■ユニークな機構を採用したクルマたち
自動車が誕生して100年以上が経過し、これまで数多くのユニークなデザインのモデルが販売されました。
一方で、技術が発達すると、それまでの常識にとらわれない複雑なメカニズムを搭載するクルマも現れます。
そんな、ユニークなギミックを採用したクルマを3車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「CR-Xデルソル」
1992年に発売された3代目「CR-X」にあたる「CR-Xデルソル(delSol)」は、一般的に「タルガトップ」と呼ばれる、天井部分のみが開くオープン2シーターモデルです。
ルーフの機構は2種類あり、ひとつは手動の脱着式で、もうひとつが電動の「トランストップ」。トランストップは屋根部分がトランクに格納されるのですが、そのギミックがほかにはないユニークなものでした。
具体的には、まずトランクリッドが垂直に上昇し、リッドの左右からアームが伸びて屋根の後端が少し持ち上がると、アームが屋根のなかに入っていき、そのまま屋根を保持した状態でリッドに格納するというものです。
当時は、かなり複雑な機構が開発されたということで大いに話題となりましたが、電動オープンルーフによる車両重量増により、2代目までのライトウエイトスポーツというイメージは、薄れてしまいました。
CR-Xは走りを重視したユーザーから人気のモデルでしたが、3代目は後継車とは思えないほどの変わりようだったため、従来のCR-Xユーザーから敬遠され、販売は振るわず、この代をもってCR-Xは終了となります。
デルソルはスペイン語で「太陽」を意味し、スイッチ操作ひとつで手軽に陽光を浴びてのオープンエアドライブを楽しめるFFスポーツカーを目指したのですが、その目論見はうまくいかなかったようです。
●ルノー「ウインド」
一見すると、ずんぐりとしたオープン2シーターモデルのルノー「ウインド」ですが、ユニークなのは、デルソルと同様に屋根の格納方法です。
現在は、パネル式の屋根を持つオープンカーは珍しくなく、屋根が折り畳まれつつトランクルームに格納される構造が一般的で、国産車ではダイハツ「コペン」やマツダ「ロードスターRF」に採用されています。
しかし、ウインドはそれとは違い、トランクリッド後方に向かって開くと、屋根が後端を軸に180度近く回転して格納されるというものでした。
この機構を採用した背景には、構造的には単純なので安く作ることができ、信頼性も高いというメリットがあったと思われます。
ウインドは、日本でも2011年に正規輸入され、2012年にはルノーのチューナーだった「ゴルディーニ」の名を使った特別仕様もラインナップされました。
ベースがコンパクトカーの「トゥインゴ」だったので、サイズ感もかわいい印象でしたが、左ハンドルの5速MTのみということもあり、販売的には成功していません。
■常識を覆したドアを採用したモデルとは!?
●BMW「Z1」
日本でバブル景気絶頂期だった1989年に、BMWから奇抜なデザインの「Z1」が発売されました。
一見、ただのオープン2シーターのスポーツカーですが、この1台のためだけに、さまざまなアイデアが盛り込まれています。
屋根はオーソドックスな幌タイプですが、ドアは開けるのではなく、電動で下方向に格納されるというギミックで、サイドシル部分が高くなっており、そのスペースにドアが完全に埋没するカタチです。
さらに、スチール製のシャシにプラスチック製のボディパネル装着する構造の車体となっていて、着せ替え(色替え)ができるというのも斬新でした。
日本ではBMWから正規に販売されませんでしたが、とにかく景気が良かったという背景もあり、並行輸入やアルピナがチューニングしたモデルが正規輸入されています。
希少なクルマですが、いまも中古車として流通しているので、興味がある人は検索してみてください。なお、30年前のクルマなので、ドアのギミックにはトラブルが出やすいようです。
※ ※ ※
今回、紹介したユニークなギミックは、広まることはほとんどなく、いまは消えてしまっています。
数少ない例では、フェラーリがウインドに近い機構を採用していますが、もっと複雑なものとなっています。
近年、このようなユニークなギミックはほとんど見られなくなってしまったこともあり、当時の技術者魂には感服するしかありません。
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