元F1ドライバーのシャルル・ピックが名門DAMSを買収。2022年はFIA F2で岩佐歩夢がドライブ

　2012年にマルシャ、翌2013年にケータハムからF1に参戦し、2014年はロータスF1のテストドライバーを務めた経験を持つシャルル・ピックが、DAMSレーシングチームの全権を取得することが発表された。

　DAMSは創業者でオーナーのジャン=ポール・ドリオが2019年に亡くなって以来、息子のオリヴィエとグレゴリーが共同チームオーナーとしてチーム運営を行なってきた。

　現在フォーミュラEに日産e.damsチームとして参戦し、F1直下のFIA F2にも参戦しているDAMS。今後ピックがオーナーに就任しても、ドライバーラインナップやチームスタッフに変動はなく、マネージングディレクターのフランソワ・シカールとチーフエンジニアのレミ・デコルザンのもとで変わらずチーム運営が続けられる。

　DAMSは、2022年のF2にロイ・ニッサニーとルーキーの岩佐歩夢をラインナップ。フォーミュラEでは、セバスチャン・ブエミとマキシミリアン・ギュンターをラインナップし、先週末のメキシコシティE-Prixではダブルポイントを獲得している。

　31歳のピックは、一族を通じてDAMSとは深い繋がりがある。彼の祖父にあたるシャルル=ピエール・アンドレは、元DAMSドライバーのエリック・ベルナールとオリビエ・パニスのふたりを、キャリアを通してサポート。ピックの弟であるアルトゥール・ピックは、2012年にDAMSからフォーミュラ・ルノー3.5から参戦している。

「私は今でもモータースポーツにとても情熱的であり、これは長期的なプロジェクトになる」と2015年からドライバーからマネジメントに“転職”したピックは語る。

「日頃のチーム管理を続けてくれるフランソワ・シカールとレミ・デコルザンと仕事をするのが楽しみだし、彼らには全幅の信頼を寄せている」

「私はDAMSがコース内外でも成功できると確信しているし、フランソワとレミ、そしてその他のDAMSのチームメンバーと共に何が達成できるのかを見るのが待ち遠しい」

「DAMSの物語を続けるため、この素晴らしい機会を与えてくれたオリビエとグレゴリーには感謝を伝えたい」

　また、これまでチームを牽引してきたドリオ兄弟は、ピックによるアプローチ以前にチームが売りに出されたことはなかったものの、父ジャン=ポール・ドリオの死後もチームを監督し安定性を確保できていたことから、ピックがチームを前に進めるに相応しい人物に感じたと共同声明で明らかにした。

「シャルルから連絡を受けた際、彼のアプローチやビジョンが我々の価値観やレーシングスピリットと一致することがすぐに分かった」とふたりはコメントを残した。

「シャルルはこれまで、モータースポーツの世界で多くのことを成し遂げてきた素晴らしい人材だ。彼の計画はチームを前進させ、DAMSの成功のレガシーを受け継いでくれるだろう」

「（ピックは）DAMSの成功のレガシーを継続させ、DAMSスタッフの未来を守ることができると確信している。これは決してお金の問題ではない。シャルルがいれば、DAMSは問題ない」

　DAMSは1988年に設立され、フランスはル・マンを拠点に国際フォーミュラ3000から始まり、フォーミュラEやF2（前身のGP2）、フォーミュラ・ルノー3.5、オートGPなど多くのシリーズへ参戦し、これまで15のドライバーズタイトルと16のチームタイトルを獲得してきた。

　そしてチームは、多くの若手ドライバーのキャリアにおいて重要な役割を果たしてきた。これまでに、カルロス・サインツJr.（フェラーリ）やアレクサンダー・アルボンとニコラス・ラティフィ（共にウイリアムズ）、ケビン・マグヌッセン、ジョリオン・パーマー、パニスなど32人のドライバーをF1へ導いてきた。

「チームを譲り渡すことは辛いが、DAMSのレガシーを残し、発展させるためにはこれが最善の方法だった」とドリオ兄弟は言う。

「父が亡くなってから、我々は常にチームを前身させることを目標としてきた」

「しかしシャルルのもとで、DAMSはさらに優れたモノになると確信している。特に長年我々と働いてきた情熱的で忠誠心の強い人たちがいればね」

「我々はDAMSのためにベストを尽くしたいし、シャルルはモータースポーツについて深い知識を持っている。彼の指揮の下、チームのレガシーは続き、繁栄していくことだろう」

「我々の父も、この次のステップを誇りに思うことだろう。シャルルから話を持ちかけられたとき、スタッフにとってだけでなく、ドリオ家のレガシーとしても素晴らしい機会になると思った。DAMSをフランス・モータースポーツ界の偉大な人物に引き継ぐことは、我々にとって素晴らしい名誉だ」