GRスープラのRZグレードに、今夏から待望の6速MT車が登場したのはご存じのとおり。なんといっても3ペダルMT車を操る醍醐味はクルマ好きにとって格別なものだ。
そこで、片岡英明氏が今まで乗ってきた国産車の3ペダル車のなかで楽しかったモデルを3台挙げてもらい、その選んだ理由と楽しさを語ってもらった。
スープラに6MT車追加設定で考える「楽しすぎた3ペダルMT国産車3選」
文/片岡英明、写真/TOYOTA、NISSAN、HONDA、MITSUBISHI
■スープラに待望の6速MT車追加!!
新たに6速MTが設定されたトヨタ GRスープラ
GRスープラは操る楽しさに満ちた後輪駆動のピュアスポーツだが、残念だったのはMT(マニュアルトランスミッション)の設定がなかったことだ。6気筒エンジンにMTの組み合わせならもっと胸がときめくスポーツカーになるだろうと思った人は少なくないはずである。
そういったMT派の期待に応え、3Lの直列6気筒DOHCツインターボを積むRZに6速MT車が追加された。再びMT車にスポットライトが当てられたので、過去の高性能モデルのなかから飛び切り気持ちよく変速できるクルマを3台、独断と偏見、そして操った私自身が経験から選んでみた。
そもそもMT車が少数となっていったのは、左足でクラッチペダルを操作し、クラッチの切断を終えてからシフトレバーを操作してギアを変えるのだが、上手にギアをつなぐのが難しいからだ。今は燃費だって多段化したATに敵わないから少数になっている。
だが、MT車はドライバーが主人公になれ、運転して楽しい。ダブルクラッチを使って上手にギアチェンジできた時の快感は格別だ。
MT車は縦置きエンジンのFR車が全盛だった時代のクルマのほうが小気味よくシフトできるクルマが多い。エンジンの後ろにトランスミッションがあり、その上部に変速レバーが延びているから、ダイレクトな感覚を強く感じる。
また、最近は高性能車でもクラッチ踏力を軽くしているが、クラッチを切った時の重さやストロークも重要だ。
■日産 R32スカイラインGTS-tタイプM&R33スカイラインGTS25tタイプM
日産 R32スカイラインGTS-tタイプM(写真は1989年式)
FRスポーツで楽しいのは、スカイラインである。ハコスカと呼ばれた最初のGT-Rはポルシェシンクロの採用で、慣れると狙ったギアに無理なく入れることができた。この伝統が直列6気筒エンジンを積む「GT」には受け継がれている。
今なお多くのファンに愛されているR32スカイラインではGTS-tタイプMの5速MTが気持ちよく変速でき、楽しかった。ただし、排気量が2Lの6気筒ターボだから、ちょっと気忙しい変速を強いられる。
人気は今ひとつだったが、エンジンとトランスミッションの相性がよかったのは次のR33スカイラインGTS25タイプMだ。エンジンは2.5LのRB25DET型直列6気筒DOHCターボを搭載する。
これに2速と3速にダブルコーンシンクロを採用して操作ストレスを低減した5速MTを組み合わせた。
排気量が500cc増えたことに加え、リニアチャージコンセプトの採用でターボの過給が早いので、5速MTのよさがR32以上に感じられるようになった。シフトノブも手にしっくりとなじむ形状だ。だからストロークはそれなりでも滑らかに、確実に変速できる。
■ホンダ ビート
ホンダ ビート
これとは逆に、小排気量エンジンのために変速する頑張りが楽しかったのがホンダのビートだ。
1991年5月にデビューした軽自動車サイズのミドシップオープンスポーツカーで、エンジンはアクティ用のものを大幅にリファインした656ccの直列3気筒SOHCを搭載した。過給器に頼らない自然吸気エンジンだが、64ps/8100rpmを絞り出し、これに5速MTを組み合わせた。
リアからリンクを介してドライバー横まで5速MTを持ってきているが、自然吸気だから応答遅れはない。また、1気筒あたりひとつの3連スロットルだから、アクセル操作にダイレクトに反応する。しかもシフトレバーは驚異的な40mmのショートストロークだ。
手首の返しだけで狙ったギアに飛び込み、シフトアップもシフトダウンも自在だ。ドライバーの前にはフルスケール1万回転のタコメーターが置かれ、これを見ながらの変速はとても楽しい。レッドゾーン手前の8500回転まで実用になるなど、すべてがバイク感覚だった。
クラッチペダルの踏力は軽いが、全身が操る楽しさに満ちている。軽自動車だが、5速MTを操る楽しさは上級モデルに負けていない。
ちなみにFRスポーツのホンダS2000、2Lのターボエンジンを積むFFスポーツのシビックタイプRもシフトフィールは秀逸だ。両車とも6速MTを採用し、短いストロークで軽やかに変速できる。
■三菱 ランサーエボリューションVIII RS
三菱 ランサーエボリューションVIII RS
勝つために生み出されたモータースポーツ参戦ベース車両は、MTを操る楽しさは格別だ。
水平対向4気筒DOHCターボを積むインプレッサWRX STIも操る楽しさに満ちた1台だが、それ以上に公道でギアを駆使して走りを楽しめたのが、2003年1月に登場したランサーエボリューションVIIIである。GSRは6速MTだが、チタンターボを採用したRSには5速MTが用意されていた。
このRSの5速MT車はワインディングロードでもサーキットでも楽しい。滑らかに入り、正確なシフトフィールを身につけ、とても操作しやすい。2速、3速のギア比、ストロークとも適切で、クラッチの重さも体になじむ。
2Lの4G63型DOHCターボは3000回転から上のトルクが豊かになり、ピックアップも鋭くなっている。これも功を奏し、シフトダウンし、加速する楽しさは格別だ。コーナーが迫るたびに変速が楽しく、一体感のある走りを楽しむことができる。
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