいていった。

そして、ピニンファリーナの設計による「3分割リトラクタブル・ハードップ」を備えた2代目のC70コンバーチブルは、2005年9月、初代モデルと同じパリモーターショーでお披露目されている。


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