連載/石川真禧照のラグジュアリーカーワールド
現在のロールス・ロイスは、1998年にBMWグループの傘下に入った。それ以前の歴史は1904年に第1号車が世界デビューして以来、〝世界で最高のクルマ〟という信念が貫かれたクルマづくりを実践してきたことが挙げられる。途中、1931年にベントレーを買収するなどの動きもあったが、ベントレーは1998年にVWグループに入った。
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「レイス」は2ドアクーペだが、ロールス・ロイスの歴史の中で2ドアクーペというのは1970年代に初めて造られた。その時はスポーツクーペというより、スタイリングとゴージャスさを強調したラグジュアリークーペだった。しかし、BMWの傘下に入り、2008年登場したのは「レイス」ではなく「ファントム・クーペ」という名称だった。親会社のBMWとしてはこのクラスのクーペを売ることにあまり自信が持てなかったのかもしれない。そこでよく知られている「ファントム」を利用した。しかし「ファントム・クーペ」は、世界の走り好きの富豪に好評だった。
そこで2代目を造るにあたり、ロールス・ロイスは車名を「レイス」に改めることにした。「レイス」という車名は1930年代後半に500台ほど造られたスポーティーなクルマだった。最新の技術を導入し、走行性能の評価も高かった。その車名を新しい2ドアクーペに採用したのだ。
スタイリングはロールス・ロイスとしては初めてのファストバッククーペを採用。ルーフからテールまで段差のない、なだらかな曲線を描くスタイリングが特徴だ。リアウインドウとトランクは独立しており、ハッチゲートではない。初めて披露されたのは2013年3月のジュネーブ・ショーだったが、翌4月には東京・六本木のラフォーレミュージアム六本木で日本向けのプレス発表会が行なわれた。
「レイス」の前モデルとなる「ファントム・クーペ」は、それまでロールス・ロイスに乗ったことのない若い世代の富豪たちが顧客の半分以上を占めていたことにヒントを得て、40代を中心とした富豪に焦点を合わせて開発が進んだ。
パワーユニットはV12、6.75Lツインターボで、ロールス・ロイス史上、最もパワフルでダイナミックなモデルとして登場した。今回、試乗に引っ張り出したのは2016年にシリーズに追加された「ブラックバッジ」。先代の「ファントム・クーペ」が若い世代に注目されたという流れをいち早く察知し、商品化したモデルだ。
ロールス・ロイスは「ブラック・バッジ」は、自信みなぎる今日の若い世代。妥協せず、言い訳をしない生き方とライフスタイルを持った世代に向けて創ったモデル」と公言している。このような若き成功者たちに合わせてロールス・ロイスは大胆なほど「レイス」をチューンしてきた。
V12、6.75Lのツインターボエンジンのパワー、トルクアップはもちろん、インテリアもエクステリアもダークなイメージを採り入れている。ボンネット上に立つ「フライングレディ」はクロームメッキから高光沢ブラックに変身。女神は妖婦になった。さらにボディーの光りものもダーク調に改められた。
走りの性能向上のために、21インチホイールはコンポジット・カーボン・ファイバーと軽合金製ホイールを採用。インテリアはアルミニウム合金製系の織物とカーボンファイバーからなるコンポジット材サーフェスを備えている。ダッシュボードとエアアウトレットは物理蒸着を用いてダーク調に仕上げられており、時計の針はオレンジ色になっている。サスペンションはエアサスを全面的にリデザイン、ドライブシャフトや8速ATは新設計している。
前ヒンジの大きなドアを開けて運転席に座る。閉じる時はAピラー根元にあるスイッチを押し続けると、ガシッと力強く閉まる。632PSとノーマルよりも70Nm高められ870Nmのトルクを誇るV12、6.75Lツインターボエンジンを目覚めさせる。スターターボタンを押すが、室内には振動も音も届かない。
アクセルペダルを軽くあおると、わずかに目の前のメーターのパワーメーターの針が少し動き、エンジンがかかっていることを実感する。コラムから生えている細いシフトレバーをDに動かす。パドルレバーはない。アクセルオンで軽いうなり音が耳に入ってくる。軽めのパワーステアリングを動かし、スタート。メーターはパワーメーター、スピート、水温/燃料の3つ。エンジン回転計はない。
アクセルを踏み込んでいくと、8速ATはショックも音もなく加速する。トルクフルで速い!試しにDレンジで0→100km/h加速を計測したら5秒台前半だった。メーカーの資料によれば、1500回転から870Nmのトルクを発生するという。
サスペンションもエアサスは3段階だが、最適なモードをクルマが選んでくれる。ナビゲーションは音声制御なので運転者が操作することはほとんどない。唯一の操作は、シフトレバーに内蔵されているLOWスイッチを押すこと。すると、このジェントルな2ドアクーペはわずかにブラックな部分をのぞかせる。2500回転以上のトルクがさらに太くなり、ブレーキを踏んで減速中に8速ATはグリッピングしながらギアをおとすのだ。エンジンブレーキを聞かせると同時に、次の加速に備えるのだ。
このクルマのオーナーがどこまで利用するかわからないが、リアシートは足元も広く、左右セパレートで、頭上も身長170cmまでなら耐えられる広さ。左右のウインドウも開閉する。乗り心地も低速から高速までしなやかだ。トランクスペースも奥行き、左右幅ともに1m以上あり、高さも50cm以上なので、1週間程度の旅行なら十分に必要なものは積みこめそうだ。
ノーマルの「レイス」も上品だが、万年青年を自負する富豪には「ブラックバッジ」がお似合いだ。最新のプライスリストによれば、「レイス」が3854万円、「レイス ブラックバッジ」が4470万円となっている。
■関連情報
https://www.rolls-roycemotorcars.com/ja_JP/showroom/wraith.html
文/石川真禧照 撮影/萩原文博 動画/吉田海夕
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みんなのコメント
レイス、もともと好きでイメージも悪くなかったから余計に残念だった。
制限速度なんて当然無視だし、ロールス乗ってりゃ何でも許されますってか。
いちいち文章が自慢だらけだからキモい