カレラRS 2.7と同様に自然吸気のフラット6
1980年代のポルシェらしく、このスラントノーズの911にも有能なターボチャージャーが組まれているのでは、と期待するかもしれない。しかし、カレラRS 2.7と同様に自然吸気。アクセルペダルを蹴り続け、回転数を高めてパワーを得るタイプだ。
【画像】スラントノーズの優勝マシン 935 K3レプリカ 3.0 RSRとRS 3.8 917K 最新911も 全141枚
低回転域を中心とした日常的な利用に難しさはないが、高回転域まで引っ張らなければ、935 K3のような活発な走りは引き出せない。重いステアリングホイールをしっかり握り、ドライバーも気張る必要がある。
扱いに慣れてくると、胸のすくような強力な加速を味わえる。ポルシェの空冷エンジンらしい、艷やかで厚みのあるサウンドが車内に充満する。背中はシートへ押し付けられる。
当時の仕様書には記されていないそうだが、恐らくクレマーの技術者は防音材の一部を取り除いているのだろう。エンジンの響きがダイレクトに聞こえてくる。太いタイヤがフェンダーへ蹴り上げる砂利の音も大きく、車内は騒々しい。
インテリアも、基本的にカレラ2.7 MFIから手つかず。ステアリングホイールは小ぶりな3スポークで、トランスミッショントンネルにアコーディオン調のプラスティック製ブーツが載り、そこからシフトレバーが伸びている。ストロークは長い。
Gシリーズと呼ばれる、911の特徴も受け継いでいる。フロアヒンジの3枚のペダルが整列して並び、こちらもロングストローク。クラッチペダルは特に重く、ミートポイントが深く、身長が180cmくらいないと快適に踏み込めない。
半ば名刺のような存在になっていた
といっても、それ以外は印象が良いことも通常の911と同じ。メーターはダッシュボードに意図して並べられ、白い文字と赤い針で可読性に優れる。
ミッドナイト・ダークブルーの内装はオリジナル。1970年代のポルシェには、往々にして鮮やかな内装が与えられているが、このコーディネートは珍しい。今では好ましく感じられる。
デッカ社のサウンドシステムは、初代オーナーを象徴するアイテム。ミッキー・モスト氏が立ち上げたレーベル、RAKレコードはカーオーディオへ進出しなかったが、同じくロンドンの大手、デッカ・レコードは提供していた。
彼はアーティストとして活動していた時代、デッカ・レコードに在籍していたのだ。RAKレコードは、EMIへ売却されたけれど。
非常に目立つ935 K3のレプリカは、ロンドン北部にあったモストの自宅周辺でしばしば目撃された。2003年に彼は亡くなるが、晩年まで運転し、半ば名刺のような存在になっていた。その後は、遺族が13年間大切に維持していたという。
現在の「7 RAK」というナンバーを取得したのは、現オーナーのアラステア・アイルズ氏。それ以前は「RAK 8」だった。
ボディを観察すると、飛び石傷や擦り傷が少なくない。40年ほど前に、クレマー・レーシングの技術者が仕上げたままの状態を保っている証拠だ。ガレージにしまわれることなく、活発に路上を走ってきた証拠でもある。
ロックスターのような雰囲気を強烈に放つ
サスペンションは、セミレーシングといえるハードなもの。パワートレインは、公道走行を前提としたストックのまま。ボディワークは、ル・マン・マシンのよう。独特な組み合わせといえ、外見と内面が一致しないことは間違いない。
狼の皮を被った羊、というのは、少し強すぎる表現だろう。少なくとも、ワイドなタイヤを履くことで、ベースのカレラ2.7 MFIより優れた身のこなしは得ている。大きく膨らんだフェンダーも、そのタイヤを覆うために必要な装備だから、内容は伴っている。
フロントフェンダーに切られた無数のスリットは、確かに見た目重視かもしれない。それでも、この処理が嫌いな人は少ないはず。少なくとも筆者は好きだ。
ポルシェは昔から、最高のドライビング・プレジャーをわれわれに提供してきた。しかし、ちょっと真面目すぎ、陽気な華やかさを漂わせることは珍しい。ロンドンの音楽プロデューサーが目指したクルマは、まさにそれを叶えていた。
911 カレラ2.7 MFIをベースに、モータースポーツの栄光へ近い、ロックスターのような雰囲気を強烈に放つ。グレートブリテン島の小さな飛行場を走っていても、サルト・サーキットのスポットライトに照らされているように思える。
協力:アラステア・アイルズ氏、トロフェオ・カーズ
番外編:クレマー・レーシングの活躍
ドイツ・ケルンに拠点を置くクレマー・レーシングは、マンフレッド・クレマーとアーウィン・クレマーという兄弟が1962年に設立したレーシングチーム。その時点で既に、チューニングしたポルシェでモータースポーツ活動を展開していた。
ル・マン24時間レースへ初参戦したのは、1971年。1972年にはポルシェ911 カレラRSRで総合8位という、悪くない成績を残している。
1974年、911は901型から930型へアップデート。1975年に911 ターボが登場し、そのレーシングカー仕様、934と935をプライベートチームへポルシェは販売した。クレマー・レーシングも購入し、更なる成功を掴み取っていく。
彼らは935へチューニングを施し、クレーマーの頭文字、Kを与えた935 K1が完成。さらに開発を進め、935 K2を経て、独自のボディワークを与えた935 K3へ発展させた。
1979年のル・マンを戦った935 K3は、ポルシェのワークスチームを破り優勝。当時最も活躍した、グループ5カテゴリーのレーシングカーへ数えられるようになった。その後、さらに935 K4が開発されている。
1980年代に入ると、クレマー・レーシングはプロトタイプカーへ変更し、ル・マンへ参戦。ポルシェ956で、1983年には総合3位を掴んでいる。また1995年のデイトナ24時間レースでは、ポルシェ962をベースにしたクレマーK8が総合優勝を遂げた。
2001年以降は国際レースから手を引くが、ドイツ・ケルンにあるワークショップは健在。ポルシェでのGTレースのほか、オールドタイマー・グランプリといったイベントにも定期的に参加している。
ポルシェ911 カレラ2.7 MFIのスペック(1974~1975年/欧州仕様)
英国価格:8408ポンド(新車時)/20万ポンド(約3220万円)以下(現在)
販売台数:2144台
全長:4291mm
全幅:1652mm
全高:1320mm
最高速度:239km/h
0-97km/h加速:6.3秒
燃費:5.3-7.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1075kg
パワートレイン:水平対向6気筒2687cc自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:213ps/6300rpm
最大トルク:25.9kg-m/5100rpm
ギアボックス:5速マニュアル
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