現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「これ“奈良のシカ”ですよ」ヤベエ!! 超人気オフロードバイクの“やっちゃった”秘話とは? ヤマハ「セロー」

ここから本文です

「これ“奈良のシカ”ですよ」ヤベエ!! 超人気オフロードバイクの“やっちゃった”秘話とは? ヤマハ「セロー」

掲載 更新 22
「これ“奈良のシカ”ですよ」ヤベエ!! 超人気オフロードバイクの“やっちゃった”秘話とは? ヤマハ「セロー」

「入門用」でもある一方、細部はいろいろと“ホンキ”な1台

 1985年に発売されたヤマハ「セロー225」は、英語で「カモシカ」という意味の車名を持つオフロードタイプのバイクです。その後、ヤマハのオフロードモデルの代表格として君臨しました。

【え、、、】これが「奈良のシカだ」と言われちゃった初期のセローです(写真)

 しかし、セローはモトクロスでもなければトレッキングバイクでもない、ヤマハが打ち出した「マウンテントレール」という新カテゴリーのバイクだったことが大きな特徴です。

 この当時、筆者はセローのことを「バイク入門モデル」として見ており、正直に言ってどこかヤワな印象を抱いていました。実際、当時セローをチョイスしていたライダーには女性やビギナーが多かったことも要因だと思います。

 しかし登場から40年、改めて振り返ってみると、セローはデビュー当時には考えもしなかったほど素晴らしいバイクであったことに気づきました。今では「セロー、あの時はごめんな」と謝りたくなるほどです。

 前期型セローの狙いは「街乗りにも最適だが、オフロードでも楽しめるモデル」というものでした。エンジンはトルクフルな225ccの4ストロークユニットを搭載。軽量・スリムで取り回しがよく、シートも足付きの良さを重視して低く設計されていました。

 細部を見ると、特にダート走行において、バイクに慣れていないライダーが転倒することを見越した設計となっているのが感じられます。実際にヤマハが女性ライダーやビギナーなどもターゲット層にしていたことがうかがえます。

 一方でセローが凄いのは、初心者向けのゲートウェイ的モデルでありながら、足回りなどにはかなり本格的な装備を採用していたことです。

 フロントディスクブレーキには悪路での泥などの付着を想定し、キチンとカバーが装着されています。また、リアの足回りにはヤマハ自慢の「MONO CROSS」サスペンションを採用。エンジン・ボディ周りのデザインも無駄がなく、実に完成度の高い1台だったのです。

 その完成度の高さが好評を博し、セローは登場するや否や大ヒット。発売翌年の1986年以降は、特別仕様車や派生モデルなどを続々と追加し、マイナーチェンジも重ねながら進化していきました。

「シカが違う」という大失態

 ところで、ヤマハはセロー発売時に、意外なところで大失態も経験しています。それはセローのタンクにあしらわれた「カモシカ」のイラストについて。

 1985年モデルには、3つに枝分かれしたツノを持つカモシカのイラストが描かれていたのですが、これが動物愛護団体から「このツノはカモシカではなく、奈良のシカのツノの形だ」と指摘されてしまったのです。結局タンクのカモシカは、後のモデルで正しい形のツノを持つ絵柄に変更されました。

 予想だにしない「まさか」なミステイクだったわけですが、前期型セローの問題点といえば、強いてこの程度。バイクとしてはやはり優れたモデルでした。

 熟成を重ねていったセローですが、1997年にはついにフルモデルチェンジを受けます。タンク容量は当初の8.8リッターから10リッターへとアップ。タンクの形状自体も改良し、より足付きのいいライディングポジションを実現しました。また、最新機能の採用にも次々に挑戦しました。

 1997年の東京モーターショーでは、当時最先端だったナビゲーション機能付きGPSシステムを搭載したモデルが参考出品されました。また、2000年モデルにはアクセル開度を正確に点火系マップへと反映させる「スロットルポジションセンサー(TPS)」なども採用しています。

 しかし、「女性やビギナーでも安心して乗れる」という誕生以来のコンセプトも大事にしたセロー。初代から親しまれた225ccエンジン搭載のモデルは、生産終了となった2004年まで進化し続けました。

