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【宮田莉朋F2密着】2つのペナルティで入賞圏外に。富士との違いとモンツァの難しさ/第11戦レビュー後編

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【宮田莉朋F2密着】2つのペナルティで入賞圏外に。富士との違いとモンツァの難しさ/第11戦レビュー後編

 17番手からのスタートとなった宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)のFIA F2第11戦モンツァのフィーチャーレース(決勝レース2)。宮田はタイヤ交換義務のあるこのフィーチャーレースで、オプションタイヤ(スーパーソフト)を履いてスタートした。

「スタートでオプションタイヤを選択したのは、スタート直後にアクシデントが起きやすいので、その場合ロングランしなければならないプライムタイヤ(ミディアム)を履くのはリスクが高いと考えました」と宮田。

【宮田莉朋F2密着】困難な予選と経験の重要性。ストレートスピードに苦しんだ土曜日/第11戦レビュー前編

 宮田の予想どおり、レースはスタート直後からアクシデントが多発。宮田は直接アクシデントに巻き込まれなかったものの、ポジションを落とした。

「スタートでは直接アクシデントのあおりを受けてポジションを落として、難しいレースとなりました」

 オープニングラップに1回目のセーフティーカー(SC)が導入され、さらにその後、8周目には2度目のSCが入ることに。宮田はこのSC中にピットインし、プライムタイヤに交換。レースは宮田にとって有利な展開で進んでいくと思われた。ところが、ここで宮田に10秒のペナルティが下る。

「10秒ペナルティについて、レース中には知らされてなく、レース後に知りました」

 2回目のSCが出るきっかけとなったデニス・ハウガー(MPモータースポーツ)のターン1でのスピンが、宮田の追突によるものだとレース審議委員会が判断したからだった。

 レースウイーク終了後の取材会で、改めてハウガーとの交錯の際の状況を尋ねると「僕がオプションタイヤでスタートするなか、周りはプライムタイヤで引っかかる厳しい状況ではありました。そこで1台づつ勝負を仕掛けていましたが、ターン1の進入でハウガーが僕の方(アウト側)に寄ってきたかたちになりました」と、宮田。

「彼もまた、イン側で前のクルマにアプローチしていたと思うのですけど、そこからアウト側に寄られてしまっては僕の行き場はなく。僕の右フロントウイングと彼のリヤに当たってしまったという感じです」

 さらに、フィーチャーレースで宮田はもう一度、ペナルティを科せられてしまう。

 2度目のリスタートとなった11周目、プライムタイヤに履き替えた宮田の背後には、宮田より2周早くプライムに履き替え、すでにタイヤの暖まったビクトール・マルタンス(ARTグランプリ/アルピーヌ育成)が迫っていた。第2シケイン進入で宮田が外側、マルタンスがイン側でサイド・バイ・サイドとなるなか、タイヤの暖まりきっていなかった宮田は右フロントタイヤをロックさせてしまう。

 そのままコースオフを喫した宮田はシケインのエスケープを走行してコース復帰となった。その際に、レースディレクターにより事前に定められたエスケープロード(路面に引かれたイエローラインとボラードの外側)を通過できなかったことで5秒のタイムペナルティが科せられてしまう。

「アウト側にいた僕がシケインの途中で押し出されるかたちでコースオフしました。コースに合流する際、エスケープロードの出口にあるボラードまで行ってからコースへ戻らなければいけないということは、始まる前からわかっていました。ただ、順位も争うなかで、あの状況からボラードまで行くのは難しい状況でした。この学びは次に繋げたいと思います」

 ペナルティによる累計15秒のロスを少しでも取り返したかった宮田だったが、先述したマルタンスとのブレーキング勝負の際に右フロントタイヤにフラットスポットを作ってしまい、思うようにペースを上げることができなかった。

「クルマが本来持っているパフォーマンスを引き出すことができず、ペースを上げられまま終わったという難しいレースでした」

 9番手でチェッカーフラッグを受けた宮田は15秒のタイムペナルティが適用され、14位でモンツァを終えた。

「コースのどこで攻めて、どこで守るのかを知り尽くしているライバルたちと戦うのは難しかったです。オーバーテイクも何度かしましたが、まだまだでした」と宮田は振り返った。

■かつてないローダウンフォース仕様とモンツァの難しさ

 モンツァの難所でもある長いストレートから鋭角のターン1へのアプローチ。日本でも富士スピードウェイで同じく長いストレートから鋭角の右コーナーへのブレーキング勝負が見られるが、その違いについて宮田は「(FIA F2とスーパーフォーミュラ等では)車重が違うので」と前置きをしつつ、こう答えた。

「富士は右に曲がるだけなので、ブレーキをバンッと踏んでステアリングを切ればいいという感じです。コース幅も広いので多少ターン1へのアプローチがワイドになったからといってタイムロスにはならなかったりします。そのため、スーパーGTやSFでは、見た目にはライン取りが失敗しているように見えて、セクター1のタイムを見ると全体ベストということもあります」

「ただ、モンツァのターン1はシケインです。ターン1をしっかりと曲がることができないとターン2立ち上がりの加速が鈍り、ターン3から第2シケイン(ターン4~5)までのストレートスピードに影響します。だからといってターン1へのブレーキングが手前すぎるとそれもタイムロスになってしまいます」

「コースが狭いのでイン側について強引に追い抜くことはできますが、それではトラックリミット違反を取られることもあるので、コース幅が狭い分クリーンな戦いが求められます。ブレーキング勝負で自分も相手も損しないかたちでの戦いが、より細かく求められますね」

 また、モンツァでのローダウンフォース仕様のFIA F2マシンは、日本でも経験をしたことがなかったほどのダウンフォースの少なさだったという。

「ストレートでもフラフラするほどで、トウ(スリップ)に入っているとまっすぐ走ることができません。『まっすぐ走ることができません』と言うと誤解を生みそうですが、感覚的には富士のストレートではたとえステアリングから手が離れてもまっすぐ走ると思いますが、モンツァでFIA F2マシンだと厳しい、という感じです。モンツァでは前のクルマが少しでも動くと風の感じ方が変わります」

 それほど不安定なローダウンフォース仕様のFIA F2マシンでのブレーキングはさらに難しいものとなる。

「同じポイントでブレーキを踏んでいても止まりきれないということもあります。だからFIA F2ではみんなタイヤをロックアップさせるのだと思います。感覚的に合わせこむことができるドライバーは速いのだと感じますが、僕はまだヨーロッパでのレースやピレリタイヤの経験が圧倒的に少なく、短い時間で戦わなければいけないからこそ、そこに合わせこむ力が必要だと感じたレースウイークでした」

 2024年FIA F2、次戦となる第12戦は9月13~15日に、アゼルバイジャンのバクー市街地サーキットで開催される。

「バクーに向けては、できる限りの準備をして臨みたいと思います。サマーブレイクの間には帰国して、モリゾウさんからも大変ありがたい言葉をいただきました。その言葉には本当に感謝しています。その期待に応えられるよう、後半戦も頑張っていけるよう、今はベストを尽くすだけです」

 今季のFIA F2も残るは3戦6レース。一戦ごとに経験を積む宮田の走りに、引き続き期待したい。

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みんなのコメント

1件
  • m2_********
    なるほど…苦労が伺えるイイ内容…
    まだまだですな…w
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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