クロスオーバーSUVの先駆けであり、根強い人気を誇るトヨタ・ハリアー。2017年6月8日にマイナーチェンジを実施し、2Lターボエンジンを搭載。同時に内外装をリファインしたが、では同クラスの欧州プレミアムSUVと比較して、その魅力はいかほどか!? 勝っているのか!?!? その魅力度をジャーナリストの鈴木直也氏が徹底的にチェックしました!
文:鈴木直也 写真:奥隅圭之
全部つかんだ!! ステップワゴン9/21マイナーチェンジ&ハイブリッド仕様の全貌
ベストカー2017年8月26日号
■日本市場専用に開発されたハリアーの魅力
現行ハリアーの魅力は、日本市場専用として開発されたこと。グローバル化が進んで「海外向けを転用しました」的なクルマが多いなか、売れセンのSUVできちんと日本市場に向き合っているのは素晴らしい。人気のポイントは、高級感のあるスタイルや内装、優れた燃費性能と質の高い乗り心地、そしてお買い得感のある価格。とりわけNA2Lモデルは、コストパフォーマンスに優れた都会派SUVとして高い人気を持続している。
今回そのハリアーに追加されたターボ仕様は、これまでとはひと味違うパフォーマンス志向のバリエーションといえる。
ハリアーと同クラスの欧州車を見ると、ほとんどすべて過給エンジンを搭載。燃費ももちろん大事だが、スポーティな走りを売りモノにしたクルマが多い。
その対抗馬としては、すでにレクサスNXに2Lターボが用意されていたわけだが、その直4、2Lターボ(8AR-FTS)をハリアーにも移植。NA2L、2.5Lハイブリッドと併せて、個性豊かな3種類のパワートレーンが選べることとなった。
そんなハリアー・ターボのライバルとして挙げられる欧州SUVは、BMW X1が2Lディーゼル、ベンツGLA180が1.6Lターボ、アウディQ2が1Lターボと、こちらもまたバラエティに富んだパワートレーンを擁している。
ハリアー・ターボはエントリーの〝ELEGANCE〟が約338万円で、今回の試乗車〝PREMIUM〟は約371万円。輸入車は上位モデルを選択するとかなり高価になるから、なるべく価格レンジンジの近いモデルをチョイスして「現実的な購入比較検討ライバル」としてチェックしようというのが今回の比較チェックの趣旨だ。
■ハリアーはライバルと比べて高出力で安い!!
そんななかで、ハリアーの強みは最もパワフルなエンジンと、そして高級感のある乗り心地だ。パワフルなのはスペックからも歴然。最高出力は今回揃えたライバルのなかではダントツだし(ハリアーは231psで371万4120円、BMW X1は150psで449万円、ベンツGLAは122psで398万円、アウディQ2は116psで364万円)、トルクもBMWの2Lディーゼルターボを凌いでトップの35.7kgm。価格/性能比は圧倒的に高い。
実際に走ってみるとこのエンジン、どの回転域でもトルクがきわめて厚くフラットで、息の長い加速感が持続するタイプだ。逆にいうと、途中からドカンと盛り上がることがないので体感性能は意外に穏やか。ただし、いざアクセルを深く踏み続けた時の力強い加速は、パワフルな輸入車に乗り慣れた人でも「オッa」と思う実力を秘めている。
欲を言えば、2000rpmあたりの低中速からのピックアップがもっと強力ならなおヨシなのだが、慎重なトヨタは過給エンジンのMAXブースト圧をあんまり攻めない主義。ガソリンの要求オクタン価や耐久要件などの縛りを緩めれば、おそらくもっとピリッとしたドライバビリティの演出も可能だと思うが、花より団子、使いやすさと耐久性を重視するのがトヨタウェイなのである。
■ロングドライブで快適な乗り心地
シャシーについても、今回あらためて長距離を試乗して「ハリアーってけっこう進化してるじゃん」と見直すシーンが多かった。
ハリアーのプラットフォームはご存じのとおり北米向けRAV4。3年前に現行ハリアーがデビューする際に、日本市場向けとして大幅にセッッティングを見直しているのだが、それでもぼくのアタマの中のデータベースでは「アベレージくらいかな?」という先入観があった。
今回はシャシー性能に定評のある欧州勢と乗り比べての評価になるわけだが、乗り心地はベンツGLAと並んでトップクラス。さらに、静粛性とあわせたキャビンの快適性は欧州勢を完全に凌駕していて、上質な乗り味にはとっても満足感が高い。
これにはちょっとビックリ。ベンツ・BMW・アウディの欧州プレミアム御三家というと、最初からそのブランド力に圧倒されがちなのだが、この価格帯では足回りのパーツ素材や使われている遮音材などに、特にアドバンテージがあるわけではない。何事も虚心坦懐にみるべし。ハリアーのシャシー性能は、欧州勢と互角に渡り合えるウェルバランスなもの。そう評価していいと思う。
■ではすべてにおいてハリアーの圧勝なのか?
とはいってもさすが欧州勢。〝味〟の部分、たとえばエンジンの吹き上がりフィールやハンドリングには、それぞれ個性的な魅力がある。操舵レスポンスが正確でキレのいいフットワークが魅力のアウディQ2、常にドライバーを心地よく刺激するBMW X1のしなやかな脚、ゆったりどっしり落ち着いたベンツ。3車3様で意地でも同じ方向を目指さないクルマ造り哲学が感じられて面白い。
いずれにせよ、強力な欧州ライバル勢と比較しても、ハリアー・ターボの商品力はなかなかに強力。みなさんも、ディーラーで比較試乗なんかしてみると、意外に目からウロコだと思いますよ。
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