ここのところ、発表が相次いでいる空飛ぶバイクやクルマたち。夢がいっぱいのいわゆる「エアモビリティ」の類だが、実際に日本でこうしたエアモビリティを使うにはどのような障害があるのだろうか。今年10月に発表された空飛ぶバイク、XTURISMOを例に取って紹介しよう。
文/井元康一郎
写真/A.L.I. Technologies、SkyDrive、東映『仮面ライダーリバイス』、photoAC
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■内燃機関+電動で航続30分! 空飛ぶバイク、XTURSIMO登場!
日本のベンチャー企業、A.L.I.テクノロジーズがこのほど、マルチコプター方式のホバーバイク「XTURISMO」を発売した。
浮上には2個のメインローターを用い、そのエネルギーは最高出力170kW(231ps)のガソリンエンジンからチャージされる。その周囲には姿勢制御用のサブローターが4個備わり、こちらはバッテリー駆動。
XTURISMOは重量約300kgで全長3.7m、全幅2.4m、全高1.5m。人が乗れる航空機としてはかなり小ぶりだ
絶賛放映中の「仮面ライダー」に早くも登場している
これで最高速度80km/h、乗員1名、ペイロード(乗員を含む積載可能重量)は100kg。価格は7700万円であるという。
ハイパワーエンジンとローターの轟音を立てながらゆっくりと数m浮上するXTURISMO。俗に「空飛ぶクルマ」と呼ばれるパーソナルエアモビリティとしては、まさに生まれたてという印象だ。
■ここから始まる「空飛ぶ生活」
が、飛行機だってライト兄弟が1903年にライトフライヤーを初飛行させてからたった10年あまり後の第1次世界大戦では、もう飛行機同士が機関銃で撃ち合いをやるくらいに進化していたのだ。これからの発展に大いに期待したい。
このXTURISMOはさしずめタイヤ不要のバイクといったところだが、残念ながら日本をはじめ、世界の大半の国で公道を走ることはできない。
XTURISMOは現在公道では使用不可だ。しかし、開発元のA.L.I. Technologiesは山梨県と災害時含めた運用検討を行う協定を結ぶなど、社会実装に向けた活動を行なっている
それは致し方のないことではある。地面から浮いて道路を走る様はまるでSF映画の未来カーのようだが、現実世界では万有引力の法則や慣性の法則に縛られている。
ひとり乗りであっても170kWのパワーが生むダウンウォッシュ(下向きに吹き付けられる風)は相当なものだし、それに目をつぶったとしても少なくとも前方でアクシデントが起こった時に急ブレーキをかけられるようにならないかぎり、公道走行は認められないだろう。
■既存の街と共存するために
では、XTURISMOや最近世界中で試作機や開発構想が発表されている「空飛ぶクルマ」は、現実には見込みのないものなのかというと、そうとも言い切れない。地表すれすれを飛んで道路交通と混走するのではなく、高空に舞い上がればいいのだ。
現在の航空関連の法規では、ヘリコプターは市街地では高度300m、それ以外のところでは高度150m以上を保って飛行するように定められている。
前者は東京タワーより少し低く、後者は霞が関ビルより少し高いという感じだ。開放コックピットでその高度を飛行するのは高所恐怖症でなくとも少々恐怖感を覚える可能性がある。通常のエアモビリティはキャノピーを持つクローズドボディが主流になっていくことだろう。
では、XTURISMOのような機体はどうなるのだろうか。少々難しいことだが、騒音対策をしっかりやったうえで、無線操縦のドローンが飛ぶ低高度を一部開放してもらえるよう要望を出すという手がある。
空飛ぶバイクは、今後無線操縦のドローンと近い高度を飛ぶことになる?
