2024年F1第22戦ラスベガスGPの予選では、ふたつの大きなサプライズがあった。ひとつはジョージ・ラッセル(メルセデス)のポールポジション獲得である。メルセデスは初日から速さを見せ、3回のフリー走行、そして予選Q1からQ3まで全セッションで、ラッセル、もしくはそのチームメイトであるルイス・ハミルトン(メルセデス)がトップタイムを叩き出した。
しかし事前の予想では、タイヤの温まりに手こずる傾向のあるメルセデスは、路面温度が15度を超えず、長い直線の全開走行中にタイヤがさらに冷えるラスベガス・ストリップ・サーキットでは、大苦戦するはずだった。この結果には、ラッセル自身も「予想外だった。これだけ速いとはね」と、驚きを隠さなかった。
ラッセルが今季3度目のPP獲得。ガスリーと角田裕毅がQ3で健闘見せる【予選レポート/F1第22戦】
「しかもQ3最初のアタックで壁に少し当てて、大急ぎでフロントウイングを交換したからね。間に合うか、ヒヤヒヤだったよ」と、ラッセル。
「でも最後のアタックは、自信があった。クリーンラップさえ取れれば、少なくともフロントロウには着けると思っていた。明日はこの予選結果を、そのまま勝利に繋げられたらいいね」
そしてもうひとつのサプライズが、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)の予選3番手だった。前戦サンパウロGPは13番グリッドから、3位表彰台をもぎ取った。しかしあれはいわば、天候と赤旗中断のタイミングに助けられたもの。決してアルピーヌの戦闘力のおかげではないはずだった。
ところがラスベガスでも、ガスリーはフリー走行と予選全セッションでトップ10以内に入る速さを見せているのだ。一方チームメイトのエステバン・オコン(アルピーヌ)は、逆に1回もトップ10内に入れず。予選も終始ガスリーに0.2~0.3秒差をつけられ、Q2敗退の11番手に終わった。
そもそも3本の長いストレートを低速コーナーで繋ぐラスベガスは、かなりのパワーサーキットである。パワーの優劣がタイム差に影響するいわゆる“パワーセンシティビティ”では、パワーサーキットの代名詞というべきベルギーのスパ・フランコルシャンに次ぐと言われる。
そのため、4メーカー中もっとも非力なはずのルノー製パワーユニットを搭載するアルピーヌは、この点でも不利なはずだ。実際、予選直前に行われたFP3でのガスリーの最高速は、スピードトラップ、フィニッシュラインともに最速ドライバーより約9km/h遅かった。
ではその分低速コーナーで稼いで、区間タイムが速かったかといえば、必ずしもそうでもない。予選Q3でガスリーに0.12秒差をつけられ4番手に終わったシャルル・ルクレール(フェラーリ)は、3区間の自己ベストを繋げば、その差は0.034秒まで縮まり、あと一歩でトップ3に届いていた。つまり区間タイムをうまくまとめたことが、ガスリーの勝因だったと言えそうだ。
ちなみに、今回の予選3番手は意外にもガスリーの予選自己最高位である。これまで2020年F1第8戦イタリアGPでのF1初優勝を含む5回の表彰台経験のあるガスリーだが、そのすべては後方グリッドから追い上げた結果だった。明日の決勝レースは、はたしてどんな戦いを見せてくれるだろうか。
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