2019年に本国アメリカで発表された新型シボレーコルベットは、従来のフロントエンジンからコルベット初のミッドシップへと駆動レイアウトを変更。それによりパフォーマンスはどう進化するのだろうか。国際試乗会から報告する。(Motor Magazine 2020年5月号より)
パワートレーンはV8 OHV 6.2L + 8速DCT
通算8世代目にして、長年受け継がれてきたFRレイアウトからミッドシップへと変身を遂げたコルベット。従来から一転、キャビンフォワードとなったフォルムにもかかわらず初見でもちゃんとコルベットらしく見えるのは、全身を走る鋭角なエッジや、トレイ状の水平面を有するリアデッキ、そして四連のテールランプといったアイデンティティが巧みに継承されているからだろうか。
【くるま問答】トヨタ2000GTのサイドにある四角い部分には、いったい何が入っているのか?
ボディはアルミニウムをメインにマグネシウム、CFRPなどの素材の組み合わせによって軽量・高剛性に仕立てられている。車重は1530kgと非常に軽量だ。キャビン背後に積まれるエンジンは、V型8気筒OHV 6.2L自然吸気。搭載位置は変わったが、伝統のスモールブロックユニットを今回も継承している。最高出力は495ps、最大トルクは637Nm。トランスミッションは新たに8速DCTが与えられた。
試乗車は、日本向けに近い仕様で、オプションのZパッケージを装着していた。タイヤは同じランフラットながら標準のオールシーズンではなくミシュランパイロットスポーツ4Sに。スプリングが従来の横置きコンポジット素材製リーフから一般的なコイルへと改められた4輪ダブルウイッシュボーン式サスペンションやブレーキ、電子制御のセッティングが変更され︑電子制御LSDを搭載する。もっとも容易な識別点は、外装に与えられたエアロパーツである。
街中での走りの印象は、まさに激変と言える。カッチリとしたボディとよく動くサスペンションにより乗り心地は上々。従来気になった安っぽい騒音、振動がなくなったこともあり走りの質が大幅に高まっているのだ。
日本へはコルベット初の右ハンドル仕様を投入
低速トルクたっぷりのエンジンのおかげで渋滞も憂鬱ではない。初採用のDCTが非常によく調教されていて、スムーズなドライブを可能にしているのも嬉しいポイント。実はこれ、開発の際にはポルシェのPDKをベンチマークに徹底的に研究したそうである。
また、ミッドシップ化の恩恵でフロントフードが25mm下げられ、かつ着座位置が600mm前に出たことから、視界もとても良くなっている。フェンダーの峰が見えるのは街中でも、そしてサーキットでも有効。もっとも、あの長いノーズが見えない景色は、古くからのファンにとっては寂しいところに違いないのだが……。
初めて訪れたスプリングマウンテンサーキットでの走りも最高に楽しませてくれた。エンジンは6500rpm手前あたりまで滑らかに、そして徐々にパワー感を増しながら豪快に吹け上がる。それをミッドシップのトラクションがしっかり推進力に変えてくれるから、躊躇なくアクセルペダルを踏み込める。これは今までとの最大の違いだ。
フットワークも正確性の高さが際立つ。中立位置での据わり感の良いステアリングが殊更シャープには躾けられていないのも好感触。そんなことをしなくてもミッドシップで、そして低重心のOHVレイアウトを採るV型8気筒ユニットを積む新しいコルベットでなら、路面に吸い付くような安定性とともに、意のままのラインを容易にトレースできるのだから。
今回ミッドシップレイアウトを採用したのは、開発陣に先代でFRレイアウトの限界を究めたという思いがあったからだという。実際、Zパッケージ付きの0→60mph加速は2.9秒で、最高出力650psの先代Zよりも速い。これはひとえに、その卓越したトラクション性能のおかげだ。
ミッドシップ化という大変身は、ひとえにユーザーに今まで以上の感動をもたらすため。要するに、コルベットが守るべきはFRという形式ではなく、ユーザーを驚かせ、笑顔にする存在であることだったというわけである。
新型コルベットの日本上陸は、しばらく先で2021年春の予定である。しかしながら初の右ハンドル仕様での発売となる。(文:島下泰久)
■シボレー コルベット LT 2 主要諸元
●全長×全幅×全高=4630×1934×1234mm
●ホイールベース=2722mm
●車両重量=1530kg
●エンジン= V8OHV
●総排気量=6153cc
●最高出力=502ps/6450rpm
●最大トルク=637Nm/5150rpm
●駆動方式=MR
●トランスミッション=8速DCT
[ アルバム : シボレー コルベット LT 2 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
現在は賛否両論だが、答えは2~3年後には出てるだろう。私はこの進化についていけるかな?
結局は最近のモデルがそんなに人気無かったからでは?