2024年のF1は、史上最多全24戦でシリーズが組まれている。年間のグランプリ開催数がこれだけ増えると、合理的なカレンダーを整えるのは非常に複雑……まるで難しいパズルのようになっている。
F1は近年人気が急上昇しており、グランプリ開催を求める場所が尽きることはない。近年ではマイアミやカタール、ラスベガスなどが加わり、2026年からはマドリードが加わることになっている。それ以外にも韓国やタイ、大阪、ルワンダといった、新たにグランプリ開催を目指す国や地域も出てきている。
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理論上では25戦まで増やすこともできるが、現在の飽和状況やチームへの負担などを考え、結局24戦というところに落ち着いた。しかしそれをうまく組み合わせるのは、実に大変な作業だ。
2022年には22戦を開催したF1。前年までは新型コロナウイルスのパンデミックにより、複数のグランプリが開催できなかった。そのため、オーストラリアやカナダ、日本、シンガポールなどのグランプリが復活。これに対応するため、アゼルバイジャンとカナダという過酷な連戦や、シーズン終盤には8週間で6戦を開催しなければならなかった。一方でオーストラリアやマイアミは、単独でのフライアウェイ戦となった。
2023年と2024年の開催カレンダーにも課題があった。単独でのフライアウェイ戦が多数あったため、F1チームに帯同するスタッフたちのマイルは貯まりに貯まっただろう。一方で3週連続での開催もあり、彼らは極限まで追い込まれたはずだ。
■F1が組まなければならなかった難しいパズル
年間24戦という開催数は、今のF1にとっては譲れないモノである。しかもF1は2030年までにCO2の排出量を削減する計画を掲げており、輸送の面でもより現実的なスケジュールに再編する必要がある。このためには、より近い開催地のレースを連続して行ない、人材や機材の輸送距離を減らすことが必要だ。また、航空機による輸送に頼るのではなく、海路輸送できるようにすることも重要だ。2024年の場合は、日本GPが春開催に、アゼルバイジャンGPが秋開催に変更され、この目標に向けた歩みが一歩進められることになった。
しかしグランプリ開催地との契約により、カレンダー全体を一気に再編成することはできない。また気候や宗教的な祝日など、F1が考慮しなければならない要素は膨大なのだ。しかしこのことは、外から見ると過小評価されていることが大きい。
グランプリの契約更新は、カレンダーをより適切にするための絶好のチャンスだ。F1のレースプロモーション・ディレクターであるルイーズ・ヤングは、既存および将来のレースプロモーターとの契約交渉を担当している。その際に、F1の目標達成に向けた開催時期等の交渉も行なうことになるわけだ。
「理想的なシナリオは、レース契約で最大限の柔軟性を確保するように努めることです。実際的なことも考慮する必要があります」
ヤング氏はそうmotorsport.comに対して語った。
「中東やその他の地域では、1年で最も暑い時期を避けるなど、気象条件について考える必要があります。宗教上の祝日、国民の祝日、政治のサイクルなど、評価に影響する要素はたくさんあるんです」
「カレンダーを設定する上では、多くの競合する要求があります。特定の日付を中心にして、必ずしも日程の公平性を維持したりブランドを構築できるとは限らないという認識が、プロモーターの間で高まっていると思います」
「その一例として、8月下旬から7月に変更したベルギーGPが挙げられます。パートナーの中には、年間を通じてレースを開催しているサーキットでも、F1が年間の主要イベントである場合などは、様々な時期に我々を受け入れてくれるところもあるんです」
F1が今年4月に発表した2025年の開催カレンダーには、F1が目指すモノの姿が表れている。人員が大陸間を頻繁に行き来する必要がないようにし、貨物もより効率的に、より良い流れで輸送できるようにしている。
特に日本GPは、前述の通り中国GPとペアにできるよう、2024年から開催時期を従来の秋から4月へと変更した。これには、多大な努力が必要だったようだ。
「7ヵ月の間に2回もイベントを開催することは、日本にとっては大きな要求だったし、大きな変化でした」
そうヤング氏は指摘する。
「これは、過去2年の間に我々が行なった重要な変更のひとつでした。この波及効果として、アゼルバイジャンとシンガポールを組み合わせることができたんです。これにより、ヨーロッパからの移動の流れを作れました。これらの変更により、輸送距離をかなり節約することができました」
まだまだ全てが解決されているわけではない。F1は今、マイアミGPとカナダGPをペアにすることを目指している。現在はこれらはそれぞれが独立したイベントとなっているが、ヤング氏はこのふたつのグランプリを組み合わせることが「夢」だと語る。
■3週連続開催はもはや避けられないのか?
レースを連続して開催することは、移動や輸送という面での負荷を減らす上では確かにメリットだろう。しかし最近では、3週連続開催も定着しつつある。以前は3週連続での開催は避けられてきたが、新型コロナのパンデミック中に緊急措置として3週連続開催が実現した後、今では普通のことになりつつある。
今シーズンも、オースティン、メキシコ、サンパウロの3週連続開催があった後、ラスベガス、カタール、アブダビとふたたび3週連続開催してシーズンが閉幕することになる。
2025年はこれらの3週連続開催は解消されるが、代わりにシーズン前半に日本、バーレーン、サウジアラビアが3連戦として組まれている。
年間24戦を開催するにあたって、3週連続での開催はある程度仕方のないことなのだろうか?
