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新型ポルシェ・カイエンSに試乗 3代目、より高水準のバランスが強み

掲載 更新
新型ポルシェ・カイエンSに試乗 3代目、より高水準のバランスが強み

もくじ

どんなクルマ?
ー 3代目カイエン MLBが下半身強化

ポルシェ重役インタビュー「ミッションEのいま、EVの未来、911の今後」

どんな感じ?
ー 内装、PCM筆頭にマカンと並ぶ
ー 2.9ℓV6ツインターボ、SUV向き
ー 動的性能評価はオプションで左右

「買い」か?
ー 高水準のバランス、評価を高める

スペック
ー ポルシェ・カイエンSのスペック

どんなクルマ?

3代目カイエン MLBが下半身強化

3代目のポルシェ・カイエン。2代目と似ているスタイルを察すれば、それを憶測するに難くない。しかも、2代目のそれもオリジナルからそこまでかけ離れているわけでもない。

それもそのはずで、2002年の発売以来、77万台を販売したこのモデルに関して、ポルシェは、好感されてきたこのスタイルをいじくり回すことなく発展させてきた。911が序々に発展してきた手法に習って。

一方、ベントレー・ベンテイガと共有するMLBプラットフォームを採用している新型カイエンの中身は、外観以上の変更が施されている。

特に、オプションで装着できるリア・ホイール・ステアリング、アウディQ7で導入された電子制御アンチ・ロール・システム、刷新されたエア・サスペンションなど、ドライバーを支援するシャシーのテクノロジーが満載である。

くわえて、新しいエンジン、一新されたインテリアなど、一見した以上に新型カイエンの内容は充実しているのである。

どんな感じ?

内装、PCM筆頭にマカンと並ぶ

何度乗っても、素晴らしいクルマである。

購入者はそのスタイルに関して決断を迫られるが、過去の経緯からしても、それが購入者の判断を鈍らせることはないだろう。一方で、新型カイエンのインテリアに関しては、皆が概ね好意的なはずだ。

さて、カイエンとマカンの両車は、そのダイナミックな走りが定評であるが、ラグジュアリー性に関しては相違がなかったとも言い切れない。(事実、モデル末期のカイエンと現行マカンとでは、後者のほうが上回っていた。)

だが、それもここまで。新型カイエンは、パナメーラと同じ高質なマテリアル、自然なテクノロジーとの融合、考え抜かれたスタイルを採用している。

£100,000(1500万円)を大幅に下回る価格帯のクルマでこれ以上を求めることは考えられない。よく考え抜かれ、使い勝手がよく、最新のコネクティビティも備える。新型カイエンのキャビンは、いわば衝撃である。しかも、100ℓのトランク・スペースも追加されている。

走らせてみるとどうだろう?

2.9ℓV6ツインターボ、SUV向き

カイエンSは、2.9ℓツインターボV6エンジンと8速オートマティック変速機の組み合わせ。これは、アウディRS5のパワートレインとほぼ同じものであるが、出力は若干低い440psである。

しかし、このパワートレインは、カイエンSとのマッチングに優れているといえる。1800-5500rpmの広域で発生する56.0kg-mのトルクを誇るこのエンジンは、M4のライバルである2ドアよりも、2020kgのSUV向き。

これは、同時にカイエンSの最高速度を264km/hまで押し上げるのに十分であるし、われわれの試乗でもそれが現実的であると確認できた。

変速を瞬時に行うオートマティック変速機もあいまって、ターボで過給されるこのV6エンジンは、多くのドライバーが求めるパフォーマンスを提供する。

ただ、カイエンの車両ダイナミクスに疑いはないものの、今日のスタンダードに照らし合わせると、どうオプションが組み合わされたかによって評価は変わる。

動的性能評価はオプションで左右

例えば、今回用意された試乗車には、カーボン・セラミック・ブレーキ(多くのSUVバイヤーにとっては不要だが、あると素晴らしい)、アダプティブ・エア・サスペンション、リア・ホイール・ステアリング、21インチ・ホイールが組み合わされている。

ちなみに標準モデルには、金属コイル・スプリング、通常のステアリング・システム、小径のホイール、金属ディスクのブレーキが搭載される。

標準モデルのカイエンSに、正当な評価を下すことが難しいことが理解できるだろう。

少なくとも試乗車の場合、傑出したダイナミック・パフォーマンスを提供している。

プラットフォームを共有する、ベントレー・ベンテイガやアウディQ7に比べて軽量であるカイエンは、両車と比べて、よりシャープで、よりダイレクト、そして、よりレスポンシブなドライブが可能。そこらの大きなハッチバックよりも、ターンインでは、ニュートラル・ステアの特性を示す。

ポルシェのいう、「今まで以上に911のようなクルマ」という表現は、うのみにしないほうがいいが、コーナーの立ち上がりでは、このカイエンは後輪がすべての仕事を行っているかのようである。

「買い」か?

高水準のバランス、評価を高める

新型カイエンはすべてにおいて文句なしの出来である。

(適切なオプションの組み合わせが必須ではあるが)今回のモデルチェンジで、改めてSUVセグメントにおけるドライバーズカーとしての地位を確固なものとしただけではなく、今まで以上に実用性に優れ、ラグジュアリー性の観点からも、その魅力を大きく拡大した。

特定の項目でライバル達は追従するものの、これだけ魅力的な要素を1台のパッケージとして具現化したクルマは見当たらない。

ただ速いだけではない。ただ便利なだけではない。ステータス性だけが先走っているわけでもない。それぞれが、標準より高い位置でバランスしているのだ。

£68,330(1025万円)は決して安くはないが、ランドローバー・ディスカバリー・ファースト・エディション・ディーゼルよりは安価である。

新型カイエンは、正当な価値を提供しているだけでなく、すべての項目に関して、確実に、目に見えるかたちで進化させている。それは、SUVセグメントにおける次の次元への昇華を意味する。

ポルシェ・カイエンSのスペック

文:AUTOCAR JAPAN マット・バード
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