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一見インプ 中身は別物 プロドライブP25に試乗 カーボンボディに456psのフラット4

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一見インプ 中身は別物 プロドライブP25に試乗 カーボンボディに456psのフラット4

インプレッサWRC97の誕生25周年を記念

このブルーのクーペは、改造された古いスバル・インプレッサではない。レストモッド・モデルとも呼べないだろう。ぱっと見は、1998年に424台が生産され、英国には16台しか届けられなかった、インプレッサ 22Bと瓜ふたつだが。

【画像】カーボンボディに456psのフラット4 プロドライブP25 ラリー・レストモッドが熱い 全149枚

確かに、膨らんだフェンダーラインやトランクリッド上のウイング、ブルーの塗装など、見た目の特徴はほぼ同じ。しかし、その内側を確かめると、共通する点は殆どない。

プロドライブP25は、事実上、新しいクルマだと考えていいだろう。ベースのボディシェルは、2ドアのインプレッサWRX STiのものを利用しているが、ボディパネルも2.5Lエンジンも、22Bとは基本的に異なる。

P25は、1997年の世界ラリー選手権(WRC)でマニュファクチャラーズ・タイトルを獲得した、インプレッサWRC97の誕生25周年を記念して設計された。WRX STiをベースにした、この伝説的ラリーマシンの開発へ携わったのが、プロドライブだった。

ボディパネルのデザインを手掛けたのは、オリジナルと同じくピーター・スティーブンス氏。だがP25では、ほぼすべてカーボンファイバーで成形されている。

AUTOCARでは、プロドライブ会長のデビッド・リチャーズ氏と技術責任者のデビッド・ラップワース氏とともに、既に1度試乗させていただいている。だが今回は、サーキットも交えてその能力へ存分に迫る機会をいただいた。

スバルのEJ25型を徹底チューニング

エンジンは、ひと世代前に当たるスバルのEJ25型ユニット、2.5L水平対向4気筒がベース。独自開発の鍛造ピストンにカム、ポート研磨されたシリンダーヘッド、ハイフロー・インジェクターなどが組まれ、チューニングには抜かりない。

電気系統のワイヤーハーネスや、冷却系統も専用品だという。エグゾーストシステムはアクラポビッチ社製だが、これもP25のために特注されている。

トランスミッションは、プロドライブが設計した6速シーケンシャル・マニュアル。大きなシフトパドルも備わる。電子制御されるセンターデフと、フロントとリアの機械式リミテッドスリップ・デフを介して、四輪が駆動される。

サスペンションも独自の調整式。軽量なアーム類が組まれ、ダンパーとスプリングはビルシュタイン社製だ。

ドライバーズシートはフロアへ近づけてマウントされ、視線は低い。窓の外の景色はB22とほぼ同じでも、ダッシュボードの眺めは違う。外側の形状は共通だが、メーターパネルには液晶モニターが収まり、表面はスウェードで覆われ、高級感が漂う。

ステアリングホイールは、無駄なものが一切ない3スポーク。これも、握りやすいスウェード巻きだ。

センターコンソール上の小さなスイッチでイグニッションをオンにし、スターターを回すと、EJ25型ボクサーユニットが目覚める。バババッという勇ましいサウンドを放ちながら、落ち着いたアイドリングが始まる。

最高出力456ps アンチラグ・システム付き

クラッチは電子制御で繋ぎやすく、まったく手間いらず。1度発進すれば、パドルを弾くだけでシフトアップが済む。基本的に左足を動かす必要はない。

ただし、ストレートカット・ギアを最大限に活かすには、ドライバーが歩み寄る必要はある。常にギアの唸るようなノイズが響いてくる。シフトアップ時はアクセルペダルを少し戻さないと、うまく噛み合わず盛大なカジリ音とともに拒否される。

慣れてしまえば、クロスレシオが小気味いい。ほぼシームレスに、次々にシフトアップしていける。ノイジーでパワフルなフラット4と、素晴らしい相性だとわかる。

複数のドライブモードが用意され、デフォルトはロード・モード。最高出力は400ps程度に制限されつつ、不足なく鋭いレスポンスを楽しめる。スポーツとスポーツプラス・モードでは、456psのすべてが開放される。

