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胸が苦しくなるほど「完璧」 アストン・ヴァンテージ フェラーリ・ローマ ポルシェ911 3台比較(2)

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胸が苦しくなるほど「完璧」 アストン・ヴァンテージ フェラーリ・ローマ ポルシェ911 3台比較(2)

不気味なほど落ち着いている911 ターボS

ドライバーが全力を尽くすほど、ポルシェ911 ターボSの類まれなポテンシャルが顕になる。操縦性は極めて鮮明で、挙動を予想しやすい。スタビリティ・コントロールを、完全にオフにする必要もない。

【画像】乗り手を覚醒させる傑作 アストン・ヴァンテージ フェラーリ・ローマ ポルシェ911 全108枚

不意にトラクションが抜けたり、豪快にフロントノーズを持ち上げる、なんて素振りはない。ピタリと路面へ追従し、不気味なほど落ち着いている。少し速めのペース、能力の7割程度で走らせている限り、ピュアな体験に魅了される。

9割へ迫ると、驚異的なパフォーマンスに圧倒される。それまで隠されていた、崇高な動的能力が明らかになる。しかし、最も楽しみたい8割前後での没入感がやや乏しい。

911 ターボSが、この3台で最速なことは間違いない。だが、グランドツアラーとして絶対的な速さ以上の何かを求めるなら、若干物足りないことも否めない。

ヴァンテージへ乗り換えると、ステアリングホイールへ伝わる情報量が乏しいことへ気付く。感触を豊かにするため、アストン マーティンは内部構造を改めたにも関わらず。

V8エンジンの暴力的なトルクも、ちょっと大味。ポルシェのように、レブリミットを追い求める個性が欲しいと思ってしまう。

フェラーリ・ローマは、ブレーキが少し過敏。これには、最後まで慣れなかった。そのかわり、F154型ユニットは回すほどスイート。0-100km/h加速は3.4秒で、911 ターボSの2.7秒に届かないにも関わらず、変速する度に鳥肌ものの興奮を誘う。

躍動的なV8エンジンを操るローマの壮大さ

アクセルペダルのストロークは、量産車では最長の1つ。スプリングの効きも好ましい。これは、フェラーリの特長といえる。この繊細さを右足で感じつつ、躍動的なV8エンジンを操る感覚は壮大でしかない。

公道での鋭さを求めるなら、マネッティーノ・ダイヤルを回しレース・モードを選ぶのが良い。トラクション・コントロールの介入が抑えられ、熱狂的な走りに興じられる。

911 ターボSやヴァンテージでは、アクセルペダルを蹴飛ばせば一気呵成に加速していくが、そのプロセスは似ている。しかしローマの場合、ボディのテールを僅かに沈め、トラクションのギリギリを攻めているような感覚がある。

毎回異なるカーブの出口で、アルミ製のペダルを押し倒す度に、ローマはエネルギッシュに応える。残りの2台は、ここまで情緒的ではない。

期待以上の晴天な午後に、3台をじっくり乗り比べていたら、スタビリティが評価の大きな分かれ目なように感じてきた。加速時の安定性だけでなく、操縦性全般で。

明らかに、911 ターボSはそれを強みとしている。対してヴァンテージとローマは、あえて僅かに一歩引いているようだ。

高度に安定しスピード感の薄いヴァンテージ

ヴァンテージのサスペンションは、彫刻作品のようなボディを可能な限り水平に保つ。タイヤの接地面が維持され、強大なパワーを路面へ展開できる。ダンパーを1段階引き締めれば、殆どの状況へ対処できる。

秀抜なグリップ力で高度に安定し、スピードを感じにくい。異常にすら思えるほど。だが、電子制御されるリミテッドスリップ・デフと、シャシー、タイヤの理解が深まれば、アクセルペダルでの自在なライン調整へ挑める。

ステアリングは極めて高精度で、カーブへ不安なく飛び込める。パワートレインの本域を召喚すれば、アップデート前を遥かに凌駕する、懐の深さへ言葉を失う。

基本的には、落ち着いていて超高速なグランドツアラーだが、ドライバーが求めれば豊かな表現力を謳歌できる。ただし、この2面性は少し作為的かもしれない。

ローマの姿勢制御は、上下動も加わり3次元的。煮詰められた減衰特性を活かし、ボディは前後左右へ優しく傾く。4シーターのフェラーリは、コンパクトなトヨタGR86のように慣性を感じさせない。

ステアリングホイールとアクセルペダルの感触も素晴らしい。リムは細身で、レシオはクイック。シフトパドルの印象も同様。高速道路を安楽に流すこともできるが、その直後に高笑いしたくなる高速コーナリングも披露する。

ローマは、型にはまったようにカーブを曲がらない。指先で繊細に操りながら、ラインをシームレスに選んでいける。ドライバーが望んだ通りの旋回を、自由に引き出せる。

運転の喜びを深く理解した仕上がり

ヴァンテージもトランスアクスルを採用し、理想的な前後の重量配分を得ているが、アストン マーティンとフェラーリによるシャシーの解釈は対照的。ローマのV8エンジンの半分が、フロントガラスの下へ隠れるほど低く後方へ載ることも、その一端だろう。

ヴァンテージのフロントタイヤの幅は、ローマのリアタイヤとほぼ同じ。後者が生物のように活き活きとした印象を残すのに対し、前者は質量を抑え込み、路面へ馬力を伝えることを最重要視したような心象を残す。

最新のハイエンドなグランドツアラーでも、レス・イズ・モアは当てはまる。四輪駆動の911 ターボSは3台で最速だが、クルージング時の洗練性が足を引っ張る。通勤にも使えるストリートファイター、といった目標は達成しているけれど。

ヴァンテージは、この中で最高のグランドツアラーだ。強力なパワートレインだけでなく、ドラマチックなスタイリングやインテリアの魅力は尽きない。無敵感のような、特別さにも惹かれる。

だとしても、登場がこの中で1番古いローマが、残りの2台を抑える。最も軽く、最も快活。オールドスクールなグランドツアラーを運転する喜びを、深く理解した仕上がりにある。まさに悦楽の体験だ。

この3台は、優劣を付けるのが簡単ではないほど素晴らしい。それでも、スリムなフェラーリは胸が苦しくなるほど完璧なのだった。

強力:トップ555社、ロブ・バーネット氏

ヴァンテージ ローマ 911 ターボS 3台のスペック

フェラーリ・ローマ(英国仕様)

英国価格:18万5975ポンド(約3570万円)
全長:4656mm
全幅:1974mm
全高:1301mm
最高速度:320km/h
0-97km/h加速:3.4秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:255g/km
乾燥重量:1570kg
パワートレイン:V型8気筒3855cc ツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:620ps/5750-7500rpm
最大トルク:77.4kg-m/3000-5750rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)

アストン マーティン・ヴァンテージ(英国仕様)

英国価格:16万5000ポンド(約3168万円)
全長:4495mm
全幅:1980mm
全高:1275mm
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:8.2km/L
CO2排出量:274g/km
車両重量:1670kg
パワートレイン:V型8気筒3982cc ツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:665ps/6000rpm
最大トルク:81.4kg-m/2750-6000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)

ポルシェ911ターボS(英国仕様)

価格:18万600ポンド(3468万円)
全長:4535mm
全幅:1900mm
全高:1303mm
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:2.7秒
燃費:8.3km/L
CO2排出量:271g/km
車両重量:1640kg
パワートレイン:水平対向6気筒3745cc ツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:650ps/6750rpm
最大トルク:81.4kg-m/2500-4000rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(四輪駆動)

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