セールス好調な輸入車のセダンに対して、いまや風前の灯火状態にある国産車のセダン。日本自動車販売協会連合会が発表した2022年3月の乗用車ブランド通称名別順位を見ても、シリーズ全車がカウントされるカローラとMAZDA3を除く国産セダンの最上位はクラウンの28位という惨憺たる状況だ。各社のラインナップも減少傾向にあることは周知のとおりだが、しかし! 魅力的なモデルがまだまだたくさん存在することもまた事実。
セダンとはとかく“オジサンっぽい”などと揶揄されがちだけど、そんなことは言わせない! という、オヤジ臭を感じさせない国産セダンを改めて紹介していこう。
本文/FK、写真/スバル、トヨタ、日産、三菱
今どきミニバンに負けないオラオラ顔が魅力「トヨタ カムリ」
2017年のフルモデルチェンジで生まれ変わった10代目カムリ。先代までの「いかにもセダン」というスタイリングが一新され、オヤジ臭が一掃された!
TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)に基づくエンジンとプラットフォームの一新を受けて、2017年7月に登場したカムリ。
そのストロングポイントといえば意のままの走り、クラストップレベルの燃費性能、上質な乗り味といったところだが、それ以上に見逃せないのは磨き抜かれた美しいスタイリングだ。外観のデザインはTNGAに基づいてエンジンと乗員レイアウトを下げることで低重心シルエットを実現。フロント周りもスリムなアッパーグリルと立体的なロワグリルを対比させて、低重心かつワイドなスタンスを際立たせている。
加えて、抑揚のある面使いとシャープなボディラインで構成したサイドビューや、ショルダーを張り出させることで安定感を演出したリアビューもアッパーミドルセダンの存在感をアピール。
2018年8月にはショックアブソーバーのロッドガイドブッシュ、ピストンバンド、オイルを専用開発したスポーティグレードのWSを新たに設定。カーペットライドと称される優れた乗り心地とライントレース性を向上させ、洗練されたスタイルと応答性の高い操舵フィーリング&フラットな走りを融合させている。
すべてがアグレッシブ!! オヤジ臭ゼロのスポーツセダン「スバル WRX S4」
スバルのフラッグシップセダンのWRX S4。押し出しの強いエクステリアデザインが特徴的。スポーツカー好きの心も惹きつける!
SUBARUのAWDパフォーマンスを象徴するスポーツセダンとして圧倒的な存在感を放つWRXシリーズだが、2021年11月に発表された新型のWRX S4でも動力性能や操縦安定性、静粛性や乗り心地といったあらゆる性能をブラッシュアップ。卓越した走行性能と4ドアセダンの実用性を兼ね備えた唯一無二の存在として、各方面から高い評価を獲得している。
従来モデルから排気量を400cc拡大した新開発の2.4リッター水平対向DOHC直噴ターボ“DIT”エンジンは低速域では力強いトルクを発生し、高回転域では途切れのない加速感を実現。
また、エンジンとのきめ細かい協調制御がもたらす素早い変速や操作に対する高い応答性が魅力のスバルパフォーマンストランスミッションを搭載することで、市街地での普段使いからワインディングロード&高速道路まで走りの楽しさが味わえる仕上がりとなっている。
もちろん、アグレッシブなデザインもWRX S4の魅力のひとつ。その最たる特徴でもあるフロントのヘキサゴングリルから始まる塊感や大きく張り出した前後フェンダーなど、ひと目見ただけで走りへの期待を駆り立てるエクステリアも秀逸のひと言に尽きる。
オヤジのセダンとは言わせない! 圧倒的パワーが魅力「日産 スカイライン400R」
スカイライン史上最高の405psを誇る「400R」。バブル期のハイパワー競争を彷彿とさせるニューモデルの登場は、往年のスカイラインファンのみならず、ハイパワーカー好きの心をも躍らせた!
発売当初はセールス面で苦戦を強いられた13代目スカイラインのV37型。しかし、プロパイロット2.0、3.0リッター V6ツインターボのVR30DDTTエンジン、Vモーショングリルなどの“日産らしさ”を打ち出した2019年7月のマイナーチェンジで華麗なる復活を遂げた。
なかでも一番のトピックとなったのは400Rの追加ラインナップだ。R33 GT-Rのコンプリートカーとして発売されたニスモ400Rのネーミングを継承したこの新顔は、名前負けしないハイスペックが最大の持ち味。
スタンダードモデルが搭載するVR30DDTTが最高出力304psであるのに対し、400Rでは専用の渦電流式ターボ回転センサーを採用するとともにブースト圧を回転限界領域まで使いきれる値に設定することで、スタンダードモデルからプラス100psのハイパワー化を実現。日産の国内モデルでは初搭載となる水冷式インタークーラーにおいても強化ウォーターポンプを採用することで冷却性能を向上させている。
他にも電子制御ショックアブソーバーをはじめ、アルミ製造ブレーキキャリパー、大径ブレーキディクス、19インチアルミホイールといった400Rの専用装備もマニア心をくすぐってやまない。
カムリに負けないオラオラ顔のスポーツセダン「トヨタ カローラ」
2019年9月に登場した12代目カローラ。先代と比較して、急激にいかつい面構えに。この大変身により、カローラ=オヤジというイメージは払拭された!?