「パンデミック前のカレンダーの規模と比較すると、イベント数は増えているから、混雑してしまうのは当然です」
そうヤング氏は説明する。
「8月にサマーブレイクを確保するなど、チームとの約束もあります。1月にはレースはできないし、シーズンが終わってから次のシーズンが始まるまでに数週間は空けなければいけません。だからそれらを全て考えると、使うことができる週末はかなり限られるということになります」
「(F1のCEOである)ステファノ・ドメニカリと(リバティメディアCEOの)グレッグ・マフェイが、現時点では24戦にすると言っているのを、皆さん読んだことがあると思います。その理由のひとつは、チームの規模に関して、より大きくなってしまうと持続可能な限界に達してしまうと分かっているからです」
「現時点では、F1新興地域からの開催を求める声に対して、レースとファンという両面で、バランスが取れていると考えています」
リバティメディアがF1を所有して以来、彼らはその質を向上させようと努めてきた。この取り組みには反対する声もあるものの、リバティメディアはより広い層にアピールするために、全てのイベント、全ての週末を、エンターテインメント満載のフェスティバルにしたいと考えている。
そのためには、各レースの主催者からの大きな協力が必要不可欠だった。特に伝統を頼りにそのポジションを維持してきたヨーロッパの伝統的なレースは、最近カレンダーに加わったいくつかの派手なイベントに追いつく必要があったのだ。
「(F1の前CEOである)チェイス・キャリーは、いつもこう言っていました。『潮が満ちれば、全ての船が浮かぶ』(経済が改善すれば全ての関係者に利益がもたらされるという意味)と言っていたんです」
そう彼女は言う。
「我々のプロモーターたちは、それを理解してくれています。このスポーツは今本当に好調なので、彼らもうまくやっています。そして、誰もがもっと投資することができます。より大きなスペクタクルを作り上げれば、もっと多くの人が戻ってきたいと思うようになるはずです」
「シンガポールとシルバーストンは、レース以外のアクションを組み込むことができた、素晴らしい例です。サーキットでのプログラムも充実していますが、夜にはコンサートも見ることができます。このことは、プロモーターとの会話の中で最も難しいことではありません。プロモーターは、その市場における最高のマーケティング担当者なんです」
■F1が新しいイベントに求めるもの
前述の通り、F1は現在、タイや韓国、ルワンダなどと新たな開催契約を結ぶことについて交渉を行っている。このことは、F1がヨーロッパの伝統的なサーキットを離れ、政府のサポートがある大規模なイベントを増やそうとしているのではないかという懸念の元となっている。しかしヤングは、こういった懸念を払拭したいと考えている。
「2025年の開催カレンダーを発表した時、伝統的なイベントと新しいイベントのバランスが取れていると言いました。これはファンが何を大切にしているか、F1の革新は何かという我々の考えが本当に反映されています。伝統的なサーキットのいくつかには、常に居場所があると考えています」
しかしイタリアが今のようにモンツァとイモラの2箇所でレースを開催し続けるのは不可能だろう。また、オランダとベルギーを隔年開催にするという話も、根強く残っている。さらにバルセロナ(カタルニア・サーキット)も、マドリードでの開催がスタートした後も開催権を維持し続けるのは、簡単ではないはずだ。
「今年、ヨーロッパでのレースのいくつかは、契約が更新されます。隔年開催のシステムが理に適っている状況もあるため、両者の間には緊張関係があるんです」
ヤング氏はそう認める。
「ただし契約更新の戦略には、様々な要素が関係します。サーキットは、コース上でのコンテンツや伝統的な要素を活かしたレースという点で、どんな成果を生み出しているのでしょうか?」
「次に、商業的な取り決めを検討します。そしてプロモーターはファンにどんなサービスを提供しているか、主要な指標を満たしているかどうかということも検討するんです。収容能力が増加したが、それでより広いファン層に対応できるかということもです」
「新しいグランプリを追加するというプレッシャーや要望を考えると、パートナーを失うことなく枠を空ける方法のひとつは、ふたつ以上のイベントを隔年開催のモデルに移行することです。それは、プロモーターが誰であるかによって、ケース・バイ・ケースで変わります。サーキットに関連したビジネスを年間を通じて運営しているのか、それともF1だけのプロモートなのかということによっても異なるんです」
「後者の場合なら、年間のビジネスやスタッフを維持するのが難しくなる可能性があるでしょう。したがって、隔年開催のモデルが理に適っていて、それを存続させることができるかどうかは、かなり個別の話し合いになります」
ヤング氏と彼女のチームは、契約の更新と新規契約のための交渉を続けている。この熾烈な争いを勝ち抜く上では、持続可能性が非常に重要な要素になるという。
「持続可能性は、非常に重要な部分を占めています。それはつまり、プロモーターがイベントや施設をどう運営するかということです。施設の電力の供給方法、サーキット内で食べ物や飲み物を提供する際のカップや容器の運用など……そういう部分は、今後非常に大きな問題となります」
「もうひとつは接続性という側面です。それが実現すれば、F1ともっと深く繋がることができるようになるかもしれません。それが実現すれば、観客席に座って携帯電話などで中継も視聴し、コース上を走るマシンを実際に見ながら、実況や解説を聞くことができるかもしれません。現時点では、ほとんどのサーキットで観客の全てが同時にストリーミングに接続することなどできません。接続性という問題は、将来のファンの体験を形作る上で非常に重要になると考えています」
「3つ目のポイントは、人々がイベントでどういう楽しい時間を過ごせるかっという、非常に基本的なことに戻ります。つまりアクセス、交通、食べ物、日陰、水など、野外イベントで楽しい1日を過ごすために必要な全ての重要な要素です」
2024年も、そして2025年も、開催カレンダーはまだ完璧ではないことは明らかだ。しかし8ヵ月で24戦を詰め込むためには、完璧ということはありえないだろう。
「毎年、どんな小さな変更ができるのかを検討しています。でも、コミュニティが満場一致で完璧だと言えるモノはおそらくないでしょう」
ヤング氏はそう認める。
「我々は引き続き、段階的に改善していけるよう検討を進めていきます」
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