ワイルドでシャープな、他に紛れない強い主張
充分に大きく、驚くほど速く、感心するほど実用的なアウディRS6 アバント。これほど多能なステーションワゴンは稀有だ。アウディ・スポーツの本気が伺える。現代のクルマ好きが、高性能ワゴンに何を求めているのか、充分理解されてもいる。
【画像】歴代高速ワゴンで最も際立つ RS6 アバント・パフォーマンス 競合クラスの高性能モデルはコレ 全131枚
RS6 アバントのユーザーは速さだけでなく、普段使いしやすい実用性や、アウディらしい先進的な技術を求めている。同時に、実用主義の見た目は望んでいない。ワイルドでシャープな、他に紛れない強い主張が好まれるようだ。
C8型のRS6は4世代目に当たり、初代の登場から20年が過ぎた。モデル末期を迎え、英国へ導入されているのは、究極的に増強された「パフォーマンス」グレードのみだ。
過去には、思考が吹き飛ぶようなV型10気筒ツインターボ・エンジンを積んでいた時代もあったが、現行型は同等以上に鮮烈な動力性能を発揮するV8ツインターボ。RS6の確固たるイメージに貢献してきた、四輪駆動システムのクワトロを実装する。
2024年の世相に合わせ、技術的なアップデートも忘れていない。CO2の排出量を減らすべく、V8エンジンはマイルド・ハイブリッド化され、BMW M5やメルセデスAMG E 63Sなどと同じく後輪操舵システムも備わる。
ボディタイプは、ステーションワゴンのアバントのみ。英国価格は11万2285ポンド(約2088万円)からで、カーボンブラック仕様には8950ポンド(約166万円)の追加予算が必要になる。
最高出力630ps、最大トルク86.5kg-mまで増強
C8型RS6の発売は2019年だが、最初から好戦的な容姿に仕立てられていた。先代より、明らかに見た目はワルだった。その傾向は、軽量なアルミホイールを履くRS6 アバント・パフォーマンスで、更に強化されている。
ボンネット内の3996cc V8エンジンは、ベントレーと共同開発されたユニットで、発売当初の3993ccのV8を置き換えた。基本的には、ベントレー・コンチネンタル GTやポルシェ・カイエン・ターボなどと共通するユニットだ。
RS6 パフォーマンスでは、最高出力630ps、最大トルク86.5kg-mまで増強されている。通常のRS6でも、600psに81.4kg-mと不足はなかったが。
目立って数字が増えたわけではなく、2100kgの車重も影響し、路上で明らかな違いを体感できるわけではない。そもそも、RS6は凄まじく速かった。音響的なドラマチックさはもう少し必要だったといえるが、現実世界では有り余るほどだった。
その新しい4.0L V8エンジンには、電圧48Vで動作するスターター・ジェネレーター(ISG)が組まれている。減速時には、最大12kWの電気エネルギーを回収でき、惰性走行時は最大40秒間、エンジンを止めて進むこともできる。
気筒休止システムも実装。カタログ値の燃費は、7.9km/Lがうたわれる。
フルタイム四輪駆動で、必要に応じてロックされるトルセン式センターデフを装備。デフォルトでは、リアアクスル側へ60%のトルクが伝えられる。トラクションの状態次第で、フロント側へ85%まで割り振ることも可能だ。
先進的で洗練されたインテリア
リアアクスルには、アクティブに制御されるアウディ・スポーツのリミテッドスリップ・デフを採用。クラッチを介して左右のタイヤへ自在にトルクを分配し、コーナーでは外側のタイヤを強めに駆動させることもできる。
同時に、ブレーキ制御によるトルクベクタリング機能も組まれる。最新のRS6 パフォーマンスでは、後輪操舵システムとエアサスペンションも標準で装備される。
コイルスプリングとアダプティブダンパーを前後斜めに連動させた、ダイナミックライド・コントロール(DRC)と呼ばれるスポーツサスペンションはオプション。カーボンセラミック・ブレーキも、追加予算が必要になる。
22インチの鍛造ホイールと、コンチネンタル・スポーツコンタクト7が履かされるのは、フォアシュプルング・グレードのみ。試乗車のように。
インテリアは、11万2285ポンド(約2088万円)の高級車に相応しい、特別な雰囲気が漂う。アウディのインテリアデザイナーは、有能な方ばかりなのだろう。
タッチモニターと本物の金属製トリム、グロスブラックのパネルなどが巧みに組み合わされ、先進的でありながら洗練されている。スポーティに各部が仕立てられ、通常のA6としっかり差別化もされている。
ブラックのアルカンターラ巻きステアリングホイールには、差し色としてレッドのステッチが施される。シフトセレクターも、モータースポーツとのつながりを感じさせる。試乗車にはパノラミック・グラスルーフが装備され、開放的な印象でもあった。
大人2人が長時間、快適に過ごせる後席
後席の空間にもゆとりがあり、前後長は座面の辺りで720mmある。BMW M5より20mm狭いものの、高さ方向は990mmあり、約70mm高い。大人2人が長時間、快適に過ごせる。
荷室容量は565L。リアシートを畳むと1680Lまで拡大できる。床面は開口部と同じ高さにあり、重い荷物の積み降ろしも難しくない。荷物がずれるのを防ぐ、ネットやフックなどが備わる点もうれしい。
インフォテインメント・システムは、MMIナビゲーション・プラスと呼ばれるもの。メーターパネルは、12.3インチのモニターが収まるバーチャルコックピットだ。
センターモニターは上下2面で構成され、主にエアコン用とカーナビやオーディオ用に分かれている。表示は鮮明で、反応は素早い。だが、触覚フィードバックが備わるのは良いものの、温度調整などの度に目線をそらし、強めに画面へ触れる必要がある。
バーチャルコックピットは表示内容をカスタマイズでき、ドライバー好みの画面に変えられる。試乗車には、6300ポンド(約117万円)のバング&オルフセン社製オーディオが装備されていた。音質は間違いなく、車載システムでは最高の1つだと思う。
この続きは、アウディRS6 アバント・パフォーマンスへ試乗(2)にて。
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