もっと刺激が欲しい場合は、スポーツプラス・モードでアンチラグ・システムを機能させられる。シフトチェンジ時にガソリンをエグゾーストへ噴射し、ターボの勢いを保てる。マフラーカッターから、破裂音と炎も吹き出す。利用環境は選ぶべきだが。

モードに関わらず、P25は眼を見張るほど速い。高度な四輪駆動システムの効果で、1馬力も無駄にされることなく、確実に路面へ展開される。WRCマシンそのままの、エキサイティングなサウンドとともに。その猛烈ぶりに、笑いが止まらない。

ラリーステージの渦中のような速さと臨場感

油断すると、慌てるほど速度上昇は急激。高まる鼓動を抑えるように、ブレーキペダルを蹴飛ばす。アシストの備わらないAPレーシング社製ブレーキは、望んだ制動力を生み出すために、相応のペダルの踏力が求められる。

それでも、これも慣れてしまえば不安はない。身体が疲れ果てるまで、確実にパワーとスピードを受け止めてくれる。

カーブへ突っ込めば、P25の真価を味わえる。グリップは揺るぎなく、トラクションは盛大。ステアリングホイールは適度に軽く、クイックで情報量が豊か。ダンパーは速度域が上がるほど、しなやかさを増していく。

軽く濡れた、カーブが連続する路面を、正確で強力に駆け抜ける。ステアリングホイールを必要なだけ切り、出口目掛けてパワーを加えていけばいい。速さと臨場感は半端ない。まさに、ラリーステージの渦中にいるかのようだ。

それでも、P25のフルパワーを引き出すには、サーキットを走らせる必要がある。ドライビング・テクニックも、サーキットへ合わせる必要がある。

高度なマシンとして、思い切りハードに扱うのが正解だろう。滑らかな操縦系を活用すれば、限界領域での漸進的な挙動へ迫れる。

コーナーでは、一貫してアンダーステアが強い様子。ラリードライバーのように、マシンと格闘することになる。勇気を振り絞り、アクセルペダルとブレーキペダルを正確に傾けなければならない。

比類ない運転体験を味わえる孤高のマシン

タイトコーナーへの侵入時は、ギリギリまでブレーキングを遅らせ、強めに減速。フロントへ荷重を移し、旋回させつつ、ブレーキを引きずりながら頂点へ引き寄せる。出口へ向けて姿勢が整った瞬間、アクセルペダルを踏み込む。

高性能な3基のデフが威力を発揮し、斜め前方にドリフトしながら脱出加速へ移行する。流れ過ぎたら、カウンターステアを少し当てればいい。筆者の技術は、WRCドライバーの水準へ遥かに及ばない。それでも、彼らの体験に近づくことはできたと思う。

その達成感には中毒性がある。時間の経過とともに、徐々にレベルアップしていくのがわかる。全身がクタクタになっても、それ以上に満たされた気持ちになれる。

こんな経験を我がものとするには、相応の費用も求められる。実に55万2000ポンド(約9991万円)という英国価格が、P25には付けられている。

非の打ち所のないバックグラウンド・ストーリーと、希少性を考えれば、理解できる数字ではあるだろう。望ましいボディサイズに、圧倒的なスピードとパワー。頭痛薬が必要なほどの、ノイズと振動。比類ない運転体験を味わえる、孤高のマシンだ。

プロドライブP25(英国仕様)のスペック

英国価格:55万2000ポンド(約9660万円)
全長:4365mm(インプレッサ 22B STi)
全幅:1770mm(インプレッサ 22B STi)
全高:1390mm(インプレッサ 22B STi)
最高速度:241km/h
0-100km/h加速:3.0秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1200kg(予想)
パワートレイン:水平対向4気筒2457cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:456ps
最大トルク:60.9kg-m
ギアボックス:6速シーケンシャル・マニュアル(四輪駆動)

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みんなのコメント

12件
  • 良いねぇ!
    高級スポーツ車より心に刺さるねぇ!
    でも、まさかミスファイアリングシステムを搭載しているとはねぇ。びっくりだ!!
  • 1億でも俊速で完売なんだよな
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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