1966年の発売以来、日本国民の大衆車として活躍してきたカローラは、2019年9月に登場した通算12代目の現行モデルで大きく様変わりしたことで話題となった。
先述のカムリと同様に、TNGAに基づくグローバル共通プラットフォームの採用でスポーティなデザインと走る喜びを追求。日本の環境に合わせて開発された専用ボディは3ナンバー化されたものの、最小回転半径は従来モデルと同等の5.0mを実現(G-Xグレード15インチタイヤ装着車。16、17インチタイヤ装着時は5.3m)するなど、取り回しの良さが配慮されたものとなっている。
顔つきもより精悍でスポーティさを強調し、1.2リッターの直噴ターボエンジンと6MTを搭載するW×Bグレードにおいても2連続させたJ字形状のクリアランスランプとデイライトの採用で横方向に伸びやかで鮮烈な印象を表現。水平基調のリアコンビネーションランプもワイド感を強調するスタイルへと生まれ変わっている。
2022年3月にはモータースポーツ起点のデザインを採用したGRカローラも発表。ベース車両はセダンではないものの、もはや“カローラ=大衆車”の図式が成り立たないほどの大きな魅力に溢れている。
復活希望!? 狙い目の中古スポーツセダン1「三菱自動車 ギャラン フォルティス」
2007年にデビューしたギャラン フォルティス。歴代ギャランのイメージは踏襲しているものの、躍動感のあるデザインはオヤジ臭を感じさせない
ラリーアートの復活が何かと話題の三菱が2007年8月に発売したギャラン フォルティス。
その自慢のひとつは軽快な走りにあり、平成17年基準排出ガス75%低減レベルを達成した新開発の2.0リッターDOHC MIVECアルミエンジンと低燃費を実現したINVECS-III6速スポーツモードCVTの組み合わせが高い動力性能と環境性能を発揮。
SPORTグレードのCVT車にはパドルシフトを採用するなど装備も充実していた。エクステリアデザインにもコダワリをみせ、ひと目見て三菱のセダンとわかる新デザインアイデンティティを同社セダンとして初採用。三菱セダンの伝統である逆スラントノーズと安定感のある台形グリルを組み合わせることで躍動感と存在感を表現した。
2008年7月にはプレミアムスポーティ4WDグレードの“ラリーアート”を新設定。専用パーツで武装したエクステリア、低・中速域トルクを重視した2.0リッターMIVECインタークーラーターボエンジン、フロントヘリカルLSD・アクティブセンターディファレンシャル・リア機械式LSDで構成するフルタイム4WDシステムなど、ラリーアートの名に恥じないスペックが与えられた一台は今振り返っても魅力的だ。
復活希望!? 狙い目の中古スポーツセダン2「ホンダ アコードユーロR」
ミラノレッドは専用外装色。2.0リッターVTEC搭載車の他に、150~170万円台(東京価格)で購入できる1.8リッターVTEC搭載車も設定されていた
2002年10月に発売された7代目アコードのユーロRも走りを追求したスポーツセダンとして外せない一台であり、ホンダスピリットが息づくこだわりのディテールがファンを熱くさせた。
最高出力220psを発生する2.0リッターDOHC i-VTECエンジンと軽量コンパクトで高いレスポンス性能の誇る6速マニュアルトランスミッションが圧倒的な走行パフォーマンスを披露したユーロR。
足回りもスプリング、スタビライザー、ブッシュ類をハードな設定にチューニングするとともに、ダンパーの減衰力も最適化がなされていた。また、フロントには左右連結のストラットタワーバーを採用するなど、乗り心地を犠牲にすることなくシャープな走りと高い走行安定性を両立。
その他にも、エアロフォルムを採用した前後バンパーにハニカムメッシュタイプのフロントグリル、17インチアルミホイール&215/45の偏平ワイドタイヤ、MOMO本革巻ステアリングホイール、レカロ社製フロントバケットシート、アルミ製シフトノブ&スポーツペダルなどを標準装備した、スポーツテイスト満点の内外装を堪能できるのもユーロRオーナーだけに与えられた特権だった。
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みんなのコメント
別にセダンだって括らなくても。