日本販売のアメ車で“一人勝ち”状態の人気ブランド
アメリカ合衆国のトランプ大統領は「日本の自動車市場は閉鎖的だ」と口撃する。だからアメリカ車は日本で売れないのだと。確かにフォードは日本市場に見切りをつけて撤退したし、シボレーとキャデラックというアメリカを代表するブランドを展開するGMも、日本での年間販売台数は2000台に満たない。
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しかし、そんな苦戦にあえぐアメリカ車の中で、Jeep(以下ジープ)だけは他ブランドの苦戦もどこ吹く風。最近では年間に1万台以上の新車を販売し、この10年で日本での年間新規登録台数を、じつに約10倍も増やしている。まさに絶好調なジープ。その好調の秘密をジープのラインアップで確認してみよう。
まずはジープといえばこれ、「ラングラー」。1940年代にあらゆるミッションをこなせる悪路走破性に優れた軍用車両として開発されたウィリスの直系であり、KL型と呼ばれる現行モデルもその特徴的な姿を継承。7スロットグリルや台形のホイールアーチなど、ジープがブランドアイデンティティとしているアイコンも、もともとはすべてこのラングラーの祖先であるウィリスのものだ。
そしてジープがここまで日本に受け入れられることになった最大の要因が、先代モデルであるKJ型ラングラーに追加された4ドアモデルの『アンリミテッド』の存在(下写真)。ラングラーには乗りたいけれど家族がいるから2ドア車には乗れないという潜在的ファンをイッ気に取り込み、それまではオフロードフリークのためのニッチな趣味のクルマだったラングラーを、普段使いもできる家族のクルマへと変貌させたのだ。
とはいえ現行モデルのKL型でも、ジープならではのワイルドさが残っている乗り味は、他メーカーのいまどきのSUVに比べると快適性はワンランク劣る。だが、それをジープの味として受け入れられる人には最高の1台なのだ。
そして、ラングラーの次に知名度が高いのが「チェロキー」。もともとはフルサイズSUVとして展開されていたワゴニアの2ドアスポーティモデルとしてデビューしたが、2代目でミドルサイズのSUVに方向転換された。
この2代目は、本格的なオフロード性能と快適な乗り心地、そして手ごろなサイズと価格で大人気。ホンダ系ディーラーでも販売されたため、イッ気に知名度をあげた。
現行モデルは5代目で、洗練度はさらにアップ。その姿にかつてのヘビーデューティなイメージはなく、じつにスタイリッシュ。FF車をベースとしたクロスオーバーSUVで、オフロードだけでなくオンロードの走りも自慢のジープといえるだろう。
ラングラーがジープのイメージを作り上げた1台とするなら、チェロキーはジープの存在を広く世間に知れ渡らせるのに貢献した1台だ。
史上最速700馬力のジープから都会派オフローダーまで
チェロキーの次に紹介する「グランドチェロキー」は、その名の通りグランドなチェロキー。つまりはラグジュアリーSUV。ジープのラインアップでもっとも豪華でデカい。フルサイズSUVのワゴニアの豪華版であったグランドワゴニアを祖とし、人と荷物を積めて移動できる単純に便利なクルマであったSUVにいち早くプレミアム性を持ち込んだラグジュアリーSUVの先駆けだ。
もともとグランドワゴニアはアメリカ大陸を横断する幌馬車から着想を得たクルマであり、そのDNAを継承するグランドチェロキーも、ジープ兄弟車の中で長距離移動するなら最適のモデル。2018年には、707馬力のV8スーパーチャージャーを搭載し、最高速度290km/hを誇るジープ史上最速の『トラックホーク』も設定され、ジープのフラッグシップモデルという位置づけを確固たるものとした。
そして末弟は、ラングラーに次いで見かけることの多くなったジープが「レネゲード」。ジープ史上もっともコンパクトだが、7スロットグリルや台形ホイールアーチを有し、さらには丸型ヘッドライトの採用によってラングラーのイメージを上手に落とし込んだスタイルは、ジープのタフさを感じさせるものでありながらポップなデザインとなっている。価格も300万円以下から用意されており、初めてのジープオーナーにおすすめの1台といえるだろう。
レネゲード登場前までジープのエントリーモデルの役目を担っていたのが「コンパス」だ。レネゲード登場後、2017年にフルモデルチェンジした現行モデルは、チェロキーとレネゲードの間を埋めるコンパクトSUVという位置づけ。レネゲードと共通のプラットフォームのホイールベースを延長して使用しているため、レネゲードよりも広く快適。エクステリアのイメージも”プチ・チェロキー”といったスタイリッシュなもので、オフロードよりも都会が似合う。オフロードを走ることはないけれど、ジープをお洒落に乗りたいという方におすすめしたい。
アメリカ本国にはこれら以外にもラングラーのリア部分を荷台にしたピックアップトラックのグラディエーターも存在するが、日本への導入はいまのところなし。
ラングラー・アンリミテッドで初めてジープに乗るという人を取り込み、ラングラーでは不便と感じた人がチェロキーやグランドチェロキーに乗り換える。ラングラーの存在でジープを知った人がレネゲードやコンパスに乗る。SUVブランドとして隙のないラインナップを完成させたジープ。この多彩なラインナップこそがジープ躍進の原動力だ。
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