レギュレーションから開放されたGT3マシン
執筆:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
<span>【画像】マクラーレン720S GT3Xとベースの720S フェラーリやランボのサーキットマシンも 全108枚</span>
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
思わず息を呑むような、このアグレッシブな見た目のクルマは、マクラーレン720S GT3Xという。サーキット走行会用の特別なマシンに見えるし、レーシングカーそのものにも見えるはず。
実態は、そのとおり。金額は相当なものだが、プロドライバー以外でもお金で買える、鮮烈なドライビング体験を与えてくれるマシンだ。富裕層に向けた、趣味の道具ともいえなくはない。
AUTOCARの読者なら、マクラーレン720S GT3についてはご存知かもしれない。簡単に要約すると、GT3Xはレギュレーションにとらわれず、GT3マシンの実力をフルに引き出したレーシングカーといえる。
500馬力以上のパワーをバランスさせるため、実践的なスリックタイヤと大きなリアウイングで武装。最高出力は標準で720ps。さらにGT3 Xでは、短時間だけだが、ボタン1つで750psまで高めることも可能になっている。
GT3Xのエンジンは、間口を広げるために、GT3仕様のユニットではない。マクラーレンのおなじみといえる、M840T型と呼ばれる4.0LのツインターボV8が搭載されている。
強化ピストンと専用ヘッドが職人によって組み付けられ、チタン製のエグゾーストシステムを採用。低回転域でのトルクと引き換えに、トップエンドでの熱狂的なパワーを実現するため、電子制御システムにも変更が施されている。
ドライブトレインにも抜かりはなく、リアタイヤへパワーを伝達するのは、Xトラック社製の6速セミオートマティック。シフトパドルも付く。トラクション・コントロールは、12段階から選択できるようになっている。
外観も内観も正真正銘のレーシングカー
それ以外の部分は、GT3マシンと考えて良い。タブシャシーもボディパネルも、GT3用のカーボンファイバー製だ。空力特性を強く意識したデザインに見とれてしまう。前後のサスペンションも、レーシングスペックとなる。
車内には複雑なロールケージが組まれているが、助手席を追加するため、GT3マシンから設計が変更されている。GT3Xを購入できるドライバーの場合、助手席にはインストラクターが座るのだろう。
マクラーレン720S GT3Xは、外から見ても中に乗ってみても、正真正銘のレーシングカーだ。でも、750psという規格外の最高出力のために、公式レースへの参戦は許されない。
今回の試乗で筆者の隣に座ってくれたのは、マクラーレン・レーシングチームのエースドライバー、ユアン・ハンキー氏。座る場所を交換する前、ハンキーはスペインのナバラ・サーキットで、目を剥くような走行を披露してくれた。
既にピレリ・タイヤとカーボンセラミック・ブレーキは充分に温まっている。今度は筆者がトライする番だ。
カーボン製のバケットシートに、ハーネスで身体が固定される。ペダルボックスとステアリングホイールの位置は調整可能で、背もたれが倒れ気味ながら、快適なドライビングポジションに落ち着いた。
手のひらが握るのは、トラクション・コントロールやABSの設定を変えるスイッチが並ぶ、操縦桿のようなステアリングホイール。力を抜いて一呼吸した頃、マクラーレンのエンジニアがエアジャッキの圧力を抜く。720S GT3Xが振動とともに着地する。
異次元の能力に迫ることすら難しい
エンジンを始動。待ってましたといわんばかりに激しいノイズを撒き散らす。ザラザラとした音質で生々しい。発進時は、エンジンを充分な回転数へ高めつつ、クラッチ操作が必要。一度スピードが出てしまえば、2ペダルのトランスミッションとして扱える。
ピットレーンを通過し、コースイン。これまで筆者が経験したなかで、最も痛快で刺激的で、ハードな周回になることを、すぐに思い知る。
事前に、マクラーレン765 LTで習熟走行を終えていた。ラインは共通しているかもしれないが、その体験は生ぬるいものだった。
765 LTでは速度と姿勢の調整が必要だったコーナーも、ドライバーが勇気を振り絞ることで、720S GT3Xはいとも簡単に回頭していく。メカニカルグリップも、ダウンフォースも驚愕するほどに高い。
身体のすべての細胞が、片方へ強く引っ張られる。そんな状況でも、ハンキーはアクセルを踏んだままで大丈夫、と耳を疑うアドバイスをくれる。遠心力で、腰はシートのサイドサポートに強く押し込まれる。
ナバラ・サーキットのどのコーナーでも、720S GT3Xの異次元の能力に迫れるほど、ブレーキングポイントを遅らせることが難しい。ABSが起動するのでは、という勢いでブレーキペダルを蹴飛ばしても、何事もなく減速する。足が痛くなるだけだ。
GT3レースでは使えない、スーパーソフト・コンパウンドのピレリ・タイヤのグリップ力も凄まじい。極めて素早く正確に、ステアリングホイールを傾けた方向へ、ノーズが向きを変える。ドーベルマンが獲物を追うように。
直線スピードは備える実力のほんの一部
トラクションの高さにも驚かされる。トラクション・コントロールは12段階の7段目を選択していたが、コーナーの出口付近でアクセルペダルを踏み込むと、ホイールスピンの予兆を伺わせる振動が出る。
練習を繰り返せば、ブレーキングポイントを詰め、理想的に旋回していくこともできるかもしれない。速度域の低いコーナーなら。
最高出力750psに車重1210kg、クロースギアという組み合わせだから、ストレートも恐ろしく速い。だが、直線スピードは720S GT3Xの備える動的能力の輝きの、ほんの一部に過ぎない。
V8エンジンは、狂ったように咆哮を放ち、回転数の上昇につれて素晴らしい美声へ変化する。指でシフトパドルを弾いた瞬間、トランスミッションは変速し、熱狂するような音響体験が繰り返される。
プッシュトゥパスと呼ばれる、短時間のパワーアップを許すボタンを押す。リアタイヤが路面を蹴る力が、明確に高まる。ただし、フェラーリSF90 ストラダーレの方が、中間加速はより鋭いかもしれない。
筆者がサーキットを走ったのは数周のみだが、レーシングスーツは汗で濡れていた。手も足も、マシンとの戦いで痛みを感じる。脳みそも思うように動かない。限界手前の領域で数10周もする、プロ・ドライバーの集中力と持久力に敬服し、感動させられた。
アドレナリンが放出された爽快感と、沸き立ってくる気持ちで、自然と笑顔になってしまう。マクラーレン720S GT3Xの能力は驚異的だ。そのすべてを探りたいと、何度も挑戦したくなるほど夢中の時間だった。
マクラーレン720S GT3Xのスペック
英国価格:75万ポンド(1億1625万円)
全長:4664mm(720S GT3)
全幅:2040mm(720S GT3)
全高:1196mm(720S)
最高速度:−
0-100km/h加速:2.8秒
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1210kg
パワートレイン:V型8気筒3994ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:750ps
最大トルク:−
ギアボックス:6速セミ・オートマティック
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