フルモデルチェンジしたマツダ3は、1.5Lガソリン・モデル、1.8Lディーゼル・モデルが5月24日に発売され、2.0Lガソリン・モデルは7月下旬に発売予定。そして注目のSKYACTIV-Xエンジンを搭載するXモデルは10月発売予定となっており、フルラインアップが勢揃いするのは10月以降になる。だがいち早く1.8Lのディーゼル・モデルと2.0Lのガソリン・モデルを試乗する機会が巡ってきたので早速レポートしよう。
試乗した1.8Lディーゼル搭載のファストバックXDプロアクティブ・ツーリングセレクションと2.0Lガソリンモデルを搭載するセダン 20S Lパッケージはいずれも量産試作車で、ナンバーが取得できていなかったため、クローズドコースでの短時間の試乗となった。コースは舗装も良好なので、乗り心地や使い勝手、様々な場面での静粛性などは評価できなかった。こうした点は7月下旬に行なわれる公道での試乗ではっきりするはずだ。
1.8LディーゼルXDプロアクティブ・ツーリングセレクション
最初に1.8Lディーゼル搭載のファストバックXDプロアクティブ・ツーリングセレクションのステアリングを握った。
この1.8Lディーゼルエンジンは、現行CX-3に搭載されているユニットだが、加速特性のチューニングにより、より滑らかな加速特性にしているという。もちろん、ディーゼルならではのトルクはこのエンジンの真価だ。
ただ、市街地でのゴーストップを想定した停止状態からの軽いアクセルの踏み込みでは、出足が鈍く感じる。可変ジオメトリーターボを装備しているものの、十分な過給圧が得られず、もたつく印象になる。もちろん、2000rpmあたりになればトルクも十分感じられる。
ハイレベルなリヤ・サスペンション
ステアリングの操舵フィーリングは滑らかで落ち着きがある。ただ、現在のトレンドでいえば操舵力はやや重めのチューニングになっている。またブレーキのフィーリングもリニアリティを追求し、コントロール性は優れているが、ブレーキペダルを踏み込む時のフィーリングは重めに感じた。
操縦性はとても素直で、安定感があり、特にリヤ・サスペンションのグリップのよさ、落ち着きはかなりハイレベルの仕上がりになっている。
これはトーションビーム式サスペンションの横剛性を大幅に高め、同時に上下ストロークの動きをスムーズにしたことで実現しているという。また、コーナリング初期でもボディの動きは穏やかで、横Gが高まってもロールはかなり抑え込んでいる。一方で、加減速でのピッチング方向の動きも抑制されているので、走行中のボディの動きは少なく、フラットな乗り心地だ。
今回のような滑らかな路面のコースでは、入念にチューニングされたサスペンションの各ブッシュのコンプライアンス特性が威力を発揮しているのだ。
原理原則のシート設計
マツダ3は新開発されたシートもアピールポイントの一つだ。骨盤、腰椎をしっかり保持し、脊柱をS字状に保つように設計されたヨーロッパ・タイプのシートになっている。これはクルマのシートの原理原則をきちんと追求した結果だ。
ランバーサポート、サイサポート(太もも裏側の支持)も任意に調整できるようになっているので、シートポジションにこだわるドライバーでも文句なしだ。走行中のクッションの減衰性能も高く、従来では考えられないほどシートの性能にこだわっていることがわかる。強いて言えば、コーナリングが連続するような状態で横Gに対しては背中の横ズレをもう少し抑えた方が好ましいと感じた。
この1.8Lディーゼル搭載のファストバックXDプロアクティブ・ツーリングセレクションは、マツダ3シリーズの中でも販売の中心になるはずで、価格は285万8800円。同じCセグメントで競合するインプレッサ 2.0i、カローラ・スポーツ 1.2ターボ/ハイブリッド、シビック・ハッチバックよりやや高めの価格設定だ。しかしマツダ 3は独創的なデザイン、こだわりの質感などで、競合するのはむしろ輸入車のCセグメントだろう。
セダン 20S Lパッケージ
マツダ3のセダンは、ボディ側面の凹型デザイン処理がファストバックと共通になっているが、全体のフォルムは水平基調で、品格やエレガントさを強調し、いわばセダンの王道ともいえるシルエットに仕上がっている。
だが、セダンの全高はファストバックとほぼ同じで、Aピラー、Cピラーともに傾斜角が強いデザイン処理になっているため、フロントシート、リヤシートともに乗降時のヘッドクリアランスに圧迫感があり、窮屈に感じる。この乗り降りでのヘッドクリアランスの窮屈さはファストバックも同じなのだが、セダンの場合は特に感じた。
20S Lパッケージはおなじみの2.0LSKYACTIV-Gエンジンが搭載され、吹け上がりのレスポンスの良さはガソリンエンジンならではといえる。ただ、市街地などでアクセルを軽く踏み込んだ時にはダウンサイジング・ターボ・エンジン車と比べるとトルク感は薄いと感じる。
マツダ3の走りのイメージは、「エフォートレス・ドライビング」という言葉で表現されている。文字通り解釈すると肩肘を張らない、力みのない走りということになるが、真意は路面からの外乱に影響されにくく、修正操作が少なく、ドライバーの意のままの走りを目指しているということだ。そのためシャシー全体で統一感を求めて開発が行なわれており、この走りのコンセプトは今後登場するニューモデルにも受け継がれていく。
今回の限られた条件でのマツダ3の試乗では、インパクトのあるデザイン、統一感があるバランスの取れたシャシー性能が印象的だった。試乗した1.8Lディーゼル搭載のファストバックXDプロアクティブ・ツーリングセレクションと2.0Lガソリンモデルを搭載するセダン20S Lパッケージは、いずれも量産試作車で、ナンバーが取得できていなかったため、クローズドコースでの短時間の試乗となった。コースは舗装も良好なので、乗り心地や使い勝手、様々な場面での静粛性などは評価できず、こうした点は7月下旬に行なわれる公道での試乗ではっきりするはずだ。公道ではどう感じられるか、次の試乗が楽しみだ。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>
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