コンセプト変更? スタイリッシュに変身した「セロー250」

 初代登場から20周年にあたる2005年、セローは最大の特徴である“扱いやすさ”はそのままに、排気量を250ccにアップして後期型へとフルモデルチェンジしました。「セロー250」はエンジンが大きくなった一方で、さらなる軽量化にも取り組み、結果的に225ccモデルよりも、はるかに乗りやすいセローへと生まれ変わったのでした。

 ただし、大幅に変更されたデザインについては、筆者は個人的に“違和感”を覚えました。250ccモデルは先鋭的でスタイリッシュなデザインになった反面、225ccモデルにあった「洗練されすぎない、どこかアナログ的な親しみやすい雰囲気」は感じられないものになっていたほか、タンクの“カモシカ”も姿を消していました。

 もちろんコレはコレでカッコよく、たとえばモタード風にカスタムするのであればドンピシャに仕上がるだろうと感じました。しかし、当時の女性ライダーや初心者から見れば敷居が高そうな雰囲気のデザインであったとも思えます。もしかしたらモデルチェンジを機に、ヤマハがターゲットユーザーの“再構築”を図ったのかもしれません。

 先鋭化した後期型セローですが、市場からは相応の支持を受け、マイナーチェンジを重ねつつ更に進化していきました。2012年モデルでは、シュラウド(ボディのカバー)のグラフィックにカモシカの絵柄が復活。「カモシカがモチーフである」と言われなければ気が付かないほど抽象的ではありましたが、前期型時代からのファンには嬉しいエピソードでした。

 しかし、2018年のマイナーチェンジモデルを最後に改良は止まり、セローは2020年に惜しまれつつも生産終了となりました。

 225ccから250ccへと大きく変わりつつも、35年もの長きにわたり愛され続けたセロー。ヤマハの惜しみない開発力と、そして何より「バイクユーザーを増やそう」とした努力の歴史が詰まった、偉大なるロングセラーモデルでした。(松田義人(ライター・編集者))

文:乗りものニュース 松田義人(ライター・編集者)

