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2代目ポルシェ パナメーラ、プラグインハイブリッドを採用して新たな境地に到達【Playback GENROQ 2017】

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2代目ポルシェ パナメーラ、プラグインハイブリッドを採用して新たな境地に到達【Playback GENROQ 2017】

Porsche Panamera 4 E-Hybrid

ポルシェ パナメーラ 4 E-ハイブリッド

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二代目の真意

新プラットフォームのMSBを採用し、走りを一新した二代目パナメーラ。早くもプラグインハイブリッドモデルを登場させ、電動化を推し進めている。バッテリー容量の拡大、システム出力の向上など大幅にその魅力を高めた。恐ろしいほど大きい電動化のステップ幅。その狙いはどこにあるのか?

「先代の重厚感はいい意味でなりを潜め、弾むような乗り心地で滑らかに加速する」

ハイブリッド・モデルを続々とリリースするドイツ車メーカーは少なくないが、自動車の電動化で地球環境の改善に真剣に取り組んでいるスポーツカーメーカーは、今のところポルシェだけだ。なにしろ、これまでにパナメーラとカイエンにハイブリッドとPHEVを投入したほか、フラッグシップの918スパイダーもPHEVを採用。二代目に生まれ変わったパナメーラにもパナメーラ4 E-ハイブリッドという名のPHEVモデルを早速発売したのだから、その意気込みは本物だ。

ポルシェにとって初の“二代目PHEV”となるパナメーラ4 E-ハイブリッドは大きな進化を遂げている。モーターの最高出力を95psから136psへ、バッテリー容量を9.4kWhから14.1kWhへと大幅に強化。この結果、システム出力は416psから462psに、EV航続距離は33.2kmから50kmに改善され、パフォーマンスと環境性能がより高い次元で両立された。実にポルシェらしいアプローチといえる。

「電動パワステの出力を上げた恩恵かステアリングを切り込んだときの印象も軽快感が強い」

ケープタウンの公道を舞台とする国際試乗会では、その新しいドライビング・フィールを堪能できた。サスペンションがストロークする際、ボディが下へ下へと沈み込んでいくような重厚感を伝える先代と異なり、新型は軽く弾むような乗り心地を示す。といってもボディが際限なく上下動を繰り返すわけではなく、ロードホールディングは良好。おかげで軽快で爽やかというか、実に新鮮なフィーリングを満喫できた。

ステアリングを切り込んだときの印象も軽快感が強い。鼻先が自ら進んで新しい進路を目指していくような感覚が味わえる。これにはモーター出力をより増強した電動パワーステアリングも影響しているのだろう。また、先代パナメーラPHEVでほとんど唯一の弱点ともいえたデッドなパワステの印象は大きく改善されており、フロントタイヤがグリップしている様子をしっかりと確認しながらコーナリングを楽しめる。

「ドライビングフィールの変革に大きく役立っているのが新アーキテクチャー、MSB」

ところで、こういったドライビングフィールの変革に大きく役立っているのがフォルクスワーゲングループの新アーキテクチャー、MSBである。二代目パナメーラがMSBを採用する初のモデルであることは既報の通り。ポルシェが中心となって開発したこの新アーキテクチャーは同じグループのベントレーも採用する見通しだが、アウディは間もなくデビューする次世代A8に最新A4と同じMLBIIを用いるなど、ポルシェとは異なった方針を採る。なぜか? ポルシェでパナメーラの開発を指揮するギャルノット・ドルナー副社長が語る。「MSBの特徴は、エンジンの搭載位置がMLBIIより200mm後方であることと、ギヤボックスにデュアルクラッチ式を用いることの2点です。アウディがMSBではなくMLBIIを選んだのは主に戦略上の理由からです」

アウディが新型A8にMSBを採用しない理由、それはエンジンの搭載位置が後ろ過ぎて前輪駆動に適さないからではないか? 本国仕様の現行A8には数は少ないながらも前輪駆動モデルが用意されているが、エンジンの搭載位置がフロントアクスルから遠く後方に離れていては駆動輪に十分な荷重がかからず、トラクション不足に陥ることが予想される。そうでなくともキャビン内にギヤボックスが大きく食い込むなど、MSBには純然たるサルーン向きでない点がいくつかある。またギヤボックスがDCTに限定されることも、トレーラーの牽引には不向きなのでA8には受け入れ難いところだろう。アウディがMSBを“嫌った”理由は、こういった部分にあったと想像される。