低高度は地形によっては飛行が難しいうえ、高圧線や普通の電線、建築物などの設備との干渉も考えられるので飛ぶのは簡単ではないと思われるが、最低高度の保持や飛行禁止区域に入れないようなシステムを実装するなど、許認可を求める側の努力も問われるところだ。
もう一点の難問は、自律飛行型でないエアモビリティの場合、免許制度をどうするかということだ。ヘリコプターの操縦に必要な回転翼免許はセスナなどを飛ばすための固定翼免許に比べて取得が難しく、費用もきわめて高額(自家用で数百万円が必要)だ。
ドローンは回転翼だが、姿勢制御は自動化されているため、ホバリング(空中静止)のようなテクニックは必要ない。また、ヘリコプター操縦で要求されるオートローテーション(動力を切り、風圧によるローターの回転だけで滑空着陸する)はそもそもできない。
操縦免許がウルトラライトプレーン(空域を制限して飛ぶ動力付きハンググライダー)並みに簡素化されれば操縦訓練と飛行にかかわる法令学習を合わせて50万円くらいでいけるようになるかもしれない。
■空飛ぶクルマはどうか
XTURISMOのような単座ないし複座、開放コックピットの機体がプレジャー色の強いパーソナルエアモビリティとすると、俗に言う“空飛ぶクルマ”はもっと実用性に振ったものだ。
こちらは「SkyDrive」の空飛ぶクルマ試験機「SD-03」。2021年10月29日、同社は国交省へ日本初の「空飛ぶクルマ」としての正式な型式証明申請を行い、受理された
機体が大きく、多人数乗機や大荷物を搭載可能なペイロードを持ち、道路が真っすぐに通っていないところを直進したり、渋滞をパスしたりしながら目的地まで飛ぶという、空中タクシーのような役割が期待されている。
こちらのほうはパーソナル型よりもクリアすべき要件は多く、技術的にも難しい。パーソナル型のほうは有視界で人間が操縦するのだが、飛行OKとなる視程の基準は意外に厳しく、低高度に雲があったりするともう飛べない。
旅客や貨物を運ぶ商用機がそれではまったくお話にならないので、天候によらず飛べるように操縦士を介さない完全自動操縦、そして離陸から飛行、着陸までフルに管制下での運行が要求されるものと考えられる。
実現は簡単ではない。空飛ぶクルマが数機という状況であれば自動操縦と航空機に装備される衝突防止システムのコンボでいけるかもしれないが、数が多くなると空はたちまち混雑し、安全運航ができなくなる。
肉眼で見ると大変すいているように見える空。しかし実は、時間軸含めて見るとかなりタイト
もともと空はポッカリと空いているように見えて、実はかなりタイト。一般の航空機でもちょっと管制ミスをしたり、パイロットが指示を聞き間違えたりするだけで空中衝突に発展するくらいだ。
■空の階層化推進が急がれる
その混雑した空でエアモビリティの安全を確保するためには、高度300m以上1500m以下など高度を区切り、そこに空路を新設するのが最も手っ取り早く、また現実解としてそれしかないだろうと思われる。
A地点からB地点にどういうルートで飛ぶかという申請は、航空管制システム側のAI化が進めば簡素化されるが、着陸場所はどんなに技術が進んでも広場やビルの屋上などに設置されるヘリポートのようなところに制限されるだろう。
機体と乗員、貨物を合わせた総重量が重くなればダウンウォッシュもそれだけ強烈になり、どこへでも着陸できるというシロモノではなくなる。こういった物理的な限界は技術で解決されるものではないため、実際には近距離のヘリコプター航路の代替といった位置づけになるだろう。
とはいえ、空飛ぶクルマにビジネスチャンスありと踏んでいる企業は世界に多数存在し、日本でもトヨタやホンダなど既存の自動車メーカーも開発に取り組んでいる。今後、思わぬアイデアや技術が飛び出し、普遍化する時代が早く来るのを期待したいところだ。
気軽に個人、あるいは少数人数で空を移動する時代はいつ来るだろうか。早く来るのを期待したい
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