関連タグ

【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

日産の稼ぎ頭! ミニバン「セレナ」顔面チェンジで高級感アップ!? 最近の車中泊ブームにも対応
日産の稼ぎ頭! ミニバン「セレナ」顔面チェンジで高級感アップ!? 最近の車中泊ブームにも対応
乗りものニュース
eve autonomyの無人搬送システム、ロジコネットの危険物工場に導入…化学品物流の安全性向上へ
eve autonomyの無人搬送システム、ロジコネットの危険物工場に導入…化学品物流の安全性向上へ
レスポンス
「これは革新的」「デッドスペースにピッタリとハマる」簡単装着で効果抜群! スタイリッシュで見た目もイイ感じのカーグッズを紹介
「これは革新的」「デッドスペースにピッタリとハマる」簡単装着で効果抜群! スタイリッシュで見た目もイイ感じのカーグッズを紹介
月刊自家用車WEB
EVバッテリー革命? 「純度99.79%リチウム」回収に米研究チームが成功、リサイクル率5%の壁を突破なのか
EVバッテリー革命? 「純度99.79%リチウム」回収に米研究チームが成功、リサイクル率5%の壁を突破なのか
Merkmal
アプリ売りのオジさん彷徨記 Vol.59 「船橋でフォローアップ編1」
アプリ売りのオジさん彷徨記 Vol.59 「船橋でフォローアップ編1」
AutoBild Japan
新しい日産セレナ登場──GQ新着カー
新しい日産セレナ登場──GQ新着カー
GQ JAPAN
トヨタ「“新型”RAV4」発売に反響“殺到”!? 「トヨタ恐るべし…」「高級車じゃねーか」 約7年ぶり全面刷新で「450万円スタート」 大幅進化した“SUVの最重要モデル”が話題に
トヨタ「“新型”RAV4」発売に反響“殺到”!? 「トヨタ恐るべし…」「高級車じゃねーか」 約7年ぶり全面刷新で「450万円スタート」 大幅進化した“SUVの最重要モデル”が話題に
くるまのニュース
中国の巡視船に“放水砲攻撃”される漁船 3人けが フィリピンが動画公開し猛抗議「この映像を家族と一緒に見てほしい」
中国の巡視船に“放水砲攻撃”される漁船 3人けが フィリピンが動画公開し猛抗議「この映像を家族と一緒に見てほしい」
乗りものニュース
【マイクロモビリティ研究所】自転車型で制度認定第1号! 特定小型原付「カーメイト e-FREE 01」試乗インプレッション(動画あり)
【マイクロモビリティ研究所】自転車型で制度認定第1号! 特定小型原付「カーメイト e-FREE 01」試乗インプレッション(動画あり)
バイクブロス
メルセデス・ベンツGLSのベースモデル「GLS 450d 4MATIC」がブラックのアクセントパーツを纏ったうえで名称を「GLS 450d 4MATICナイトエディション」に変更
メルセデス・ベンツGLSのベースモデル「GLS 450d 4MATIC」がブラックのアクセントパーツを纏ったうえで名称を「GLS 450d 4MATICナイトエディション」に変更
カー・アンド・ドライバー
VWのSUV『ティグアン』と『タイロン』、ハンコックタイヤ「ベンタス evo SUV」純正装着
VWのSUV『ティグアン』と『タイロン』、ハンコックタイヤ「ベンタス evo SUV」純正装着
レスポンス
千住金属工業、xEV向け新接合技術を披露へ…オートモーティブワールド2026
千住金属工業、xEV向け新接合技術を披露へ…オートモーティブワールド2026
レスポンス
ベトナムEVビンファスト、東南アジア初の工場をインドネシアに開所…年産35万台めざす
ベトナムEVビンファスト、東南アジア初の工場をインドネシアに開所…年産35万台めざす
レスポンス
彼の愛した緑とジャケットを纏う。911 GT3に伝説の美学を封じ込めた「90 F.A.ポルシェ」の全貌
彼の愛した緑とジャケットを纏う。911 GT3に伝説の美学を封じ込めた「90 F.A.ポルシェ」の全貌
LEVOLANT
日産 エルグランドだけじゃない!! パトロールも印象的すぎた日産のジャパンモビリティショー2025
日産 エルグランドだけじゃない!! パトロールも印象的すぎた日産のジャパンモビリティショー2025
ベストカーWeb
北海道で唯一の「三セク鉄道の代替バス」へと変わった旧・ふるさと銀河線!! 鉄道時代のプロファイルが濃厚すぎる!!
北海道で唯一の「三セク鉄道の代替バス」へと変わった旧・ふるさと銀河線!! 鉄道時代のプロファイルが濃厚すぎる!!
ベストカーWeb
デビュー30周年! ホンダの「“3列・7人乗り”ミニバン」に注目! 全長4.8m級「見晴らし良好ボディ」×「ほっこりシート」で快適度もアップ!? 新たな「ステップワゴン“30周年特別仕様車”」2モデルを設定
デビュー30周年! ホンダの「“3列・7人乗り”ミニバン」に注目! 全長4.8m級「見晴らし良好ボディ」×「ほっこりシート」で快適度もアップ!? 新たな「ステップワゴン“30周年特別仕様車”」2モデルを設定
くるまのニュース
ホンダ ステップワゴンに、初代誕生から30周年を記念した特別モデル登場!──GQ新着カー
ホンダ ステップワゴンに、初代誕生から30周年を記念した特別モデル登場!──GQ新着カー
GQ JAPAN

みんなのコメント

22件
  • oum********
    平成の初めの頃
    バイクで北海道ツーリングに行きました
    今でもあるのかな?
    ライダーハウスに泊まって北海道回りましたが
    老いも若きも男女ともセロー多かったなぁ
    いまだに乗れてませんが
    初期の緑と黄色のアクセントが効いたデザインが
    好きです
  • tor********
    >セローは登場するや否や大ヒット。
    それは無かったと思うw 当時サスペンションのストローク合戦が始まり、いかにモトクロッサー/エンデューロマシンに近いかがセールスポイントで、市場もその手のバイクを求めていた。ただ当時は女性ライダーが増加し始めた頃で、オフ車に乗りたいけれど体格的にキツイ女性がこぞって乗り始めた。男連中は”セローなんてどこか頼り無さげ”とあまり興味を示さなかった(廃道好きの一部のハードユーザーを除く)。だからマイナーチェンジではマウンテントレールよりも、気軽に乗れるトレールバイクとしてのモディファイが進みちょっとずつだが重量を増加していった。
    実際はセローが目指したコンセプトよりも、ちょっと違った路線に活路を見出した感じ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

146 . 3万円 190 . 3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19 . 9万円 198 . 0万円

中古車を検索
トヨタ タンクの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

146 . 3万円 190 . 3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19 . 9万円 198 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村