「新型パナメーラPHEVがスポーツ性能にもこだわった片鱗がPDKにも見て取れる」

裏を返せば、これらの点こそMSBの長所とポルシェは考えたのだろう。エンジンを後ろ寄りに搭載すれば前後の重量配分を改善できる。しかもポルシェといえば後輪駆動、もしくは4輪駆動で、前輪駆動を投入するとは思えないから、後ろ寄りのエンジン搭載位置はメリットこそあれデメリットにはならない。ギヤボックスがDCT=PDKとなることもスポーツ性能を優先するポルシェにとっては好ましいはずだ。

ところで、先代パナメーラPHEVは他のパナメーラと違ってトルコン式ATを採用していたが、これはアウディからパワートレイン一式を譲り受けた影響とされる。しかし、新型のギヤボックスはPDK。ということは、新しいパナメーラPHEVのパワートレインはポルシェの独自開発との推測も成り立つ。事実、新型パナメーラのPHEV開発に携わったダニエル・セムラーは918のコンセプトをまとめあげた人物で、新たに採用された回生効率の高いブレーキシステムは918にも通ずるコンセプト。新型パナメーラPHEVがスポーツ性能にもこだわった片鱗は、この辺からも見て取れる。

もっとも、ブレーキが熟成不足なことは、新型パナメーラPHEV最大の弱点といえるかもしれない。なにしろ、ブレーキを一定踏力で踏み込んでいても、ペダルがまるで脈動しているかのように周期的に足を押し返してくることがあるのだ。この点をセムラーに指摘すると「その現象は社内でも確認しています。ただし、ソフトウェアの修正で改善できると思われるので、量産開始までには解消できるはずです」との見通しを語ってくれた。改良を期待したい。

「パワートレインは静かで力強く好印象」

それを除けばパワートレインは静かで力強く、好印象。PDKの仕上がりも良好でシフトショックはほとんど感じられない。公称50kmとされるEV航続距離は、ケープタウン郊外で試した範囲でいえば35kmに到達しそうな勢いだった。以前、現行型で実測したときには25kmほどだったから、40%ほど伸びた計算だ。

0-100km/h加速は4.6-4.7秒と1秒近くも速くなり、EV航続距離が伸びてヨーロッパ式の燃費は24%も向上した新型パナメーラPHEV。ちなみに価格は標準ボディが1407万円と従来に比べて100万円近くも値下げされたほか、ホイールベースを150mm延長したエグゼクティブも1529万円という驚きの価格で登場する。ちなみにエグゼクティブはスタイリング上のバランスから全高を5mm上げているが、ロングボディ自体が空力面で有利なため、最高速度も燃費も標準ボディとまったく変わらないという。これもひとつのポルシェ・マジックだろう。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/PORSCHE AG

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ パナメーラ4 E-ハイブリッド〈エグゼクティブ〉

ボディサイズ:全長5049 全幅1937 全高1423〈5199 1937 1428〉mm
ホイールベース:2950〈3100〉mm
トレッド:前1671 後1651mm
車両重量:2170〈2250〉kg

エンジン:V型6気筒ツインターボ
ボア×ストローク:84.5×86mm
圧縮比:10.5
総排気量:2894cc
エンジン最高出力:243kW(330ps)/5250-6500rpm
エンジン最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1750-5000rpm

モーター:永久励磁型同期モーター(外部ローター装備)
モーター最高出力:100kW(136ps)/2800rpm
モーター最大トルク:400Nm(40.8kgm)/100-2300rpm

バッテリー:リチウムイオン
容量:14kWh
定格電圧:382V

システム最高出力:340kW(462ps)/6000rpm
システム最大トルク:700Nm(71.4kgm)/1100-4500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ローター径:前390×38 後365×28mm
タイヤサイズ(リム幅):前265/45ZR19(9J) 後295/40ZR19(10.5J)
最高速度:278km/h(電気モーター 最高速度:140km/h)
0-100km/h加速:4.6〈4.7〉秒(電気モーター 0→60km/h加速:5.7〈5.9〉秒)
CO2排出量:56g/km(EU)
燃料消費量:2.5L/100km(EU)
一充電走行距離:25-51km(EU)

※GENROQ 2017年 4月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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